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09.24
Sat
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榛名山と榛名湖。2016年8月18日うつす。以下同じ

酷暑の最中、思い立って群馬県の四万温泉に行った。ついでに榛名湖を訪ねた。榛名湖はワカサギ釣りで知られている。湖の周囲には旅館や保養所、別荘、運動施設などが点在している。人はまばらだった。湖畔のメロディーラインは♪静かな湖畔の森の陰から♪だった。ダイハツのCMに使われ話題になったとか同行が教えてくれた。保養地と聞いていたので花は期待していなかった。湖畔に“ユウスゲの道”という案内板がありユウスゲの群生が見事だとあった。ユウスゲはカンゾウや日光キスゲの仲間で珍しくないし、そのうえ名のとおり午後遅くに咲き始める。チョット迷ったが行ってみることにした。驚いた。高原の花が色々咲いていたのだ。だったらユウスゲは結構だから、色々咲いているよ!と書いてくれればいいのにとブツブツ。夢中で撮った。

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ユウスゲの道

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フシグロセンノウ ナデシコ科

この花の色は他の花にはないほど不思議な色。藪に咲いていてもすぐ目に付くし見分けられる。神様の何かの印か、摘んだ花をうっかり置き忘れかと思ったり。節黒仙翁と書くそうだが節黒は茎に黒っぽい節があるから。仙翁は同属のセンノウが京都、嵯峨野の仙翁寺に植えてあったことに因んだ名。寺の名物だったのだろう。仙納は紫式部も気に入っていたそうだ。節黒仙納とおぼしき花の名が清少納言の記述にもあるという。

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キオン キク科

姿が紫苑に似ているから黄色い花のシオン、キオンとなったそうだ。新潟の上杉謙信の居城、春日山城址に盛大に咲いていた。ツワモノどもが夢の後と。
肥後女郎花とも呼ぶそうだ。黄色い小花が群がって咲く美しい姿が女郎花に似ているというのだろうが頭に肥後と付くのが分からない。肥後スミレなど頭に“肥後”の名が付くものは少なくない。

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コウリンカ キク科

濃い橙色が目を引く。ピカソもルノアールもこの色は出せまい。ユウスゲの道に異彩をはなっていた。漢字で紅輪花。長く垂れ下がった花弁も名もロマンを誘う。余談だが、橙は正月の鏡餅の上に載せ飾るが、このところトンと見かけない。現代人は“家”は代々続かなくてもいいのだろう。南九州では、ダイダイを果実酢に使った。鮮やかな橙色の実をたわわに付けた景色を処々で見かけた。ダイダイは変わったミカンだ。秋が過ぎ冬が来ても実は落ちない。初夏、新しい実がつくと古い実も青くなり秋、古い実、新しい実、共に仲良くダイダイ色に色づく。昔の人はこれにもよい縁起を託したのだろうか。

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オミナエシ オミナエシ科

優しい、きれいな花だ。風に靡く様は正しく貴婦人。秋の七草の一つ。名の由来の就いて、よくできた話ではあるので一席。
昔のご飯は蒸したご飯で硬かった。粟のご飯は軟らかだった。そこで混ぜ物無しのご飯を男飯、粟のご飯を女飯と呼んだ。粟ご飯は黄色い。女飯の様な花、オミナメシ、オンナメシが転訛してオミナエシになったという。
昔から大事にされた花の様だ。女郎花と書く。能「女郎花」では石清水八幡宮の花守の老人が、仏に手向けにと一本折り取ろうとした僧を咎めたあと女郎花について「花の色は蒸せる粟の如し。俗、呼ばわって女郎とす」「艶めきたてる女郎花」と謡う。
能「女郎花」は、夫が心変わりしたと誤解した妻が放生川に身を投げ、夫も我がために身を投げた妻を愛おしみ、続いて身を投げるという話。古今集関連の説話だというが、何やらお伽噺の匂いがする。

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タムラソウ キク科

田村草、別の名を玉箒。アザミにそっくりだがアザミではないそうだ。トゲが全くない。アザミは美味しい野草だ。タムラソウも美味しいだろうと食べてみたが苦くて不味かった。
タムラソウは丹群草だと読んだことがあるが間違いらしい。
田村草とは不思議な名だ。
 田村草の名は、能「田村」の前シテ、坂上田村麿の化身、庭掃き兼、花守の少年が手にしている箒、玉箒をもじった名だという。玉箒は綺麗な箒の意だそうだ。
洒落た名は、昔のそれなりの人は能の愛好者だったからだろう。
坂上田村麿は平安初期の武将、征夷大将軍。胆沢城を築いた。京都、清水寺の創健者であった。
能「田村」は修羅物、二番目物に分類される。修羅物は戦闘の物語だが「田村」には戦いの血の匂いが全ない明るい能だ。
春爛漫の清水寺を訪れた僧の前に現れた少年。面は童子、長い頭髪、玉箒を手にした姿が美しい。少年は清水寺の庭掃き兼花守。「春宵一刻値千銀」満開の桜に月、二人は爛漫の春を満喫する。清水境内の地主の桜は都随一の花の名所だ。「天も花に酔へりや」少年が舞う清水寺の春景色の「クセ」が美しい。
 田村堂に消えた少年は僧の読経に姿を現す。その姿はガラリと変わり猛将の恐ろしげな姿だ。鈴鹿山の鬼神退治を勇壮に舞う。腰にした刀は抜かない。雨霰の様に鬼神の上に降り注ぐ矢は清水の千手観音の知恵の矢、血は流れない。人を殺す矢ではなく、悪を除く知恵の矢なのだ。観音の知恵の矢に悪は滅び去る。
 前場に美しい少年が爛漫の春を舞い、後場では恐ろしげな猛将が鬼神退治を勇壮に舞う。
いずれも観音への深い信仰に裏打ちされた明るく爽やかな名曲。

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爛漫の地主権現の桜の下で舞う花守の少年。
  
能「女郎花」の解説はこちら。「田村」はこちら
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