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野菊 キク科

カテゴリ:野菊
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ノコンギク 2014年9月27日 東京都調布市 都立野川公園で写す

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ノコンギク 2014年10月25日 東京都調布市 都立野川公園で写す

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ハマギク 2014年10月30日 茨城県高萩海岸で写す

この花が咲き始めると伊藤左千夫の「野菊の墓」を読んで熱い涙を流した少年の頃を思い出す。
野菊。広辞苑にノコンギク、ノジギクなど。またヨメナの別称。日葡辞書の引用とある。
つまり野山に咲く野生の菊と云うことだろう。
ふつうには野菊というとノコンギク、ヨメナ、ユウガギクを指す。これらは「万葉集」の時代にも親しまれた、道ばたにもあるごく身近な山菜だ。秋には真っ白や薄紫のきれいな、やさしい花をさかせる。
「野菊の墓」の民子が愛したのもノコンギク、ヨメナ、ユウガギクの花だろうか。この三つは姿も花もそっくりで区別がつかない。花が終わり種になると簡単に見分けられるというがそれは学者に任せよう。やはり区別なく「野菊」の呼び名が優しくていい。

日葡辞書は日本語、ポルトガル語の辞書。日本イエズス会が1603長崎学林で刊行したという。もう既にこの頃から「野菊」の呼び名で親しまれていたのだろうか。

菊は櫻と共に日本人に最も愛されて来た花。共に国花。殊に菊は天皇家の紋章だ。
一般に何々菊と呼ばれる、いわゆるキク属は50種、キクの仲間、キク科に至っては、よく知られている,
タンポポ、アザミ、ハルジオン、セイタカアワダチソウ、フジバカマ、ハハコグサ、オケラなどの種類、350種、植物の種の中で一番の多さだそうだ。

野菊が終わりに近づくと野山はしだいに寂しくなる。
能「野宮」(ののみや)では「秋の花みな衰えて虫の声も枯れがれに、松吹く風の響きまでも、淋しき道すがら秋の悲しみも果なし」と謡う。光源氏が傷心の六条御息所を野々宮に訪ねた晩秋の嵯峨野の情景だ。

源氏物語には数々の可哀想な女性が登場する。
六条御息所は可哀想を越えて悲惨だと思う。
御息所は皇太子妃だった。夫を失い、どん底に落ちるのだ。昔は身分のある人も主を失えば経済的にも窮屈だったらしい。そこへ光源氏が通ってくる。御息所の源氏への愛は尋常ではなかった。御息所の嫉妬の炎は「車争い」の恨みも重なって生き霊となり源氏の正妻、「葵上」を取り殺す。高貴な身分の、「後妻打ち(うわなりうち)」の、はしたない所行に思い悩むが、御息所の生き霊は、思いとは裏腹に勝手に身体から出て行って「後妻打ち」に及んでしまう。共感身につまされる。

能「野宮」は源氏との愛に苦しむ、六条御息所を作った作品。
御息所は、「事件」の後、源氏との愛を諦め、心に葛藤を抱いたまま、斎宮となる娘に付き添い伊勢に下る決心をし、娘と精進潔斎のため野々宮に籠もる。さすがに源氏は御息所の心境を思い野々宮に御息所を尋ねる。御息所は死後もこの時の源氏の面影を忘れかね、その面影をもとめて思い出の野々宮の旧跡に、あの世から立ち返るのだ。
終曲では「また車にうち乗りて火宅の門を出でぬらん。火宅の門を」と結ぶ。やりきれない終末だ。「火宅」は苦しみに満ちた現世の例え。御息所の霊は車に乗って出て行ったが、この苦界を出、苦しみを乗り越え成仏出来ただろうか、というのだ。「火宅の門を」と止め「出ぬらん」が省略されているのは「疑問」だということだろう。

斎宮は天皇の名代に神に仕える未婚の女性。皇族の中から選ばれた。伊勢神宮は斎宮、加茂神社は斉院。 

能「野々宮」の詳しい解説はは、能曲目の解説をご覧下さい。
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11.23
Sun
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佐渡の残照 新潟県瀬波温泉から写す 2014年11月21日16時20分頃

前回、卒業証書(三)のあらすじ
貧血で倒れた母を見舞った桂馬に、母は姉、曜子の出生、生い立ちを告白した。何となく気づいていたが曜子は母の子ではなかった。母は曜子の出生の経緯を聞くことを止め、祖母にも他人に口外しないよう約束させた。色々な思いがあったからだと語った。桂馬と温子は母と曜子の苦しみを想いやったのだった。

母の見舞いから帰って、翌日の夜、曜子から電話があった。
「お母さんが桂馬に話したこと、私にもしてくれたの。嬉しかったわ。でもね、それはとっくの昔、そうね、十七才、高校二年頃だったかナ、解決済み。もうずっと昔からほんとの母娘よ!いろいろあったわ。今思うと懐かしい。でも嬉しかった!手紙書くわね。驚かないでよ。これでも文才あるんだから。ア、そうそう、桂馬に呑みすぎは駄目よって言って」電話の曜子の声は弾んでいた。温子はただ相づちを打つだけだった。

