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08.25
Sun

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深大寺 令和元年8月16日写す以下同じ

深大寺は奈良時代創建の古刹。ダルマ市で知られている。
新宿から京王線とバスで、または中央線、吉祥寺か三鷹駅からバスで30分程。
深大寺ソバでも知られ門前に蕎麦屋が軒を連ね賑わう。
神代植物公園、水性植物園、農業高校実習園、深大寺が隣接、広大な自然が広がる。
うってつけの憩いの地。

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深大水性植物園

水性植物園は深大寺のすぐ近く。ダラダラ坂を十数分下りた所。
湿地を水性植物園にしたらしい。菖蒲園と小さな田んぼがありこの二か所だけ
手入れしてあり園の大部分がほったらかし状態。
植物園になる前の湿地に元々生えていたらしい水辺の植物が我が物顔で
蔓延っていて以前植えたらしい割と珍しい水性植物の生き残りがチラホラ。
人の手の入らない湿地に近いのが気に入って四季折々訪ねる。
入園料無料。カップルなど色々の人のお気に入りらしく結構な数の入園者。

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ミソハギ(溝萩、禊萩)ハギ科

今は花の端境期、期待無しに行ったので息を飲む程と云えば大げさだが
“やったー!”と叫びたくなった。
旧盆の頃に花盛り。昔は盆花にしたそうだ。今はお盆の花は花屋で買う。
ミソハギの受難は遥か昔の話だと云うかのように嬉々と咲いていた。
名前の由来がそのものピタリ。花の感じが萩に似ていて溝など水辺に咲くので溝萩。
又は水辺のミソハギを手折って水に入り幣の代わりにして穢れを払ったので禊萩だそうだ。昔は普通の人も禊をしたのだろう。

インドのガンジス川は聖なる河。インドの人々はこの河で沐浴するのが夢だそうだ。
人々の生活廃棄物をも運ぶのだろう河はどんよりと鈍色に流れるが人々は厭う心の
片鱗もなく嬉々と川入る。
日本人を代表して夢の沐浴をした。沐浴の人達の真似をして両手に水を掬い上げて
差し上げ“オーラ”と神に捧げ頭のてっぺんからかぶる、を十数回繰り返した。
一緒のツアーの人達は顔をしかめて近寄らなかった。
己一人ホテルに帰るバスの中でも気分爽快だった。

バリ島の人達も沐浴は日課。昔は男も女も老も若きも一緒に沐浴したそうだ。
インドネシア大統領の第三夫人になった日本人の女性が沐浴は男女別、女性の
沐浴場を道から見えない川の上流にした。
当時女性は上半身裸だった。夫人の命でブラジャーを着用が義務づけられた。
バリに移住した京都出身の人に聞いた話で真偽の程は自信がない。
バリの女性のブラジャーはファッションのように見えた。
形も色も色とりどりで華麗だった。

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コガマ(小蒲) ガマ科

小型のガマで形が面白い。まるでフランクフルトソーセージ。
数年前コップにさして机に飾った。
数日後、外出から帰ったら机一面に綿毛が散り敷いていた。
種が弾けたのだった。そんな事とは全く知らなかったのでビックリ仰天!
童謡の“大黒様の云う通り、きれいな水で身を洗い、ガマの穂綿にくるまれば、ウサギはもとの白ウサギ”の意味に頭を傾げ続けていた。フランクフルトの爆発で疑問氷解。

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ハス(蓮) スイレン科

残念ながらつぼみだった。開いたのは見つからなかった。
蓮は有難い花。仏様は蓮の花の台座に鎮座まします。
「蓮の葉の、濁りに染まぬ心もて、などかは露を玉と欺く」
僧正遍照の歌だそうだ。
白居易は楊貴妃の美貌を長恨歌で“太液の芙蓉の紅”と詠った。
能「楊貴妃」で謡われる。(芙蓉は蓮の古名、今の芙蓉は木芙蓉、太液は中国王朝の庭に池)
有難く聖なるの花なのに根っこの蓮根を浮世の人間がたべる。
蓮根は本当は根ではなく地下茎、仏様の台座の胴体を食べているのだ。
仏様を蹂躙しているのと同じことの様におもわれても仕方がない。
子供の頃、父親が“南無阿弥陀仏”と唱えて食べろと云った。
子供には変な味だったが極楽に行ける食べ物だと我慢して食べた。
父親の冗談を信じて。

