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06.11
Sat
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カキツバタ 2016年5月4日 調布市、神代水性植物園で写す。以下同じ。

濃い紫の花色がゆかしい。紫は高貴の色。昔、カキツバタの花の汁を布にすり付けて染めたので「書き付け花」と呼ばれ、それが転訛してカキツバタになったという。古くから親しまれた花だったようだ。顔佳花(かおよばな)とも呼んだという。ごく普通に見られた花だったのだろうか。今では野性のものはめったに見られない。湿地がことごとく田んぼになったのも一因だろう。漢字で杜若、燕子花。燕子は臙脂でエンジ色、で頷けるが、杜若が分からない。杜は山野に自生するバラ科の灌木。小さなリンゴに似た実を付けるズミ、通称小梨のこと。ズミの花はリンゴの花に似ていてカキツバタの花とは大違い。若は何だろう。杜若の若い実がズミの実に似ていると云うのだろうか。杜若とは不思議な名だ。
カキツバタに限らないがカキツバタの仲間は、その立ち姿が貴婦人のようだ。「杜若」という能がある。杜若の精の話だが杜若から人への移行イメージが容易で無理がない。

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アヤメ カキツバタの仲間。

「いずれアヤメ、カキツバタ」美人を評して言う言葉だそうだが、アヤメ、カキツバタの区別は学者には簡単だろうが、ただの人には難しい。葉っぱや花弁の付け根の模様が違うらしい。アヤメは湿地ではなく野山に咲く。

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キショウブ(黄菖蒲)
鮮やかな黄色が目を引く。外のアヤメ科の花にはない色だから。地中海沿岸からの渡来だそうだ。うなずける。あちこちの水辺に野生化していて珍しくないほどだ。

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能「杜若」 業平と二条妃が渾然一体の姿となった杜若の精が伊勢物語の世界を舞う。長絹(上着)の模様は業平菱。

所は三河の国八つ橋、今の愛知県碧海郡知立町。広い湿地に杜若が群生していたのだろうか。旅の僧が見事に咲き誇る杜若に
見とれて休んでいる。「のうのう、旅人。何とてその沢には休らい給うぞ」彼方から美しい女が呼び掛け近づいて来る。今の世にはあり得ない光景だが異様な世界に引き込まれる。女は僧に在原業平の東下りを語る。僧は観客の代表なのだ。その僧が業平について尋ねる。僧も観客も伊勢物語の恋の世界に誘われていく。
女は僧を庵に誘う。庵の奥から現れた女は二条妃の御衣を纏い業平の冠を戴いて現れる。恋人二人の渾然一体の姿だ。杜若の精であると名乗る。
「遙々きぬる唐衣。著つつや舞を奏づらん」と意味深げなこの「次第」でクセに導く。
クセは伊勢物語などの語句をたくみに駆使した美文で、伊勢物語の世界に導きく。結びに業平の恋の遍歴を述べ、業平は衆生を済度する為に現れた仮の姿であって実は陰陽の神であると結ぶ。仏教全盛の時代にあって業平は神仏となったのだ。業平の仏道教化はさておいて凡人は現代風に、恋は神が約束し給う所業なり、と理解してもいいだろうか(冗談だが、少しはまじめ)。渾然一体の姿で舞う太鼓入り「序ノ舞」が想像を掻き立て魅力的に終曲、キリ導く。
能「杜若」の詳しい解説はこちらをご覧ください。

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