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2014年9月28日 調布市都立野川公園で写す

カリガネソウは葉っぱがシソに似ているのでシソ科かと思っていたら、クマツズラ科だそうだ。クマツズラは「熊の葛、熊葛」だそうだ。初めて聞く名だ。カリガネソウは花の姿が変わっているので知っていたがクマツズラは知らなかった。山野の道ばたにあるそうだが、見たことがないのか、気に留めなかったのか。目立たない草なのだろう。葛は蔓性の植物を云うが、熊葛は蔓ではないようだ。クマツズラは薬草だという。
薬草も縁遠くなった。以前は製薬会社や大学の医学部付属の薬草園があちこちにあったが、合成医薬に押されてか少なくなった。母に民間薬の苦い煎じ薬を呑まされたのが懐かしい。

カリガネソウ。雁が音(ね)草。なんとも優雅な名だ。花の形が、翼を広げて飛ぶ雁に似ているから。長く突き出た雄シベが雁の首だ。このカリガネソウ、優雅な姿、名前を持ちながら、いやな匂いが強烈だ。花には悪いがヘクソカズラ(屁糞葛)の匂いに似ている。
かなり前に出版された野草の本を見ていたら、花が雁の姿に似ているから、というのは間違いで、雁が鳴いて渡る頃咲くからだという。さらに「雁が音」はあくまで雁の鳴き声で、雁そのものではない、辞書に「雁の音」が転じて、雁そのものを云うようになった、というのは間違だと力説していた。万葉集でも、能でも「雁がね」が鳴く、渡ると詠う。至宝の文学、天下の国文学者にもの申す、その強靱な心臓が羨ましい。

雁は雛を育てて、秋になると南を指して渡っていく。能「花筐」(はながたみ)では「玉章を、附けし南の都路に、我をも共に連れて行け」と謡う。
都に急ぐシテ狂女。都には恋しい人がいる。しかし都の方向が分からない。都は南の方だ。人に聞いてもお前は狂女だろうと教えてくれない。空を見ると雁が渡っていく。シテ、狂女は雁に呼び掛け雁の飛び去る南へ急ぐ。

能「花筐」は遥かな上古の物語。上古のロマンに包まれた能。越前の国(富山県)に住んでいた男大跡迹の皇子(オオアトメノオオジ)は急遽、皇位を継ぐことになり、寵愛の照日の前と別れを惜しむ暇もなく、花筐(花籠)を形見に残し都へ迎えられ、帝位につく。照日の前は心が乱れ、後を追い都へ上る。折しも紅葉の行幸。狂女の照日は行幸の列の前に迷い出る。官人に花筐を打ち落とされ照日は抗議の舞を舞う。興味を覚えた帝は、官人に命じ、いまひとつ舞を所望する。照日は我が身になぞらえ[李夫人]の曲舞を舞う。

「抗議の舞」と、「李夫人の曲舞」が見どころ。照日の前の恋心が上品に、ほのぼのと描かれる曲。「李夫人の曲舞」はこの曲の核心。前漢の孝武帝が最愛の妃を失い悲嘆のあまり反魂香を焚き李夫人の霊を招く。舞台に冥界が現出する。



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