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01.13
Sat
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犬吠埼灯台 2017年12月21日写す。以下同じ
真白な灯台も寒々と冬の景色だった。赤い筈のポストが何故か白かった。

年の瀬近くに犬吠埼を訪れた。
混雑を避け早朝出発、都心を通らないよう東京外環道から最近伸びた
圏央道から銚子を目指した。
古いカ-ナビには新しく伸びた圏央道は表示されず嘘ばかり教えられ
散々迷った末、到着したのは十二時を大きくまわっていた。
房総半島には海沿いの藪の中にも思い掛けない花が咲く。
今は冬、期待は薄いがヤブを掻き分け残骸でも見つかればと楽しみだった。
カ-ナビに騙されて時間を費やし、そのうえ冷たい強風に閉口!ヤブ潜りは諦め
しかたなく犬吠埼灯台だけに絞った。
灯台は絶壁に建っている。岩盤の上の貧弱な土に色々な花が咲く。
目指す花が咲いている筈だ。

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イソギク(磯菊) キク科
期待通り咲いていた。この辺は以前うろついたので見当は付いていた。
イソギクは特にきれいな花とは言い難いが、不思議な魅力をもっている。
花は針の様な花びらの集合。花は花弁が売り物なのに、これでも花びら?
と思うがフアンが結構いる。あちこちの庭先に植えられている。
我が家の猫の額にも植えている。白く縁取られた葉っぱがいい。
植栽のものと自然生えは味わいが全くちがう。
珍しくもない花だが遥々訪ねる意味がある。

静岡から千葉の海岸線にだけ咲く花だそうだ。
限定的で貴重品だと思う。

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スイセン(水仙) ヒガンバナ科

灯台の周りに咲いていた。
地下水が湧くわけではなし、保水力もない岩盤のわずかの土に
咲いているのが不思議。
気品のある花。スイセンを知らない人はいない筈。あちこちに植えてある。
八重咲や黄色の花などの園芸種もあるが、やはり白の一重が水仙の名に相応しい。
ギリシャ神話の美青年、ナルシスの化身だとそうだ。
地中海沿岸の原産でシルク道路を遥々旅して日本までたどり着いたという。
花の少ない冬の海岸線を飾る。殊に富山県の海岸の大群落がみごとだそうだ。

水仙の遥々の旅とはケタが違うが能でも遥々の旅をした女性たちがいる。
狂女物と呼ばれる女性達だ。新幹線もない時代に、てくてく歩いて
失踪した我が子や恋する人を探して旅する。
狂い物と呼ばれるこれらの曲は十指に余る。それぞれの道程は様々。
「桜川」のお母さんは日向がから常陸まで千数百キロ、最長ギネス級。
「隅田川」のお母さんは京から隅田川まで。いずれも子を探して。
「花筐」は恋する主君を求めて越前から京まで。
「百万」のお母さんが最短距離。奈良から京まで。楽チンのお母さんだが
子を思う心は同じだ。
おおかたは女性だが男の物狂いの変わり種もある「高野物狂」
遁世した主君を求めて常陸から高野山まで。
母は強し、恋は盲目と云わしめる作品群。
狂い物と呼ばれるこれらの能は訪ね求める人の情報集めのためだろうか
狂気を装い狂の舞を舞う。豊な芸を見せると云う点で共通している。

隅田川」これらの能の中で最高の傑作だろうか。よく知られた能。
訊ねる子は死んでいた。子の死を知らない母は伊勢物語、在原業平の
東下りを種に狂いの舞を見せる。舞はこれのみ、詞章、型共に優れている。
隅田川の渡し船の中で我が子の死を知った母の、悲しみと嘆きを手加減も、
容赦も遠慮もなく描いた作品はないだろう。
人間の悲しみの本質を、これほど的確にえぐり出した作品はないのではと思う。
不遇の中に若くして死んだ世阿弥の長男、観世元雅の名作。

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主君を訪ね高野山に入る高師四朗

「高野物狂」は忠臣の物語。江戸時代までの政治理念は儒教だった。
主従の信義が尊ばれた時代だった。
当時はもてはやされた能だったと思うが今では上演は少ない。
少年主君、春満は亡父の供養のため養育係だった高師四朗に置手紙残して
出奔、高野山に入る。
四朗は中国の故事、蘓武の例を引き忠勤の心を訴え春満の後を追う。
今の世にはない主従の絆が胸を打つ。
物語の中心となるクセでは深々とした霊場、高野山が描かれ、深い信仰心が
語られ無信心の胸を打つ。
忠勤の物語、併せて信仰の物語でもあろうか。


能「隅田川」の詳しい解説はこちら、「高野物狂」はこちら
 「桜川」はこちら、「花筐」はこちら、「百万」はこちら

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