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02.14
Sat
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平成27年2月2日 武蔵野市境南町で写す


梅に先立って真冬ひっそり咲く。梅とおなじように葉は花が終わって春に出る。「蝋梅」の名は、花の形が梅に似ていて、風合いが蝋細工にそっくりだから。といっても梅とは縁遠いという。
葉はざらざら、まるで紙ヤスリ。枝は梅のような“たおやかさ”が全くなく、まっすぐ。姿、形に味のないこの木に、美しい花を咲かせるから驚きだ。花の上品な香りが絶品だ。「ろう月」(旧暦十二月、師走の異称)に咲くから「ろう梅」という説もあるらしい。

この美しい花を付けた枝に黒い皺だらけの去年の実が付いていることがある。
十数年前この実を鎌倉のお寺で無断で頂き庭に埋めておいた。芽が出ないまま、すっかり忘れていた。
バリ島で食べたマンゴスチンの種を庭に埋めた。これも芽が出ず忘れていた。
次の年、不思議な芽が出た。丸いユキノシタの形で厚く艶やかな葉だった。シメた、この不思議な葉は紛れもなくマンゴスチンだと狂喜した。
成長するにつれ丸い葉は消えザラザラの葉になった。ロウバイだった。周章狼狽まではなかったが。ガッカリ。
ロウバイが咲く真冬、咲く花は椿くらいで寂しく凄まじい季節だ。野山の草花は皆無にひとしい。その中でロウバイは、ひっそり寂しげに咲く。この花に見入っていると何かを語りかけてくるようだ。能「黒塚」の女が糸車を繰りながら人の世の悲哀を唄っている場面が目に浮かぶ。
     

能「黒塚」は評価の高い曲ではない。曲柄も娯楽性を目的とした五番目に分類される曲だが内容の深さは名曲だ。
主人公、シテは中年の女。世の中の苦しみを生きてきた。
晩秋の安達が原の一軒家に、行き暮れた那智の高僧一行が宿を借りる。あばら屋には女が一人、成す業もなく無為の日々を嘆いている。女は僧一行に糸繰り車を繰ってみせる。繰り出される長い糸を見つめ、長く際限のない人の世の苦しみをつぶやく。
つづいて女が謡う糸繰り唄がいい。源氏物語や都の祭りの様子を織り交ぜて謡う。
女は焚き火をして僧達をもてなそうと山に向かう。「かまえてわらわが閨の内ばしご覧候な」と凄み、念を押す。
連れの強力が女の寝間を覗く。部屋には死体累々、女は鬼だったのだ。
女は鬼の正体を現し“覗くな”という「約束」を破ったと僧一行に襲いかかる。

女の鬼と僧一行との闘争の迫力は一級品だが、糸繰り車の場面が重なり「哀れ」がふつふつと湧き出る。
能には色々な鬼が登場する。ただ邪悪なもともとの鬼、恨み、嫉妬などが昂じて鬼になったもの等々。さすれば黒塚の鬼は何か。怒りは何か。累々と積まれた死体は何かなど考えさせられる能だ。
  
   能【黒塚】の詳しい解説は「能曲目の解説」をご覧ください。
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