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富士山遠景 2015年10月19日 雁腹摺山山頂で写す

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トリカブト 

10月半ば過ぎ、雁腹摺山に登った。
昔、五百円札の裏にあった富士山の写真を撮影した山で有名だという。
富士山の眺めが随一の山だそうだ。
目的は山に登るためではなかった。
登山口に毎年咲くトリカブトの花を撮るためだった。
大月から車で30分、胸をはずませてたどり着いたたら、ただの一本もなかった。
辺りを探したが見つからなかった。林道を管理する人が刈り取った形跡があった。
ガッカリ。管理人にとっては、タダノ雑草だろうが、管理人を恨んだ。
腹立ち紛れに山に登ることにした。
この雁腹摺山には登ったことがなかったから。
ところが、思いも寄らなかった。途中の沢のほとりに群落があった。
神の導きか管理人の導きか、感謝、感謝だった。管理人への逆恨みが悔やまれた。

トリカブトは附子ともいい猛毒でよく知られている。
昔、アイヌの人達は矢尻にトリカブトを塗って熊狩りをしたと聞いたことがある。
強精剤でもあるそうだ。
もう二十数年前にもなるだろうか、或る博物学者が強精剤に愛用していた。
もう少し効き目をと、量を増やして中毒、落命したそうだ。
薬と毒は同じものという好事例ではないだろうか。
トリカブトの名は、花の形が舞楽のかぶり物、鳥兜に似ているからだという。
鳥兜は想像上の霊鳥、鳳凰の頭を模ったものだそうだ。
能では鳥兜は男のかぶり物。唯一、女が鳥兜を被って舞う能がある。
「富士太鼓」「梅枝」。
この二曲は同じ素材を、視点を変えて作った作品。夫婦の情愛を描く。
能の情愛物といえば隅田川など親子の情愛が思い浮かぶが、夫婦の情愛物も結構ある。

宮中で舞楽が催され、諸国の役者が召し集められる。
住吉明神に仕える太鼓の役者であった夫も参加するが、同じ役の者の恨みで殺される。
夫の身を案じて都に上った妻は、その報を聞き、嘆き悲しみ、やがて狂乱となる。
妻は夫が殺されたのは太鼓故、太鼓が夫の仇なのだと夫の形見、舞楽の衣装、鳥兜をつけ、バチを刀に太鼓を打ち、舞い狂う。
 妻は娘、子方を連れて登場する。
この子方はシテとの連吟や、母の狂乱を諫めたり、また太鼓を仇に見立て打つなど活躍すする。この能を更に華やかにする。
シテは鳥兜に舞衣の華やかな扮装に、バチを刀に「楽」を舞い、狂乱を舞う。
現在能の強み、現実味豊かに、華やかに。芸の面白さを狙った作品。

「梅枝」は富士太鼓の後日談ともいうべき作品。
その身は死しても、変わらない夫への慕情をえがく。
富士太鼓と同じ衣装で同じ楽を舞うが、しっとりと追慕の舞を舞う。
作品の格としては富士太鼓よりも遥かに上位にランクされるが上演頻度は富士太鼓が多いようだ。
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