FC2ブログ
04.20
Sat
IMG_6689.jpg

仙石原のススキ草原 2019年4月9日写す。以下同じ

箱根新名所、仙石原ススキ草原は野焼きのまま黒々とススキの芽の出る気配もなかった。
早春の珍しい花を探したが見つからなかった。

IMG_6669.jpg
マメザクラ(豆桜)バラ科

富士山や箱根に多いそうだ。富士桜、箱根桜の名もあるという。
花も小さいが木も小さい。楚々と咲くのがいい。
二十歳代の頃だったと思う、バスツアーで湯河原温泉に行った。
朝食前に十国峠まで登った。観光スタイルで革靴を履いて。
登山道に豆桜が覆いかぶさるように茂っていた。
その頃は豆桜の名など知らなかった。小さな変な桜だナと枝を掻き分け
岩ゴツゴツの登山道を駆け上り駆け下りた。
宿ではバスが出発を待っていた。どこをうろついていたンだと皆に怒鳴られた。

IMG_6666.jpg
キブシ(木五倍子)キブシ科

黄藤とも呼ぶそうだ。派手な藤には及ばない地味な花だが、ぶら下がって咲く姿から。
この花が咲くともうすぐ本格春とワクワク。
昔、キブシの実をお歯黒に使ったそうだ。お歯黒の小母さんは今では時代劇。
幼い頃、田舎にキセルでタバコを吸うおばあちゃんがいた。
笑うと真っ黒いお歯黒の歯の奥に金歯がキラリと光り恐かった。
前世代遺物おばあちゃんと母が笑っていた。

IMG_6664.jpg
ダンコウバイ(檀香梅)クスノキ科

諸花に先駆けて咲く。名のようにいい香りがする。
小さな花が枝に群がって咲くのが可愛い。
奥の細道の曽良よろしく卯の花ならぬ檀黄梅の花を頭に挿して帰りたくなる。
頭は枝を挿すほどの毛は無くなったが。

IMG_6663.jpg
フサザクラ(房桜)フサザクラ科

変わった花。パッと開いた花を見たことがない。
蕾に見えるのは雄しべだそうで花弁がないからパッと開くわけがない。
赤くてつぼみのように今にもパッと美しく開きそうで開かない花は源氏物語の
巻末に登場する悲劇の女、浮舟の風情。
母親の中将の君の期待も空しく、薫大将と匂宮との愛のはざまに苦しみ
宇治川に身を投げ横川の僧都に救われて出家する可哀想この上ない女。
能に「浮船」がある。上演頻度は多くないようだ。
出典があまりにも悲劇的だからかも知れない。

IMG_6691.jpg
サイフ(財布) ゼニ科(銭科?)

仙石原を少し過ぎたあたりに車が止められるスペースがあり車が数台止まっていた。
何か珍しい花が咲いていないかとヤブに分け入った。葉を落とした灌木と枯草ばかり。
ガッカリ。引き揚げようと踵を返した途端、異様なものが目に入った。
財布だった。金持ちの友達が持っているサイフの模様と同じだったので
目に付いたのだろう。だが中身は空っぽ、小銭入れまで空っぽだった。
藪の中にサイフが落ちている、どう考えても異常だ。ヤブに潜るのは変人だけ
滅多にいない。財布は多分、車上荒らしの仕業だろう。
今時の盗人はみみっちく、陰険だ。いい例がオレオレ詐欺。
昔の盗賊には豪快な奴がいた。ある種の尊敬をもって語り継がれている。
名だたる豪傑盗賊の中ではやはり熊坂長範が一番。

能「熊坂」では熊坂長範は美濃の赤坂の宿で牛若丸に殺された。
悲哀感など全く湧かない豪快活劇で楽しめる能。
 前場で熊坂の幽霊は僧形で現れ、旅の僧に回向を頼む。僧が僧に回向を頼む
というのだから違和感はあるが、これは何か起こるぞという期待もある。
シテもワキも同じ僧形だ。演者には少々演じにくい。装束の色を変えたりする。

後場のシテ熊坂は大目玉を剥きだした恐ろしい“長霊べしみ”の面をかけ、
大長刀を担いだ豪猛な姿で現れる。長霊べしみの面は怪盗、熊坂長範の顔を
写したと云うから恐いのは当たり前。