その夜、遅く帰った桂馬を温子はいつもよりニコニコ迎えた。
「なにかあったの?」
「そうよ!お姉さんから電話があったの。お母さんの例の話。お母さんネ、お姉さんにもしたって。とても喜んでたわ」
「そう。いまさらという感もしないでもないが、よほど嬉しかったのかナ姉さん。それにしてもあの気丈な母さんが。気弱になったのかナ。ちょっと心配だナ」
「どうして?」
「年になって気弱になると更に悪い病魔が忍び込むのさ。ア、これは冗談。温子はすぐ信じるから。余計でした、ごめん」ふたりは顔を見合わせて笑った。温子は台所に立ち、
「あ、そうそう、お姉さんがね、飲み過ぎは駄目よ、ですって。といってもネ」くっくっ、温子の忍び笑いがきこえてきた。

曜子から電話があって十日ほど、手紙が届いた。分厚く詰め込まれた封筒は、ほぼ楕円形に近かった。
温子は手紙を繰り返し繰り返し読んだ。温子の目は赤かった。
「あ~ア、わたしなんか苦労ゼロ。少しでも肩代わりしてあげたかったナ」フ~と大きな吐息を付いて天井を見上げ座卓に手を突いて立ち上がり台所に向かった。台所に立っても手紙の文面がちらついた。
「あの時お姉さんはどうしたって書いてあったかナ?」また居間に引き返し手紙を読み、台所に行き、また居間に、を数回くり返した。
「ガラ」玄関のガラス戸が開いた。ガラス戸の開け方は桂馬だ。台所のまな板に向かっていた温子は包丁を投げ出すように置きスリッパを鳴らして小走りに玄関に向かった。
カバンを受け取り、
「お帰りなさい。お姉さんから手紙がきたの」温子の目がうるんでいた。
桂馬は座卓の前にドカリと腰を下ろし、そのまま広げてあった手紙を読みだした。
桂馬は手紙に目を据えたまま
「今日は風呂、中止、ビール飲みながら話しをしよう。オカズはあり合わせでいいよ」
「は~い。作りかけがもうすぐできま~す。あとなにか簡単なもの作るわ」
「朝子。手伝って~」
「は~い」間延びした声が聞こえ、二階から朝子が降りてきた。
「何かあったの?慌ただしいわね」
「お父さんがネ、お祖母ちゃんと曜子おばちゃんの話をしたいって」
「わたしも仲間に入っていい?」
「歓迎よ。朝子も、もう大人なんだから、おとなの話も少しは知って置かないとね」三人は座卓をかこんだ。
「朝子もビール飲むかい?」
「い~らない。コーラでグー」
「そのうち飲むわよ、浴びるほど。お父さんの娘だもの」いつもの和やかな雰囲気から始まった。
「何の話?」
「そうそう。朝子には断片的に少し話しただけよね。これ読んで。」朝子はしばらく読んでから手紙から目を離さず二階の階段を静かに上がっていった。
朝子はしばらく降りてこなかった。
「朝子にどの程度まで話していいだろう?」
「なにも隠すことないわよ。私たちの頃とは違うもの。今の子は高校生になったらもう大人。朝子は大学生よ」
朝子が手紙を片手に緊張した面持ちで降りてきた。
「信じられない」と呟いた。
桂馬は朝子に顔を向け、
「姉がこうも赤裸々に書けるのだから、いまは何のしこりも無いと云うことだろうね。
姉が母の子でないことに気が付いたとき世間並みに騒いでいたら、身の回りの人、巻き込まれたかも知れないね。母も姉も賢いナ。しかしこの手紙には驚いたね。あの姉がこんなに苦しんだとは」
「あんなに明るい姉さんがねエ」
「十代の姉さんは、暗く陰気だったんだよ。何時も下を向いて歩いていたんだ。下向いて歩いてもお金、落っこちてないよといって睨まれてね。忘れられない想い出だよ」
「良子さんのお陰よってこの手紙に書いてあるわよね」
「そう、二人は高校時代からの大の仲良しなんだ。良子さんは底抜けの根明なんだ。陰気と陽気とで馬が合ったんだろうね。姉が大学受験の時、大学など全然興味がなかったのに、姉につられてその気になって、両親を説得したんだ。漁師の娘に学問は要らないと突っぱねるお母さんを、それなら“首をつる”と脅してね。猛勉強したんだって」
「あの東北新報お偉方夫人が?」
「そう」
「曜子おばちゃんが陰気になるのも当たり前よね。曜子おばちゃんのほんとのお母さんは誰?父親はお祖父ちゃん?」
「どちらも分からない。お祖母ちゃんが知ることを拒否したんだ。お祖父ちゃんのお母さん、つまり姑にも口外しないように約束させたんだよ。理由は分からない。話してくれないのだよ。こちらで推測するしかないんだ」
「そんなのないわよ!理不尽よ。わたしだったら徹底的に真相を究明する。究明して対抗手段をとります」朝子が目を剥いて気色ばんだ。
「あの頃は女が自分で生活するのは難しい時代だったのよ。だけどそれだけではなかったと思う。お祖母ちゃんがとった行動はうまく云えないけど、人間として大事な、重要な事だったと思う。おばちゃん偉いわ。わたしなんかには真似できはい」
「そうだな、その時は理不尽でも時が経つと道理になることだってある。だから今があるんだと思う」
「そうよね。お母さん、言ってたわよね。初めは自分に与えられた“仕事”だと思って曜子を育てようと決心したけど今は曜子におんぶされているって。人の幸せは分からないものよねって」
朝子は後ろに両手を突いて身体を倒し天井を仰ぎ、
「ふ~ン。そう言われると、そうかナ~」
「人間が生きていく三原則、衣、食、住だけでは生きて行けないンだ」
「かてて加えて愛憎問題があるのか~」
「卒業式の校長先生のお話“人生の荒波”ですねウンウン」
「朝子はこれからから大変よ。これらの問題を一つ一つクリアしなければいけないのよ」
「わたしは“憎”は要らない。愛だけで結構」
朝子は笑いながら起き上がり答えた。
桂馬は朝子に顔を向け
「とにかくお祖母ちゃん、曜子おばちゃんの気持ちを尊重して、詮索するのは止めにしよう。二人にとっては重大な決心だし誰にも真似出来ないことだからね」
静に淀む夜の空気を貫いて犬の遠吠えが聞こえた。
「あの犬、私たちの話、聞いてたのかしら」
朝子が呟いた。三人は顔を見合わせ微笑んだが、ぎこちなく笑い声にはならなかった。
三人の話は夜半まで尽きなかった。
    
