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04.20
Sat
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仙石原のススキ草原 2019年4月9日写す。以下同じ

箱根新名所、仙石原ススキ草原は野焼きのまま黒々とススキの芽の出る気配もなかった。
早春の珍しい花を探したが見つからなかった。

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マメザクラ(豆桜)バラ科

富士山や箱根に多いそうだ。富士桜、箱根桜の名もあるという。
花も小さいが木も小さい。楚々と咲くのがいい。
二十歳代の頃だったと思う、バスツアーで湯河原温泉に行った。
朝食前に十国峠まで登った。観光スタイルで革靴を履いて。
登山道に豆桜が覆いかぶさるように茂っていた。
その頃は豆桜の名など知らなかった。小さな変な桜だナと枝を掻き分け
岩ゴツゴツの登山道を駆け上り駆け下りた。
宿ではバスが出発を待っていた。どこをうろついていたンだと皆に怒鳴られた。

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キブシ(木五倍子)キブシ科

黄藤とも呼ぶそうだ。派手な藤には及ばない地味な花だが、ぶら下がって咲く姿から。
この花が咲くともうすぐ本格春とワクワク。
昔、キブシの実をお歯黒に使ったそうだ。お歯黒の小母さんは今では時代劇。
幼い頃、田舎にキセルでタバコを吸うおばあちゃんがいた。
笑うと真っ黒いお歯黒の歯の奥に金歯がキラリと光り恐かった。
前世代遺物おばあちゃんと母が笑っていた。

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ダンコウバイ(檀香梅)クスノキ科

諸花に先駆けて咲く。名のようにいい香りがする。
小さな花が枝に群がって咲くのが可愛い。
奥の細道の曽良よろしく卯の花ならぬ檀黄梅の花を頭に挿して帰りたくなる。
頭は枝を挿すほどの毛は無くなったが。

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フサザクラ(房桜)フサザクラ科

変わった花。パッと開いた花を見たことがない。
蕾に見えるのは雄しべだそうで花弁がないからパッと開くわけがない。
赤くてつぼみのように今にもパッと美しく開きそうで開かない花は源氏物語の
巻末に登場する悲劇の女、浮舟の風情。
母親の中将の君の期待も空しく、薫大将と匂宮との愛のはざまに苦しみ
宇治川に身を投げ横川の僧都に救われて出家する可哀想この上ない女。
能に「浮船」がある。上演頻度は多くないようだ。
出典があまりにも悲劇的だからかも知れない。

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サイフ(財布) ゼニ科(銭科?)

仙石原を少し過ぎたあたりに車が止められるスペースがあり車が数台止まっていた。
何か珍しい花が咲いていないかとヤブに分け入った。葉を落とした灌木と枯草ばかり。
ガッカリ。引き揚げようと踵を返した途端、異様なものが目に入った。
財布だった。金持ちの友達が持っているサイフの模様と同じだったので
目に付いたのだろう。だが中身は空っぽ、小銭入れまで空っぽだった。
藪の中にサイフが落ちている、どう考えても異常だ。ヤブに潜るのは変人だけ
滅多にいない。財布は多分、車上荒らしの仕業だろう。
今時の盗人はみみっちく、陰険だ。いい例がオレオレ詐欺。
昔の盗賊には豪快な奴がいた。ある種の尊敬をもって語り継がれている。
名だたる豪傑盗賊の中ではやはり熊坂長範が一番。

能「熊坂」では熊坂長範は美濃の赤坂の宿で牛若丸に殺された。
悲哀感など全く湧かない豪快活劇で楽しめる能。
 前場で熊坂の幽霊は僧形で現れ、旅の僧に回向を頼む。僧が僧に回向を頼む
というのだから違和感はあるが、これは何か起こるぞという期待もある。
シテもワキも同じ僧形だ。演者には少々演じにくい。装束の色を変えたりする。

後場のシテ熊坂は大目玉を剥きだした恐ろしい“長霊べしみ”の面をかけ、
大長刀を担いだ豪猛な姿で現れる。長霊べしみの面は怪盗、熊坂長範の顔を
写したと云うから恐いのは当たり前。

奥州の豪商、金売吉次が京での商いを終え鞍馬山の牛若丸を伴い奥州に帰る途次
美濃の赤坂の宿に泊まる。長範が吉次の財宝を狙う。

長範は床几に腰かけ諸国の盗賊の頭目を従えて来たと大盗賊の威厳をみせる。
長範の指揮一下、配下の盗賊が松明を一斉に宿に投げ込み攻め込む。
待ち受けていた牛若丸、鬼神の如く俊敏に動き長範の配下をことごとく斬り伏せる。
この激闘を長範は床几に腰掛けたまま長刀を振るい演ずる。迫力満点。
配下の惨劇に長範は「盗みも命のありてこそ」と逃げようとするが、大盗賊の
自尊心が許さない。二人の激闘が始まる。
蝶や鳥のように飛び回る牛若、大長刀を右に左に、上に下に振るう長範。
長刀の技をつぶさに見せる。
遂に後ろから具足の隙間を斬られる長範、首から黒澤映画ばりの血しぶきが
吹き上がるのが見えるが如きの迫力。
次第しだいに意識を失っていく長範が生々しく語られ、哀れを誘い留める。
登場人物は熊坂と僧の二人だけでこの大活劇を見せる。能の醍醐味。

熊坂
“打物業にて叶うまじ手捕りにせんと、、、陽炎、稲妻、水の月かや
姿は見れども手に取られず”牛若に翻弄される熊坂長範

能「熊坂」の詳しい解説はこちら


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