奥州の豪商、金売吉次が京での商いを終え鞍馬山の牛若丸を伴い奥州に帰る途次
美濃の赤坂の宿に泊まる。長範が吉次の財宝を狙う。

長範は床几に腰かけ諸国の盗賊の頭目を従えて来たと大盗賊の威厳をみせる。
長範の指揮一下、配下の盗賊が松明を一斉に宿に投げ込み攻め込む。
待ち受けていた牛若丸、鬼神の如く俊敏に動き長範の配下をことごとく斬り伏せる。
この激闘を長範は床几に腰掛けたまま長刀を振るい演ずる。迫力満点。
配下の惨劇に長範は「盗みも命のありてこそ」と逃げようとするが、大盗賊の
自尊心が許さない。二人の激闘が始まる。
蝶や鳥のように飛び回る牛若、大長刀を右に左に、上に下に振るう長範。
長刀の技をつぶさに見せる。
遂に後ろから具足の隙間を斬られる長範、首から黒澤映画ばりの血しぶきが
吹き上がるのが見えるが如きの迫力。
次第しだいに意識を失っていく長範が生々しく語られ、哀れを誘い留める。
登場人物は熊坂と僧の二人だけでこの大活劇を見せる。能の醍醐味。

熊坂
“打物業にて叶うまじ手捕りにせんと、、、陽炎、稲妻、水の月かや
姿は見れども手に取られず”牛若に翻弄される熊坂長範

能「熊坂」の詳しい解説はこちら


comment 0
04.13
Sat


鞍馬寺の奥から貴船へ下りた。二十数年前は獣道のような頼りない道で
地滑りが数か所あり、下りるのに苦労した思い出がある。
覚悟していたが意外にも、きれいにとは云い難いが一応手入れされていて
かなりの人が歩いていた。中には外国の人もいた。

IMG_6598.jpg
ミヤマカタバミ(深山方喰)カタバミ科

純白の花も葉っぱの形も魅力的な花。
この花の名を汚す仲間がある。カタバミと西洋カタバミ。
カタバミは土さえあれば都会の真ん中にも咲く生活力旺盛な花。
黄色い小さなかわいい花を咲かせるが、処かまわず這い廻り鉢にまで
侵入する嫌われ者。
西洋渡来の西洋カタバミは色とりどりの花を咲かせきれい。
魅力的な花ことばに釣られて植えたら大変、みるみる縄張りを広げ
他の花を追い出す。駆除が大変、根に小さな鱗茎を沢山つけ蔓延る。

ミヤマカタバミはこれら嫌われ者とは大違い。
人間嫌いで植えても育たない。
富士山の麓に広がる青木ヶ原樹海に群生していたのを見たことがある。
よほど奥山の静まり返った処が好きな花のようだ。

IMG_6609.jpg
キクザキイチゲ(菊咲一華)キンポウゲ科

崖の上に群生があった。葉の形からキクザキイチゲに似ているとは思ったが
寒い地方のやや山深いところに咲く花だと思い込んでいたので信じられなかった。
登って確かめるかどうか崖を見上げてやや思案、未練たっぷりで止めた。
これまで四回ガケから落ちている。二回はひどい怪我だった。
明日は大事な会がある、ケガはまずいと自分に云い聞かせた。
しばらく歩いていたら谷川の斜面に一輪咲いていた。
斜面から落ちても下は浅い川、靴に水が入る程度だろう、崖を諦めた神様からの
ご褒美だろうと手を合わせ、三拝九拝。

