FC2ブログ
10.08
Sat
猛暑は去っても、まだまだ暑い。今年は秋までも夏の暑さが続くという。それでも植物は時期を知っている。時が来ればその時の花を咲かせてくれる。お目当ての花が咲いているだろうと深大寺水性植物園を訪ねた。お目当てはサクラタデ。あと一つ少々珍しいミズキンバイを見つけた。

IMG_3285.jpg

IMG_3286.jpg
サクラタデ タデ科2016年9月24日 深大寺水性植物園で写す。以下同じ
桜蓼。名前のように小さい桜の形の花を穂のように咲かせる。透き通る様な薄紅色がきれいだ。花は小さく目立たないがその控え目なところがすきだ。
数十年前、埼玉県小川町の農家に、稲刈りの手伝いに行った。田んぼに水を引く溝にサクラタデの群生が満開だった。その感動が忘れられない。その時、名も覚えた。

IMG_3295.jpg
ミズキンバイ アカバナ科 
漢字で水金梅。湿地の花。深大寺水性植物園は昔そのままの湿地だそうだ。サクラタデやミズキンバイも昔からこの湿地に住み着いている花かも知れない。

3297.jpg
キクイモ キク科
花は菊の仲間だと頷けるが、葉っぱに切れ込みがない。北アメリカ原産だという。ショウガの様な太った根は食べられるそうだ。二次大戦前後の食料難を大いに助けたそうだ。
日本が気に入ったのだろうあちこちに野生化している。生活習慣病にいいと、最近静かなブームだそうだ。最近山梨の知人から頂いて食べたが知らないで食べたので味は覚えていない。

3298.jpg

IMG_3300.jpg
ヒガンバナ ヒガンバナ科
中国からの渡来だというが信じたくない。田んぼの畔、土手、墓、里山の中にも咲くお馴染みの花だから。我が家の猫の額にも咲く。何もない土の中からいきなり花茎を伸ばし華やかな花を咲かせ、秋の彼岸が来たと実感させられる。花が終わってから長細い葉を出して年を越し、夏には消える。全草猛毒だが薬にもなる。アルツハイマー病の治療薬でもあるそうだ。そのうちご厄介になるかも知れない。曼珠沙華(まんじゅしゃげ)とも呼ぶ。もともと曼珠沙華は仏教で天上界の花、純白で軟らかくこの花を見ると悪い事が出来なくなる有難い花。ヒガンバナは万葉の時代も親しまれた花のようで、壱師花(いちしのはな)の名で歌われているという。花色は違っても、曼珠沙華と同じ思いで、この世の花とも思えない美しさを歌ったのだろうか。
妖しげな美しさからか忌嫌われる花でもあるのも確か。
女性は花に例えられる。曼珠沙華のように蠱惑的な、妖艶な美しい女が能「殺生石」に登場する。玉藻ノ前だ。
玉藻の前は、前世、インドの王妃で悪逆無道を働き、死後周の幽王の妃に生まれ変わり、人を惑わし国を滅ぼした。更に日本に生まれ出て鳥羽の院の妃となり帝の命を狙った。
妖艶な美しさの上にさらに「経論、聖経(儒教)、和漢の才、詩歌管弦」に通じていて帝の寵愛を一身に集めたがその正体を陰陽師、阿倍泰成に見破られ、白狐と化し那須野に逃がれ石に化けたが勅命により退治された。

五番目物と称される能の中には魑魅魍魎、化け物が登場し他愛もなく退治される。
能「殺生石」もその中の一つだが一風趣の変わった曲。
先ず大きな石の作り物が舞台後方に出される。道成寺の鐘に次ぐ威容、舞台設定に大きな存在だ。所は亜硫酸ガスの毒煙が漂う荒涼とした那須野。ワキの僧とアイの供が登場する。いきなり供が「落つるわ、落つるわ」と騒ぎ立て那須野の荒涼とした景色を現出する。
毒気に当たった飛ぶ鳥が落ちて来るのだ。ワキは、旅の僧には見えない立派な出立。
僧は玄翁。彼は鎌倉の海蔵寺の開山だそうだ。以前この寺を訪ねた折、由緒書きの看板に玄翁の名はなかった。朱印書きの人に聞いたが知らないと云った。
「のう、のう。あれなる御僧。その石の辺へな、立ち寄らせ給いそ」
鳥肌の立つ気味悪い妖艶な女が、呼びかけながら玄翁主従に近づき、荒涼とした秋の那須野を背景に玉藻の前の所業を語る。
前場は語りが眼目。型は抑えられ、荒涼とした那須野の景色、石に隠れる僅かな型だけだが、見所に大きなドラマのうねりを残す。

161105_1.jpg
能「殺生石」僧にこの石に近づくなと警告する妖艶な女

玄翁は石に向かって祈り、払子を突く。石は二つに割れ玉藻の前が正体を現す。
魑魅魍魎に性別があるかどうかは知らないが、玉藻の前は恐ろしい男の姿に変わっている。
玄翁は法力の杖で石を叩き割った。大型の金槌をゲンノウと呼ぶ、この能が由来。昔は、能は一般に親しまれていたのだ。
石から現れた正体は、那須野の原で殺された様子を激しい型で語り、以後悪事を働かないと玄翁に約束し消える。魑魅魍魎とは云えども悲しい結末だが、四番目物の最後には成仏する怨霊とは違い、五番目物の魑魅魍魎は殺されて当然の悪い奴という設定だ。これ等の五番目、切能は深刻な題材の能の後を受け、肩ほぐしの役だから。
小書(異演出)に「女体」がある。後シテが女の姿に変わる。常の演出の、男の激しい型を床几に掛けて舞う。妖艶な女が強調される優れた演出だ。
能「殺生石」の詳しい解説はこちら

comment 0
back-to-top