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コウホネ(河骨) スイレン科

根っこ(地下茎)が白く白骨に似ているので河骨だという。
気味悪いが水面下の泥の中だから見えない。
尾瀬の池塘には、オゼコウホネが咲く。きれいで、夏が来れば思い出す♪水芭蕉
など比べ物にならない。

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オグルマ(小車) キク科

田んぼの畔や湿地に咲く花で何処にでもありそうだがそう多くはないらしい。
茶会や生け花に古くから使われた花だという。
オグルマの花を車の車輪に例えた。
昔から車は大事な必需品だった。
小野小町に言い寄った深草少将に小町は牛車(当時の乗用車)の車庫に100日
通えばオーケーしてもいいという。少将は風雪を厭わず通った。99日目の夜、
少将は頓死してしまった。
小町は車に通えと云った。車がいかに大事な物だったか窺い知られる。

恋の恨みは女性専用だと昔から思われてきたようだ。
今の世でも結婚式に花嫁は角隠しをする。
能「鉄輪」「葵上」の主人公は女性で恐ろしい形相。
角を生やし口は耳まで裂けた鬼になって現れる。
心変わりの男や恋敵を取り殺そうとするが僧や呪術師に祈り伏せられる。悲しさ億兆。
男の嫉妬は陰険。女をヤキモチの火種にならないよう家の中に奥深く隔離した。
まちがいがあったら有無を言わせず “成敗”映画などでよく見る。

横暴な男達と違い深草少将は優しい男だったに違いない。
隠忍を重ね小町の許に通い続けた。しかも裸足で。
「山城の木幡の里に馬はあれども、君を想えば徒跣」
馬に乗るな、裸足で歩けと小町が要求したのだろうか。
「さてその姿は、笠に蓑、身の憂世とや竹の杖、雪には、袖を打ち払う、
雨の夜は、鬼一口も恐ろしや、たまたま曇らぬ時だにも、身一人に降る涙の雨か」
笠を被り蓑を着、漆黒の闇や悪路には盲人並みに杖を突き、鬼の出現に怯えて。
当時の人は暗闇の夜の一人歩きは鬼に襲われると信じていた。
苦しさと恋しさで雨も降らないのに涙で濡れながら通った。
能「通小町」で少将の哀れな姿を無情にも容赦なくこう謡う。
少将の小町への想いははんぱではなかった。
「煩悩の犬となって、打たるるとも離れじ」

通小町
「あ~ら、暗の夜や、、、」闇夜の中、風に笠を吹き飛ばされ手探りで探す深草少将

能「通小町(かよいこまち)」の詳しい解説はこちら


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08.17
Sat

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大岳山々頂

大岳山は奥多摩の名峰といわれ二百名山、花の百名山とガイドブックにある。
御岳山から七代の滝_ロックガーデン_綾広の滝_大岳山_奥多摩駅、九時間半
歩いた。思い付きだったので家を出るのが遅かった。
大岳山下の小屋の手前で老婦人二人に出会った。一人は可成りの年配で足元が
覚束なく見えた。危険な岩峰に登るのだから若い時からの登山達者なのだろう。
鍛錬という魔物に脱帽!
奥多摩駅まで行くと云ったら大岳山から四時間半かかる、やめた方がいいという。
数十年前同じコースを歩いたことがあった。それほど遠かった記憶はなかった。
引き返すのも面倒と予定通りに歩く事にした。大岳山頂で既に三時だった。
とっくに下山を終えた時刻、ヤバイなと脳裏をかすめた。その後は語るも涕。
両足のマメが潰れバンドエイドを貼り替える度に顔をしかめる日々が続いた。

