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05.23
Sat
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2015年5月3日 東京都小平市の小川で写す。

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2015年5月3日 多摩湖堤防の下で写す。

初めてこの花に出会ったのは大阪の住吉大社であった。程々の池に植えられていた。深い紫色は深い群青色に近かった。その美しさにすっかり魅せられたのだ。
野性の花にどうしても会いたい花が三つあった。カキツバタ、シラネアオイ、ヤマシャクヤク。植栽の花でもその美しさは格別だから。

先日、武蔵野市の浄水場から多摩湖に通ずるサイクリング道路をボロ自転車で走った。途中、小平市辺りの、両岸こんもり木に覆われた小川でこの花に出会った。その感激は心臓が止まる程だった。思い掛けない出会いだったから。
ベンチに腰掛け杖を抱え込んだお爺さんがいた。この花のことを聞いたら「昔は小川いっぱいに咲いていたが戦後、それも最近メッキリ少なくなってご覧の通りだよ」。
花の色と云い、お爺さんの話といい野性に間違いないと確信した。

シラネアオイは十数年前、岩手と秋田の県境、「見返り峠」で出会った。これも思い掛けない出会いだった。六月の末、まだ残雪があった。雪の上にシラネアオイの花が一輪挿してあった。岩と木につかまり恐ろしい急峻な谷をおりて行ったら群生していた。感動は未だ消えない。

ヤマシャクヤクにはまだ会ってない。松本の奥、鹿教温泉で葉の形が似ているのを頂いてきた。葉がテカテカしてはいるが、もしかしてと思ったのだろう。果たして次の春、黄色い小花をつけた。まったく違うものだった。思い込みは全てを誤る。だが十数年経った今も黄色い小花をつけて健在だ。どんな花でもよくよく見れば可愛い。

カキツバタの名の由来は「書き付け花」。昔この花を布にこすりつけて染める行事があったという。普通、杜若とか燕子花と書くが間違いだそうだ。だが“杜若”のほうが通りがいいし一般的だから仕方がないか。
花茎が短いのが欠点と云うが、花の上にツンツンと尖った葉っぱの先が突き出て槍に似ていて、花を守っている様な風情がいい。花色の紫は高貴な色。能では紫の装束は主に高貴な女性用だ。

キショウブ。黄色の杜若と思い込んでいたら黄色いショウブだそうだ。それも西ヨーロッパから明治時代に輸入されたものだという。今では至る所で野生化している。川岸のしめった所に雑草に混じって咲き、鮮やかな黄色の自己主張が目を引く。

能、「杜若」では東国行脚の都の僧が杜若の名所、三河の國八つ橋で「かほよ花とも申すやらん。あら美しの杜若やな」と感嘆する。今でも別名「かおよぐさ」顔佳草ともいうそうだ。美しい顔の花は言い得て妙とガッテン。
能「杜若」は杜若の精が伊勢物語の恋の世界に誘う。杜若に眺め入っている僧の前に現れた女は杜若の精であった。女は我が家に僧を招き入れ、業平の冠、高子の妃の御衣を着て再び現れる。女は、杜若の精、高子の妃、業平が契った数々の女、業平自身が渾然一体となったかのように伊勢物語を艶やかに語る。
「クセ」では伊勢物語「東下り」が語られる。「東下り」といいう悲哀を、美しい詞章が詩情に変え、業平は実は陰陽の神、男女の仲を司る神だと結ぶ。“草木心無し”といいながら杜若の精を登場させ、昔男業平「陰陽の神」論、説得力だ。クセを語り終え、陰陽の道を賛美するかのように浮きやかに「序ノ舞」を舞い「昔男」業平と、美しい杜若を賛える美句を連ね終曲となる。
能「杜若」の詳しい解説は「能、曲目の解説」をご覧下さい。
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