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2015年6月12日 八王子市高尾 多摩森林科学センターで写す

野や山の少し湿り気のある所が好きなようだ。、珍しい花ではない。桜の形をした小さな花を房状に咲かせる。清楚な花。
虎の尻尾になぞらえてオカトラノオ。オカは沼に咲くヌマトラノオや海草のウミトラノオがあるので区別するためだそうだ。

この花に忘れられない思い出がある。
娘が小学校3年の時、“いじめ”にあった。「ばい菌」と呼ばれていじめられた。
ある日、夜九時になっても帰って来なかった。友達の家など心当たりを探した。
机の上に置き手紙があった。「章子は家出します」
夜遅く農家の拓さんから電話があった。章子が訪ねて来たと。
拓さんは埼玉県小川町竹沢の農家。無農薬、有機肥料の野菜を仲間と作っていた。
この野菜を共同購入する会を作った。
拓さんも山田、こちらも山田だったので「かかしの会」と名を付けた。
日曜、祭日毎に会の人や子供を連れて、収穫や草むしりに通った。
章子は八高線、竹沢の駅から拓さんの家までの道をよく知っていたのだ。
二三日泊めて頂き様子を見に行った。
拓さん曰く「子供が学校にも行かずブラブラするのはどんなものか、これ以上預かれません」拓さんは律儀な人だった。
 埼玉県東松山市に「原爆の図」で知られる丸木美術館がある。丸木位理、俊画伯夫妻と親しくして頂いていたので助けを乞うことにした。
俊さん「嫌な学校なんぞ行かなくてもよろしい。ここには学校より面白く為になる教材が沢山ある」と引き受けて下さった。
以来、章子は美術館のアイドルだったが秋も終わりのある日突然、学校に復帰して丸木夫妻と親をガッカリさせた。
親がガッカリしたのは、まだまだ美術館にいて欲しかったからだ。
章子のいじめを知って、担任の先生に会った時、先生が「いじめられる側にも原因があるのでは」と突き放されたから。当時は“いじめ”に対する認識はこの程度だった。

竹沢駅から拓さんの家まで二キロ弱、所々に「オカトラノオ」の群生があった。当時はきれいだなと思いながら名も知らなかった。
章子はオカトラノオをお尻に当てて“ヘチャ”の尻尾とふざけた。他の子供達も当ててヘチャの尻尾と叫声を上げた。“ヘチャ”は当時飼っていた猫の名前だった。
この花を見るたびに当時を思い出し胸が痛くなる。
章子が歩いたこの道には街灯などなく真っ暗、梟が鳴いていて怖かったと章子はいっていた。その章子も今は二児の母、人生、何があっても時は流れるものだとつくづく思う。

鵺という鳥がいるそうだ。その鳴き声が薄気味悪いという。鵺の声を聞いたことはないが章子が竹沢の暗闇で聞いた梟のように気味悪いのだろうか。
能に「鵺」がある。頭は猿、尻尾は蛇、足手は虎、鳴き声は鵺に似ているという怪物。
天皇の命を狙い源頼政に殺された。
旅の僧が所の人に宿を断られ、川岸のお堂に泊まる。
夜更け、丸太の舟に乗って、人に似た怪物が現れる。名を聞くと頼政に殺された鵺の亡霊だという。
僧は罪障懺悔にとその時の有様を訪ねる。
鵺の亡霊はその奇っ怪な姿で頼政になり、鵺を殺す様子を見せる。
扇を重籐の強弓に、鵺を射落し、すかさず扇を刀に鵺を刺す。奇っ怪な姿の殺戮に息を飲むリアルさだ。
鵺の亡霊は成仏の手立てもないまま悲しげな鳴き声を残し再び丸太に乗り暗闇に消える。
地謡が「幾重に聞くは鵺の声、恐ろしやすさまじや、あら恐ろしやすさまじや」と謡う。

僧は鵺のために経をよむ。仏法は人間のみならず怪物の鵺も、万物を成仏に導く。
経に引かれて鵺が生前の姿で現れ、頼政の文武の誉れを語り「頼政は名を上げて、我は名を流す空舟に押し入れられて、、、、、、、月日も見えず、暗きより暗き道にぞ入りにける、遥かに照らせ山の端の月、、、、、」と悲痛な叫び声を上げながら海の底に沈んで行く。

前場も後場も頼政の武勇が中心に語られる。殺された鵺の悲哀は武勇の陰だ。その故だろうか鵺の悲哀が身を切る。
 鵺は反体制の人達だともいう。だからといってこの能に意味があるわけではないと思う。
素直に哀れな鵺の姿を見たい。
「暗きより暗き道にぞ入りにける、、、、、」は和泉式部の歌。この歌を巧みに使い更に広い意味に、ドラマも加える。謡曲文学の優れた特徴だ。
  能「」の詳しい解説は「「能曲目の解説」をご覧下さい。

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