IMG_6623.jpg
貴船神社奥宮 2019年3月30日写す。以下同じ

貴船神社は縁結びの神様だそうで若いカップルで満員だった。
下手に拝むと、この年で縁が結ばれると困るので(笑)横目で拝みながら素通り、
奥社に向かった。昔は奥社が本社だったそうだ。
流石に奥の宮、参拝の人も少なく何やら神秘的な空気が流れていた。
「もの思へば、沢の蛍も我が身より、あくがれ出る魂かとぞ見る」
平安中期の宮廷歌人、和泉式部の歌だそうだ。失恋の危機に詠んだという。
和泉式部は恋多き女性として知られている。数々の恋愛遍歴の末、藤原保昌と結婚した。
藤原保昌は鬼退治の能「羅生門」にも名が見える豪傑武将だった。
この保昌に式部は振られそうになった。悩んだ末、保昌の愛を取り戻すべく
貴船の巫女に祈ってもらう。巫女は鼓を打ち鳴らし異様な姿に卑猥な動きで
祭壇を廻り式部にも同じようにせよという。
式部は宮廷歌人、自尊心が許さなかった「千早ふる神の見る目も恥ずかしや、
身を思うとて身をや捨つべき」これを見ていた保昌は式部に惚れ直し一生添い遂げた。
何かで読んだ怪しげな記憶。

市井の女の恋は和泉式部のようにはいかない。
夫に捨てられた女を貴船の神は鬼にした。能「鉄輪」

女は貴船の明神に丑の刻詣でして夫への復讐を呪詛する。
社人に神の告げがあった。
頭に鉄輪を乗せ松明を立て火をともし、顔に丹を塗り身には赤い衣を着、
怒る心を持てと。
神のお告げがあるや否やあたりの景色は一変、雨も降りだし雷鳴すさまじく
女の形相は一変、髪は逆立ち顔はゆがみ、立ち上がり笠を投げ捨て幕に駆け込む
姿が凄まじく恐ろしい。

陰陽師、安陪晴明の祈りに、神のお告げの様に恐ろしい鬼となって現れた女、
夫と枕を並べる後妻の髪を掴みしたたかに打ち据え、夫を連れ去ろうとする。
晴明の懸命の祈りに、時節を待ちまたくるだろうと言い残して去る。
市井の女の恥も外聞もかなぐり捨てた嫉妬に的を絞ったすさまじい能。
不思議にも女性には嫌がる人もいるらしいが、何故か男には人気がある曲のようだ。

鉄輪
「髪を手にから巻いて打つやうつのやまの」後妻の髪をつかみ打ち据える鬼女

能「鉄輪」の詳しい解説はこちら

comment 0
04.06
Sat
IMG_6562.jpg
鞍馬寺の山門 2019年3月30日写す。以下同じ

二十数年ぶりに鞍馬を訪ねた。記憶にある鞍馬寺は山門まで幅の広い
なだらかな石段、両側に桜並木、山門をくぐると、きらびやかな本堂、
暫く歩いて奥の院だった。
思い出は百八十度ひっくり返った。思い出に合うものは全くなかった。
人の思い出ほどあてにならないものはないとつくづく、どこかで見た
景色とすり替わったのだろう。
山門から本堂、奥の院までかなりの距離だった。
土の参道、自然石の階段を青息吐息で登ったり下ったり。
山奥の名刹はこれでなくては!きれいに舗装された参道なんて味気ない、
などとブツブツ、六根清浄の代わりに?唱えながら。

光源氏が幼い紫の上にめぐり合った寺“なにがしの寺”は鞍馬寺だと書いてあった。
紫の上は光源氏が理想の女として育て上げた最愛の妻。
鞍馬寺が“なにがしの寺”かどうか信じていいのか分からないが、紫の上が育った
場所に相応しい静かな佇まいだった。

IMG_6592.jpg
僧正が谷 

鞍馬寺は能「鞍馬天狗」の舞台でもある。
僧正が谷に住む天狗が美貌の少年、牛若丸にほのかな恋心を抱き愛宕、高尾、比良
横川の桜の名所を案内して回る。
念友は当時の流行りだったという。
その揶揄でもあるというが、天狗と美少年の変わった取り合わせが面白く描かれる。

山伏姿だった天狗は後場で、威厳のある、おっかない天狗の正体を現し牛若に
平家打倒を勧め兵法の奥義を授ける。
天狗の豪快な舞が楽しく、凛々しい牛若の姿が美しい。

去年の台風でモミノ木の大木が倒れていた。
あちこちで杉やヒノキが無惨に倒れていてそのまま放置されていた。
杉やヒノキは貴重な国の宝の筈だ。変なところに使う国費の僅かな一部を
山に回して欲しいし、我々庶民には関係ない政争の変テコな国会論争は
いい加減にして、荒れ放題の山のことも論じ合って欲しいと思う。
日本の山は世界一美しい。
去年の台風は怒った天狗が天狗の団扇で一煽ぎしたのだと信じたいくらいだ。