(つづく)




   


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11.03
Mon
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平成26年9月21日写す 調布市野川公園

丸い紫色の実が美しい。草木の実には美しいものが多いがこれは格別だ。紫式部にあやかって付けた名だと信じていたが、どうも違うらしい。実の付く様子で「紫敷実」または「紫茂実」から転じた名だという。いずれにしても和名は紫式部。紫の十二単が目に浮かぶ。
紫は高貴な色。能では高位の女性が着る。日本人は着衣の色で身分、性別を表した。着物の襟や、坊さんの法衣にその名残がみえる。伝統芸能でもある能でも色の使い方に制約がある。例えば襟。若い女性は赤。お爺さんは茶。鬼や武人は紺。などなど。

「ムラサキシキブ」紫の色があまりに綺麗なので、果実酒にしたら綺麗な果実酒が出来るのでは、と試してみた。色も味も全く駄目だった。山桜の果実酒が真っ赤で美味しいのに味をしめ、紫の美味しい果実酒が出来たら自慢しようと思ったが全くの期待外れだった。

紫式部。誰もが知る「源氏物語」の作者。千年前、世界の何処にも無かった大長編小説。仏教では物語の類は狂言綺語(道理に合わない“言”と巧みに飾った“語”)であり、人の心を惑わす「妄語戒」を犯すことだとして、その作者は勿論、読者までも地獄に落ちるとする。平安末期の説話集に紫式部が妄語戒を犯した罪で地獄に落ち苦しむと言う説話があり、その後、式部を供養する「源氏供養」が始まったという。宮中では源氏物語の巻名を読み込む、又は題にした会が催され、藤原信西の孫、安居院法印は源氏物語五十四帖の巻名を読み込んだ表白を作った。表白とは法会の時導師が法会の趣旨を述べる文だそうだ。
 
能に「源氏供養」がある。この曲の眼目は安居院法印の表白に少々手を加えたクセ。源氏物語、五十四帖の内二十六帖を謡う。「“夕顔”の露の命を観じ、“若紫”の雲の迎え、“末摘花”の臺に座せば“紅葉の賀”の秋の落葉も、、、、、(“”は巻名)」唯々美文に酔う。前場はワキ、安居院法印に光源氏の供養を懇願するシテ、紫式部の姿が描かれる。難解な字句、かけことば、説話などもなく分かり易い。この曲には三番目物(“優美”を事とする曲)には付きものの「序ノ舞」がない。その分「クセ」が強調される。小書に「舞入」がある。通常の「イロエ」に代えて「中ノ舞」を舞う。「クセ」は思い入れなど感情移入しないことが昔からの戒め。
「源氏供養」の功徳で紫式部は救われると云うのが順当と思うのだが、紫式部は実は石山寺の観世音菩薩で、この世の無常を教えるため、この世に現れ源氏物語を書いたのだと結ぶ。意外な結末だが外にも同じような例がある。能「杜若」では在原業平は陰陽の神、「誓願寺」では和泉式部は歌舞の菩薩であるとする。
石山寺は紫式部が源氏物語を書いた所だという。今もその書院というのがある。
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