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ヤマホタルブクロ(山蛍袋)キキョウ科

山頂にひっそり咲いていた。平地のホタルブクロはとっくに終わり
“影も形も御座なく候”なのに置いてきぼりのようで寂しげだった。
子供達がチョウチン形の花に蛍を閉じ込めて遊んだというが蛍の時期も過ぎ、
危険なこの山に登る子供なんぞいる筈ない。寂しがっても詮無いよと慰めてやった。

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ソバナ(岨菜)キッキョウ科

俗世に縁のない山奥に咲く花にふさわしく清澄な花色。
アクがなく若芽から、かなり成長しても美味しい。
山に行くと山菜が気になる。山菜は食べ過ぎるとお腹をこわす。
自然育ちだから中身が濃いからだろう。人が栽培する野菜は畑で
過保護に育ち、成分が半減するから食べ過ぎても平気なのかも。
養殖の魚が不味いのと同じ理屈なのだろう。
野草の中には毒草がかなりある。たいがいは食べられそうにもない姿だし
食べてもお腹をこわす程度だが、中には美味そうに見えて命にかかわる猛毒草もある。
トリカブト、ドクゼリ、ハシリドコロ、など。珍しくはなく、よく目にする毒草。
猛毒と聞くと興味が湧き一度見たら目に焼き付くからすぐ覚えられる。

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ヤマアジサイ(山紫陽花)ユキノシタ科

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タマアジサイ(玉紫陽花)

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ヤハズアジサイ(矢筈紫陽花)

アジサイ三種。
沢沿いに咲いていた。場所によって形も色も色々だった。
垣根や公園などに植えている交配種を見慣れているので自然のものは珍しかった。

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カエル 

薄暗い山道に突如現れた。ギョ!動物が苦手には気味悪さ99、9%。
足早に通り過ぎようと思ったが、待てよ?カエルは替えの姿かも知れないゾ
何かを教えようと現れたのかも知れないぞと引き返えした。
近寄り顔を近づけても逃げない、ノドをグニャグニャと動かすだけ。
きっと何かを伝えているのかも知れない。感知する霊力ゼロの身が恨めしかった( ´艸`)
薄暗い山道、気味悪いカエル、存在感薄い一人の人間、大袈裟だが能「山姥」
を思い出した。

都の曲舞の名手“百魔山姥”と呼ばれた遊君は亡母の追善のため善光寺参りの途中、
北アルプスの麓の新潟県上路の深山で本物の山姥に出合った。
大岳山の山道のカエルとは比較にならない恐ろしい姿が語られる。
遊君は都で“山姥の曲舞”を謡い舞って名を上げていた。
本物の山姥は遊君に、都人にもて囃されるのは山姥の曲舞故であろう、
それなのに少しも心に掛けてくれないと恨み言を云い、私のために夜もすがら謡え、
再び現れて移り舞を舞うであろうと言い残し忽然と消え失せる。
舞など全くない前場だが深山の妖気がじわじわと襲い身震いまで出る。

遊君はあまりの恐ろしさに震えながら命じられたまま、山姥の曲舞を謡う。
「そもそも山姥は、生所も知らず宿もなく、ただ雲水を便りにて至らぬ山の奥もなし」
と謡うから山姥は山の精か山の妖気が凝り固まって形を得たものかも知れない、
本当にあった“事件”かも知れないぞと気味悪いカエルを見て実感した。
遊君の前に現れた山姥の姿が凄まじく恐ろしい。葉っぱを付けた杖を突いている。
そこいらに生えている木の枝をへし折って杖にしたのだ。霊力の象徴に見える。
山姥は仏教哲学を織り交ぜ山姥の存在について遊君が謡う“山姥の曲舞”を舞う。
こう語る者には内容が難解で半ばチンプンカンプン。浅学故だけではない、
精神文化の退化途上にある現代人の一人だからだと自らを慰めている。