くらまてんぐ
牛若に兵法の秘伝を伝授する大天狗

IMG_6564.jpg

IMG_6578.jpg
ヤブツバキ(藪椿)ツバキ科

海岸近くに多い椿はとっくに盛りを過ぎているがここでは花盛りだった。
これほどの自生の椿は意外だった。
「山寺の石のきざはし下りくれば椿こぼれぬ右に左に」
子供の頃、兄に教わった。国語の教科書にあった句だそうだ。
当時は子供の気を引くゲーム機や漫画雑誌など無く読むものは教科書程度だった。
落ち椿がこの句の作者、落合直文の風雅な心境とは違う “何か”を子供心に連想
させたのだろう。落ち椿が何を連想させたのか兄に聞きたいが、その兄も直文と
同じ冥土の住人。

IMG_6569.jpg
ヤマルリソウ(山瑠璃草)ムラサキ科
花の少ない早春には有難い花。
派手な花ではないが小さな薄紫の花色が可愛く目を引く。
同種に歌などでもよく知られたヨーロッパ原産のワスレナグサ(勿忘草)がある。
住み心地がいいのだろう野生化している。
ドナウ川の岸辺に咲いていたワスレグサを恋人に摘んであげようと、足を取られ
急流に落ち波に呑まれる寸前、恋人に花を投げ“私を忘れないで”と叫んだ。
ワスレグサの名の謂れだそうだ。

外国の男性は女性の気を引くことが上手なようだが昔から日本人は下手だ。
見本のような話の能がある「芦刈」
落ちぶれた男は妻と別れ難波の浦の破れ小屋に住み、旅人に芦を売って暮らす。
売るほどきれいでもない芦の花は方便で芸を見せ、その投げ銭が目当て。
妻はさる大身の家の乳母に出世したが夫が忘れられず方々探し、難波の浦で再会。
男は妻の呼び掛けに我が身を恥じ破れ小屋に逃げ込む。
妻が小屋の外から呼び掛ける。小屋の内から妻を恋う情けない男の声。
まるで万葉人の相聞歌。
男が客寄せに舞う「笠ノ段」と呼ばれる舞が呼び物の曲。

能「鞍馬天狗」「芦刈」の詳しい解説はこちら

comment 0
04.02
Tue
IMG_6537.jpg
ショウジョウバカマ(猩々袴)シュロソウ科 福島産 2019年3月16日写す

三月に入りややしばらくして寒気が去った。
やれやれとボケ~っとネズミの額の庭に目をやったら梅の木の根元に
何やら薄紫の小さな丸いものが見えた。飴の包み紙ではなそうだ。
急いで行ってみたらショウジョウバカマだった。
ビックリ仰天、お目眼パチクリ、生涯になかった満眼!
植えて翌年片輪のみすぼらしい花が咲いたっきり以来、頑固に咲かなかった。
“オレは世を厭い、人も訪いこぬ山里に隠棲していたのだ、誘拐とは許せぬ”
と言わんばかりに。

IMG_6544.jpg
二番目に顔を出した鉢植え。

ショウジョウバカマは里山から亜高山まで咲く花。
東北地方や亜高山では雪解けの中から咲き出す。雪割草の異名もあるという。
里山では木漏れ日の中に咲いている。
紫外線嫌いのお嬢様育ちには町中の直射日光や照り返しがきついのだろう。
昨年初夏に木の葉を被せ頻繁に余分の水を撒いた。
その甲斐ありかどうかは分からないがきれいな姿を見せてくれた。

余りに嬉しかったのでインドのガンジス河畔の売店から勧請(ニヤリ笑)した
観音様にお供えした。
余談だが観音様のお値段、いや勧請のお布施は日本円で50数円だった。
当時、円の価値はインドの通貨の30倍、50数円はインドの通貨の
1500円~1700円に相当した。

