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2015年8月30日栃木県塩原で写す

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能「鉄輪」 怨の鬼女となって夫とその女に迫る

草や低木にまつわり付き、まるでヤブガラシのように憎い奴だと思っていた。
憎さ募ってか、花は気にしていなかった。
この夏、那須の山道を通りかかったら、白くシーツを干したような、花らしきものが見えた。慌てふためいたのか、道の真ん中に車を止め、駆け寄って見たらボタンズルだった。
こんなに盛大に咲いたボタンズルは初めって見た。
憎い奴だと思っていたせいか、その清楚な美しさに感動倍増だった。
エミグサとも呼ぶという。笑草だろうか。悪者扱いにしたのが悔やまれる。

カザグルマやテッセンなどクレマチスの仲間で、葉の形がボタンの葉に似ているから付いた名だそうだ。ヤブガラシのように、町の中にはない。少し山めいた所。
少し人嫌いの花なのかも知れない。植物の中には、人間大好きと、人嫌いがあるのだ。
若芽をお茶にする地方もあるとか。
鹿児島ではネコナブリ。猫がじゃれつくというのだろうか。想像しただけでも可愛い場面が目に浮かぶ。鹿児島の人は優しいのだろうか。

蔓性の植物は草や木に纏わり付き、這い登ってお日様の恩恵にあずかるのだ。
あながち悪者とも云えまい。
よくよく考えるに、蔓性の植物を悪者扱いにするのは人間のエゴだ。悪者呼ばわりはあまりにも可哀想だ。
能でも執心の炎も燃やし、蔓のように相手に絡みつく男や女が登城する。
人間の本性、如何ともし難い苦しみや悲しみを描く秀作が多い。「定家」「綾鼓」「通小町」「葵の上」「鉄輪」等々。

能「鉄輪」は市井の女の凄まじい嫉妬を描いた作品。
高貴な女性、六条御息所の嫉妬を描いた「葵上」と引き合いにされる作品。
夫に捨てられた女が恨みを晴らそうと貴船神社に丑の時詣でをする。
信託が下った。鉄輪の足に火を灯し、頭に乗せ、顔に丹を塗り、赤い衣を着、怒る心を持ち、鬼の姿になれと。
女は信託を聞き、決然と立ち上がる。瞬間、女の髪は逆立ち、雨が降り稲妻が走り突風が吹く。その中を女は我が家に走りかえる。
笠を投げ捨てて立ち上がり走り去る、凄まじい女の形相が、嫉妬の恐ろしさを凝縮して見せる。
夫は、このところ夢見が悪いと安倍晴明に占ってもらう。
清明は男を見るなり、占わなくても男の顔に女の恨みの相が出ている、今夜あたり取り殺されるだろうと見立てる。
男は妻を捨て、別の女もとへ通っていたのだった。
夫は清明に転じ換えの祈祷を頼む。
清明は三重の高棚を設え、五色の弊を立て、男女二体の形代を置き、肝胆を砕き祈る。
清明の祈りに惹かれる如く、鬼となった女が男への恨みを吐きつつ現れる。
清明は必死に祈る。鬼女は裏切った夫への、それでもなお残る夫への思慕を嘆く。
女心の哀れが胸を衝く。
鬼女は清明の呪術に必死に抗し、夫と女の形代に迫るが、清明の駆使する式神達に追われ、時節を待って又来ると悲痛な声を残して消える。
安倍晴明は平安中期の人。陰陽道の祖。

能「鉄輪」の詳しい解説はこちら




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