山姥
「山また山、いずれの工か青巌の形を削りなせる」遊君の前に現れた山姥

能「山姥」の詳しい解説はこちら


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08.11
Sun
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御嶽神社楼門 令和元年8月1日写す以下同じ

御岳山は東京の西の奥、奥多摩にある山。山頂近くに御嶽神社がある。
新宿から中央線、青梅線で一時間半くらい。
思い付きで急きょ登った。そろそろレンゲショウマが咲く頃だと気が付いたので。

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レンゲショウマ(蓮華升麻) キンポウゲ科 

ビー玉のような丸いつぼみが開けて“おちょこ”のような花が開く。
ショウマと名の付く花は小さな花が集まって穂状に咲くのにこの花だけが、
例外でおちょこ型に咲く変わったお嬢様。
変わっているから珍らしがられるのだろうか。
御岳山に可成りの群落があり大々的にキャンペーン中だった。
自生は福島から奈良あたりまで、日本特産だそうだ。
今年は気候の変調の所為か開花が遅くあっちに一輪こっちに一輪といった具合だった。

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七代の滝

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タマガワホトトギス(玉川時鳥)ユリ科

御岳山頂から七代の滝まで急峻な山道を下りなければならない。
下りてまた登る、キツイな、しんどいナと思いつつ下りた。
瀧が目的ではなく滝の岩壁に咲くタマガワホトトギスを期待して。
予想通り咲いていた。ホトトギスには種類が多い。
昔、身分の高い女性を上臈と云った。上臈の名を貰った上品なホトトギスが数種ある。
神奈川県の丹沢の沢にサガミジョウロウホトトギスが咲くと読んだり聞いたりしていた。
一昨年の九月、滝が五つある本沢に登った。日の当たらない薄暗い岩壁に神秘の微笑みを湛えて咲くサガミジョウロウホトトギス様を拝みに。
二十年程前、沢登りのベテランと登ったことがあり経験済みだと浅はかにも単独行。
登る人が激減したそうで滝のルートは荒れ放題。危険な場所の鎖もザイルもお粗末。
恐ろしく上臈様どころではなかった。
恐怖に見落としたのかも知れないが拝顔の栄に浴することはできなかった。

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綾広の滝

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イワタバコ(岩煙草)イワタバコ科

先月中頃裏高尾では、まだつぼみが固かった。
綾広の滝に期待通りに咲いていた。
イワタバコの名は葉がタバコの葉に似ているからだそうだ。
花も葉も一風変わっていて気に入っているが、名が気に入らない。

三十数年前にタバコを止めた。煙草を吸っている人を見ると気持ちが複雑になる。
止める苦しみの記憶が脳の芯にこびりついているからだろう。
止めて数十年経った今でも道端に捨ててある空き箱を見てもドキリとする。
だがイワタバコは見つけてもドキリの質が違い心が躍りのドキリ。
瑞々しく美味しそうだが、猛烈に苦い。好きな人もいるらしい。
岩ジシャとも云いうくらいだから昔の人は食べたのだろう。胃の薬だという。
苦いものは何でも胃の薬だからと嫌味を云ってしまう。

昔は草や木、動物や鉱物を吟味して薬にした。漢方薬がそれだ。
水を薬にした奇特な少年がいた。
古代中国の王、周の穆王の侍童であった慈童は王の枕を誤って跨ぎ山奥に流された。
可哀想に思った穆王は枕に経文を書き慈童に持たせた。
山奥で慈童は穆王の経文を菊の葉に書きつけ、葉に置いた露の滴りを飲んで七百年の
齢を保った。長寿は昔から人間最大の望み。七百年を経ても少年であった慈童を描いた
能「枕慈童」は観る人の羨望と己にも訪れるかも知れない長寿の期待を抱かせ
誰もが抱く苦しみ悲しみなど吹っ飛ばし楽しませる。