猩々装束
能「猩々」の面と装束

ショウジョウバカマの猩々は中国の古い伝説上の妖精。
伝説は日本に伝わったが中国の伝説はそっちのけ、日本の河童以上の
哀れな話になった。
猩々を、幸せを招く妖精に描いたのは能「猩々」の功績だろう。
揚子江に住む酒好きの妖精に描く。カシラと呼ぶ頭髪も面も装束も全て真っ赤。
赤は幸せと酔態を表わす。
ショウジョウバカマは細長い葉っぱを十枚ほど地面に傘のように広げ秋に紅葉する。
葉っぱの広がりと紅葉の赤を能「猩々」の真っ赤な袴に見立てた命名だという。
さほど真っ赤に紅葉する訳ではないが名付け親は能の愛好者だったのだろう。

一時代前といえば叱られるかも知れないが政治家、文人などの知識階級の人達は
能の愛好者が多かった。夏目漱石は“能を観ながらの居眠りは至福の極み”
というような意味の言葉を発したとか。謡も習っていた。
稽古場の下で立ち聞きした人が重量感のある美声に聞きほれ流石漱石と感じ入って
いると続いて、甘ったれ坊主の駄々捏ね声が聞こえた。漱石の声だった。
三島由紀夫は能を題材にした小説を書き、瀬戸内晴美(寂聴)は新作能を作った。

扇
青海波の扇面

青海波は舞扇の文様や能「猩々」の袴の模様に用い、目出度さの象徴とする。
能「高砂」では住吉明神が「げに様々の舞姫の、声も澄むなり住之江の松影も
映るなる、青海波とはこれやらん」と目出度さを舞う。
青海波は寿福の象徴なのだろう。
能「猩々」は波がキーワード。酒に酔った猩々が揚子江の川波に戯れ酔態の
舞を見せる。物語は至って簡単。親孝行の男、高風に褒美として猩々が
いくら汲んでも尽きない酒の樽を授けるというもの。舞を見せるのが主眼の能。

乱2
能「猩々」の小書き「乱(みだれ)}
酔いに任せ、揚子江の川波に戯れ舞い遊ぶ猩々

猩々は下り端(さがりは)と呼ばれる出囃子で明るく浮きやかに登場する。
自己紹介も登場の理由も述べず、いきなり舞い始め終曲まで舞ずくめ。
休むことがない。
“老いせぬや薬の名をも菊の水” 菊の水つまり酒は不老長寿の薬、と謡う。
飲兵衛は奥さんに苦言を頂く。その際“薬の名をも菊の水”と言い訳に
使ったらどうだろう。

猩々の酔態を更に面白くした小書(特殊演出)に「乱(みだれ)」がある。
猩々の曲中に舞う「中ノ舞」を「乱」と呼ぶ舞に替える。祝言色も更に上がる。
いかにも酔ったと言わんばかりの緩急ある囃しに乗って、ある時は足元よろよろと、
ある時は波を蹴立て戯れ、酔態の様を秘技を尽して舞う。技術的にも至難の舞。
いつの頃からか曲名も「乱」と独立の曲として呼ばれるようになった。

能「猩々」の詳しい解説はこちら

comment 0
03.23
Sat

IMG_6496.jpg
多摩川 2019年3月9日写す。以下同じ

多摩川は秩父の山奥から東京湾まで流れ下る東京一の大河。玉川とも云うらしい。
玉のように美しい川と昔の人も云ったのだろう。
清流の魚、アユなどが住んでいる。猛魚ブラックバスや巨大な鯉、恋も釣れ。
堤防や広い河川敷も整備され野球、サッカー、遊歩道、サイクリングロードも
整備されていて男女老若の歓声の絶え間がない。
河口には羽田空港がある。

IMG_6508.jpg
クサフジ(草藤) マメ科 
クサフジは初夏に咲く花。我が目を疑った。是政橋の下に咲いていた。
日溜りの暖さに騙されて慌てて咲いたのだろうか。一週間程前の寒気は
どう過ごしたのだろうか。兎に角ビックリだった。
花のごく少ないこの時期の、しかも季節外れの花の鮮やかな紫青の色が
“この世の物ともおもわれず”

