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06.10
Tue
やなぎ
楊(ヤナギ)  ヤナギ科 2014年5月31日 長野県、車山 「柳じょ」が見える。

ふでりんどう
フデリンドウ リンドウ科 2014年5月31日 長野県、車山

わらび
ワラビ シダ類 2014年5月31日 長野県、車山


五月も終わりの31日、白樺湖を見下ろす車山を訪ねた。目的は山菜採りと野の花の写真撮り。ワラビを知らない人は希だと思うので余計な説明は省略する。今回の主役、ヤナギを写そうと腹ばいになったら、フデリンドウが目の前に!フデリンドウは平地では早春から咲き始める。ここは標高が高いので遅く咲くのだろう。花は小さく可憐。空色のその色合いが何ともいえない。キザっぽいが早春の希望の色!よく似たリンドウにハルリンドウがある。ハルリンドウは茎のてっぺんに花一つ。フデリンドウは複数咲かせる。

柳を知らない人はまずいないとおもう。ヤナギ、という字には柳、楊と二つある。柳は、シダレ柳。楊はシダレず、直立した枝のヤナギだと聞いたが真偽のほどは自信がない。街路樹や庭木のシダレ柳は中国原産。日本には40種類程のヤナギがあるがシダレ柳は無いそうだ。中国ではシダレ柳の枝を「柳條」といい、輪にして離別の人に贈る風習があったそうだ。また中国では五月、綿毛に包まれた柳の種が雪のように舞い上がるという。その幻想的な光景を見せたいと中国の知人がいう。「柳じょ」というそうだ。柳じょ、の「じょ」は「如」の下に「糸」と書く。糸の如し。楊は雌雄異株。日本に輸入されたのは雄株で、挿し木で増やす、つまりクローンだ。雌木を輸入しなかった理由はわからない。雌木がないので「柳じょ」はないと思っていた。十年くらい前だったか八ヶ岳の「鉢巻き道路」を車で走っていたら「柳じょ」に出会ったのだ。日本にもあったのだ。その感激は忘れられない。数個がふわふわ風に乗って浮いている程度で、中国のものには遠く及ばないが。
 
福島県県にある白河の関跡近くに「遊行柳」というのがある。(正確には、栃木県那須郡)この柳を詠んだ西行法師の歌「道野のべに、清水流るる柳かげ、しばしとてこそ、立ちとまりけれ」。以来、歌枕になった。西行に憧れ、この地を訪れた芭蕉は奥の細道に「田一枚、植えて立ち去る柳かな」の句をのこした。あまりにも有名なこの句には後日談があって、芭蕉のメモノートには別の句が書いてありその上に紙を貼り「田一まい」の句が書いてあったそうだ。西行の歌を意識し過ぎと思ったのだろうという。
十数年前この地を訪ねた。田んぼの中を流れる小川の縁に小さな、瘦せた柳が植えてあり農家の人に聞いてやっとたどり着いた。一昨年再びこの地を訪ねたら整備され、立派な遺跡になっていた。入り口には石碑と、教育委員会制作の解説カンバンがあった。大きな「道の駅」も。偉大な西行、芭蕉に、今の若者の目を向けさせる大きな役となればありがたいことだ。

「遊行柳」は時宗の本山、精浄光寺、通称、遊行寺に伝わる説話によるという。遊行寺の住職は代々、御札を配り十念を授け諸国を遊行した。この地を訪れた遊行の上人の前に朽ち木の柳の精が老人姿で現れ御札と十念を授けられたという。「遊行」とは僧が布教をして諸国を巡ること、十念は仏の教えを唱えることらしい。
遊行寺は今も藤沢市にある。Jr藤沢駅から歩いて15分位。長い参道の、大きな立派なお寺だ。
 
西行の歌「道のべに」の歌と遊行寺の説話を題材にした能に「遊行柳」がある。老人は醜いもの、が相場だがこの能は品格ある端正な老人姿の柳の精が主人公だ。閑寂枯淡の境地を描く名作。さしたる物語はないが、一曲の中心部、クセに清水寺の縁起、これはいいとして「源氏物語」、柏木が女三の宮を見初める艶っぽい場面があり、どう演ずるか興味の湧くところだ。柳の精の老人が「序ノ舞」を舞う。序ノ舞は女性に似つかわしい流麗な舞だが、老人の、枯淡の味の「序ノ舞」がまたたまらない。この上なく日本人を感じる能。クセの中に「蹴鞠の型」、「手飼の虎の引き綱」の珍しい型も見どころだ。

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