慈童が流されたと云うテッ県山の麓に薬の水が涌くという。
真偽を確かめよとの宣旨を受けた臣下がテッ県山に分け入る。
髪ぼうぼうの少年を見つけた臣下「虎や狼、狐の住む所に人間など居る筈がない、
前はもしかして化け物か?」
慈童「このような所に来る貴方こそ化け物でしょう」と応じ穆王の枕を見せる。
臣下は魏の文帝の臣下で慈童は周の世の人、その間七百年が過ぎていた。
七百歳の少年に臣下はビックリ。
以上の前置きが淡々と清々しく語られ羨望感がじわじわと湧く。

慈童は楽しげに「楽」を舞い、続いて菊の葉から滴り落ちる酒に酔い己の幸せを舞う。
舞台の正面先に菊を挿した一畳台は花畑に、蓬髪の少年は中国の扇、団扇で舞い、
異国情緒がただよう。深山の奥で繰り広げられる神秘の世界を満喫、エンタメ至上の曲。

枕児童・修01
「七百年を保ちぬるも、この御枕の故なれば」と穆王拝領の枕を奉げ持つ慈童

能「枕慈童」の詳しい解説はこちら

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08.03
Sat

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スカシユリ(透百合)ユリ科 茨城産 令和元年6月29日写す

イワトユリの別名があるそうだ。隣の花びらとの間に隙間があり
天の岩戸になぞらえた名かもしれない。

天の岩戸の神話は誰でも知っていると思う。
弟、素戔嗚尊の御乱行に怒った天照大御神が天岩戸に入った。
世の中は真っ暗になった。天照大御神は太陽神だったから。
天照大御神をおびき出そうと神々が集まり芸能大会を開き大はしゃぎをした。
天鈿女命があられもない姿で踊った。
大騒ぎに天照大御神が岩戸を細目に開け外を覗いたた。
待ってましたとばかり天手力男命が強力にまかせ岩戸を引き開けた。
世の中は再び明るくなった。
スカシユリの花びらの隙間のような天岩戸の隙間からサッと差し出た
光はスカシユリのような鮮やかな光だったのではないだろうか。

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ネジバナ(捩花)ラン科 東京産  令和元年6月27日うつす

ノウゼンカズラを鉢植えにした。塀の柵にぶら下げたまま7,8年経つが
いっこうに咲かない。咲くわけないよと隣のおじさん。
同じ鉢にこのところネジバナが毎年咲く。どこから来たのか首を傾げるばかり。
咲かないノウゼンカズラは流刑の運命と慮ったネジバナが気の毒がって
代わりに咲いたのだろう。
ねじ曲がって咲くが心は真っすぐ、抜群に優しいのだろう。

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ゲッカビジン(月下美人)サボテンか科 武蔵野市友人から貰う
令和元年6月29日写す

夕闇の中、突然咲く。透き通る純白の花に一瞬息を呑む。
名付け親は昔の台湾総督。昭和天皇が皇太子の頃、台湾を訪れた。
見慣れない美しい花に目を止め総督に名を訊ねた。
畑違いの総督が名など知る訳がない、が知らないとは言えない。
ぐっと唾をのみ込み咄嗟に「月下美人」と答えた。
日本語の名があったのか無かったのか知らないが以来、本名になった。
その時の状況と云い花の姿からもぴったしのネーミングに異を唱える人は
無かったのだろう。畑違いの総督の金メダルですネ!

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コダマスイカ(小玉西瓜)ウリ科 武蔵野市の花屋で苗を求む 令和元年6月27日写す

2、3年前、小玉西瓜の苗を貰った。西瓜は地に這わせるのが常識。
ネズミの額では無理。苦肉の策で支柱に絡ませて実を網袋に入れてぶら下げた。
通る人毎に口に手を当てクスクス。笑いは健康の元、今年も笑わせてやろうと
植えたが誰も見向きもしない。柳の下のドジョウでした。
何事も度重なればロクなことにならない。
昔、伊勢湾の阿漕浦(あこぎうら)は伊勢神宮にお供えする魚を獲るため禁猟区だった。
阿漕という男が夜な夜な忍び込み魚を獲った。初めは誰も気が付かなかったが
度重なるうちにバレて簀巻きにされ沖に沈められ殺された。
我が家のスイカも一回で止めて置くべきでした。

