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06.04
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ナンジャモンジャ(ヒトツバタゴ)2016年5月4日 調布市、深大寺で写す。

ナンジャモンジャとは不思議な名だ。深大寺境内で始めてこの花に出会い名札を見て首をかしげた。「何じゃこの物者は?」が転訛してナンジャモンジャになったという。代々木練兵場に大木があり名前が分からないままナンジャモンジャの木と呼んだという。江戸気質が残る東京人の洒落でもあろうか。五月初め、大木が真っ白い花に被われる。驚きは正にナンジャモンジャだ。本名はヒトツバタゴ(一つ葉タゴ)。自然のものは対馬、愛知県、木曽川周辺と限定的に生えていて何々地方というわけではなさそう。生えている場所も忍者もどきで珍しい木だという。タゴはトネリコの木。トネリコと葉と花の形が違うが盛大に咲き、遠目にはそっくり。突飛だが東京の下町の名物、モンジャ焼きの名前の由来も同じだろうかと、ひねったりする。ナンジャモンジャはヒトツバタゴに限らない様だ。銀杏の大木や、その土地にない訳の分からない大木、珍木も云うらしい。つまり、もやもやして訳が分からないと云う意味らしい。
能では行方不明になった我が子を、ナンジャモンジャのうちに、探して放浪する母親を描いた作品郡がある。母親は狂気を装っている。狂女物と呼ぶ。群を抜く傑作に「隅田川」がある。教科書にも取り上げられたので知っている人は多いと思う。

能「隅田川」
人掠いにさらわれた我が子を探して、京から遙々の旅の末、隅田川にたどり着いた母。船賃の代わりに船頭の求に舞う「狂」は唯一の見応えのある型どころ。在原業平の「伊勢物語、東下り」を種に舞う。子を思う切羽詰まった中にも和らいだ空気が漂う。笠に手を掛け「思えば限りなく遠くも来ぬるものかな」と来し方を遠望する。苦難な旅が滲み出る。ここから物語は悲劇の中に沈み込んでいく。求める子は隅田川河畔の草むした塚の中だった。ちょうど一周忌。辺りの人々も加わり弔う。盛大な念仏会。人々の善意が心に迫る。
「この土を返して今一度。この世の姿を母に見せさせ給えや」思いあまった母は塚の土を掘り起こす。子の亡霊の影が塚の中から現れる。母は駆け寄り抱きしめるが子の影は虚しく消え失せる。茫然と立ち尽くす母。現代劇の様に奔放に表現することを嫌う能、その制約の中でこれ程まで悲しみを見事に具象化した作品は希有だ。能はとかく分かり難いというが、隅田川はドラマ性に富み初心者にも分かり易い傑作。

本年6月12日 国立能楽堂で「隅田川」が上演されます。詳しくは「公演のお知らせ
をご覧下さい。
能「隅田川」の詳しい解説はこちら

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