IMG_6520.jpg
カラシナ(芥子菜)アブラナ科
厚い葉っぱを幾重にも蕾を包み寒さを凌ぎ春の日差しを待っていた。
もうすぐ黄色い小さな花を山盛りに咲かせる。
アメリカから来た野菜だそうだ。アメリカでは野生らしいが日本では畑に
植えている。辛子の香りと風味が売り物の野菜。
土手や河原の芥子菜は畑から逃げ出したものらしい。
お浸しや浅漬けで食べた。畑のものより香りと風味があり旨かった。

IMG_6517.jpg
ノゲシ(野芥子)キク科

わずかなコンクリートの隙間に根を張り咲いていた。
目を見張る生命力。珍しい花ではないが思わずシャッターを押した。
あやかりたいものだと。
若葉はおいしいらしい。摘むと白いネバネバの液体が出る。
気持ち悪く食べる勇気が出ないので食べたことはない。

IMG_6506.jpg
イヌガラシ(犬芥子)アブラナ科

IMG_6525.jpg
ナズナ(薺)通称ぺんぺん草 アブラナ科

イヌガラシもナズナも道端にも生えていて踏ん付けられても平気で生きている。
どう見ても美味そうには見えないがナズナは春の七草。
イヌガラシとナズナはよく似ている。見分けがつかない。
実で簡単に見分けられる。イヌガラシの実は丸く細長い。
ナズナは三角、三味線のバチに似ているのでペンペン草だそうだ。
昭和の中頃までは三味線は最も親しまれた弦楽器だったが今は西洋の楽器の時代。
沖縄では今でも最も親しまれている楽器。ニシキヘビの皮を張っていて呼び名も
“三線(さんしん)”。

その昔の弦楽器は琵琶と琴。琵琶は男の楽器、琴は女性のものだったようだ。
琴の名手は高倉天皇が愛した人、小督。能にも作られた「小督」
その一節“峯の嵐か松風か、訊ぬる人の琴の音か”が黒田節でも唄われよく知られている。

高倉天皇妃は平清盛の娘、後の建礼門院徳子。清盛の迫害に身の危険を感じた小督は
嵯峨野の奥に忍んで暮らす。恋心をつのらせた天皇、源仲国に命じて嵯峨野の奥に
隠れ住むと噂される小督を探させる。帝に賜った名馬に鞭を上げ颯爽と嵯峨野へ
駆ける仲国。嵯峨野は今では観光スポット。身動きできない人混みだが当時は
都外れの超片田舎。探しあぐねた仲国。折しも十五夜、美しい琴の音が聞こえて来る
“峯の嵐か松風か”まぎれもない琴の名手小督の爪音だった。

仲国の喜びが美文で謡われ、颯爽と舞う仲国。「駒ノ段」といわれる。
高倉天皇は源平の戦いで三種の神器と共に檀浦の沖に沈んだ幼帝、安徳天皇の父。
色白の美男子でそのうえ頭がよかったが平清盛には頭があがらなかった。

琵琶の名手は平経正。十六才で須磨の浦の戦いで散った平敦盛の兄。
少年と青年の間の年齢だったようだ。能「経正」では少年の面「十六」又は
青年貴公子の面「中将」いずれでもよいとする。
経正は仁和寺御室の御所の仕えていた折、御所の宮に唐伝来の琵琶の名器「青山」
を賜ったほどの名手だった。

能「経正」は武将ではあっても優雅な貴公子、経正を描く。
仁和寺の宮の命で西海に散った経正の供養の管弦講が行われ、経正が愛玩した
「青山」が手向けられる。
琵琶の音に引かれておぼろおぼろと現れる気品ある若武者姿が絵のように美しい。
経正の霊は自らも手向けの琵琶を弾じ、舞い在りし日の夜遊を見せ舞い遊ぶ。
“第一第二の弦は索々として秋の風、松を拂って疎音落つ。第三第四の弦は
冷々として夜の鶴の子を思って籠の中に鳴く”
経正の琵琶の音は楽器の音色という域を超え遥か彼方の空想の世界に誘う。

経正

在りし日の夜遊を見せる経正の亡霊

能「経正」の詳しい解説はこちら

comment 0
back-to-top