能「阿漕(あこぎ)」は度重なった故の悲劇を作った能。
阿漕は下賤の漁師、生活のため死を恐れながらも禁猟区に忍び込み魚を獲る。
魚を獲るという快感もあった。
阿漕は僧に阿漕が浦の謂れに就いて語る。阿漕の懺悔が痛ましい。
俄かに突風が吹き荒波が襲い阿漕は叫び声を残し消えうせる。
鳥肌の立つ型の連続で前場締めくくる。

僧の弔いに阿漕の霊が四手網を担いで現れ網に魚を追い込む様を見せる。
「イロエ」と云い息詰まる場面。
俄かに波は火炎となり地獄に早変わりする。
生きる為には殺生戒を犯し地獄を恐れながらも漁をせざるを得ない下賤の人を描いた秀作。

阿漕
禁猟区の浦に網を引く阿漕

能「阿漕(あこぎ)」の詳しい解説はこちら
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07.27
Sat
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裏高尾の清流 令和1年7月13日写す。以下同じ

ハイカーのお気に入りの場所らしく唯一開けた場所。
板橋の上で年配の人がスケッチしていた。鉛筆の芯の細の太いの
色々箱に並べてあった。繊細な絵にビックリ。鉛筆だけで描いた美しい絵!
感動!感動!“画家ですか?”“いや、趣味で描いている” 絵は独学だと云った。
風貌から社会的にかなりの地位にあった人の様に見えた。
黙々と忘我の境地に入っている姿に、世に在りし時、困難に会い絵に没頭して
己を慰めたのではないだろうかなどなど勝手に想像した。
「久方の光のどけき春の日に静心なく花の散るらん」
古今集、紀友則の歌だそうだ。百人一首にも採られている。
反藤原氏の企みに誘われ悩んだ時の紀友則の歌だと聞いたことがある。
板橋の上で黙々と絵に没頭するその姿に若き日の彼に思いを馳せ紀友則に
重ねた。絵の写真を一枚撮らせて頂きたかったが言葉が出なかった。


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アブラチャン(油瀝青)の実と花 クスノキ科(花は2018年3月写した)

満山枯れ木の中、春一番に咲くのが嬉しいしきれい。
それよりも名前が気に入っている。
この花の名前を始めて知って枝を肩に“アブラチャン♪アブラチャン♪”と
ふざけたことを思い出す。
能「小塩」で在原業平の霊の爺さんが、うららかな春の日、桜の枝を担ぎ
“弱ぼいさぞらい”現れるそのまねだった。

残念だがアブラチャンのチャンは愛称のチャンではなく瀝青(油の固まり)
の中国語読みだそうだ。
だがどんな意味であろうとチャンはチャンだからから気に入っている。
美味そうな実に見える、どんな味か齧ってみようと思ったが昔は灯火用の
油をとったというし仲間のクスノキは樟脳の材料、強烈な刺激味が口の中で
火事になるかもとやめた。

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ヤマユリ(山百合) ユリ科

山百合は夏咲く花の女王様。
先月の中頃、鎌倉の山では満開だった。
一ケ月後、ここ高尾では未だ蕾だったが満開を一つだけ見つけた。
鎌倉とここ高尾では何かが違うのだろう、山百合だけではなかった。
日本には色々なユリが咲く。日本の固有の花だそうだ。
オランダの人達は日本のユリが大好きで交配が盛んでコンテストがあり
優勝すると名誉全国に及ぶとか。
交配種のユリは逆輸入され日本の花屋の店頭に並び庭先にも咲く。
野に咲くユリの方が交配種種より断然美しいのに花屋の百合を買う。
目移りは人の常、仕方がないか。
竹馬の友も糟糠の妻も馴れてしまえば価値を忘れる。

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オオバギボシ (大葉擬宝珠)キジカクシ科

竹竿に小さなチョウチンを幾つもぶら下げたような風情。
美味しい山菜。東北ではウルイと呼び主要な山菜。
欧米にはない花で愛好者が多く自生地見学のツアーがあるそうだ。

擬宝珠は橋の欄干の飾り。ギボシの花の形が似ていることが名の由来だそうだ。
最近の橋はコンクリートで擬宝珠は滅多に見られない。
神社やお寺の庭園の池に架かる橋などで見られる程度。

京の五条の橋の上で弁慶と牛若丸が散々に戦った。
牛若は擬宝珠の欄干に飛び上がり飛び下り、鬼神変化の如く虚空を飛び回り
弁慶を翻弄、終に弁慶は降参、牛若の家来になった。

橋弁慶
“ここと思えばまたあちら燕のような早業に鬼の弁慶、謝った”童謡にも歌われた。

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竜頭が滝

白装束の若い男女が滝行の順番を待っていた。
滝行は神仏がやどる滝に打たれて煩悩を払う修行だそうだ。
若い人が煩悩を払うと脱け殻では?煩悩などとっくに希薄になった身の呟き。
聖域には間違いないので神仏の罰が当たるかも知れないと震える手で一枚だけパチリ。
高尾山には滝行の場が数ケ所あり山伏が滝行するそうだ。

山伏の元祖は役行者。人間離れの修行で神をも罰する神通力を得た。
修行の山伏達のため葛城山から根本道場の大峰(金峯山)まで橋を架けよと
葛城明神に命じた。神様のことをこのように言うのは畏れ多いが分かり易いかと
ご勘弁頂いて、今様にいえば“ブス”だった。
昼間は恥ずかしいと工事は夜だけ、ついに納期に間に合わなかった。
怒った役行者は明神を蔦鬘でしばり岩穴に閉じ込めた。

能「葛城」はこの奇怪な物語を背景に展開される。
葛城山参りの奥州、羽黒山の山伏一行が突然の大雪に立ち往生している。
柴を背に女が現れ、山伏達を憐れみ我が家に案内する。
雪景色を詠った漢詩を引いた美しい地謡にとぼとぼと家路を辿る情景が美しい。
女は葛城山の名の由来となった“しもと(小枝)”の話をし、しもとを焚いて
山伏達を暖め鈴懸を乾かす。クセも山伏達を労わる舞。
女は葛城明神の化身だが神の気配は全く見えず里の女の温情が滲む。
僧達は夜の勤行を始める。女は僧達に勤行の序でに祈り加持してくれと頼む。
岩橋工事で役行者に縛られた事を語り葛城明神であることを仄めかす。
山住の女から葛城明神への変貌をじわりと見せる、能の魅力。

山伏達の夜を徹しての祈りに神の本体を現わした葛城明神が、神代の
髙天の原の舞を模して舞う。月明かりの雪原の舞が美しい。

葛城山は奈良と大阪の県境の山。三月の中頃友人と二人でお参りに行った。
友人の服装を見てびっくり、冬山登山の姿だった。
こちらはスーツに革靴ネクタイのサラリーマン姿。
“チョモランマにでも登るの?”と散々揶揄った。
ロープウェイの乗り場にスノーボードの親子、オヤ?
ロープウェイの終点は一面の雪景色。スーツにネクタイのオレを下から上まで
眺めて友人、“どちらの会社にお勤め?こんな山の上に会社などあったかナ?”
と反対に散々揶揄われた。
昼飯を食べた食堂の小母さんが気の毒がってゴム長を貸してくれた。
奈良、大阪にまさか雪の積もる山があるとは夢にも思わなかったのだ。
山中で雪にまみれて集めた小枝は能の小道具“しもと”に今でも有難く使っている。

葛城
「松が枝添えて焚こうよ」“しもと”を焚き山伏達を暖める山住の女


能「葛城」の詳しい解説はこちら

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