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09.26
Sat
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塩竃の残照 2013年12月26日写す

次第
竹内桂馬。団塊の世代。何事をなすこともない世界に生きる。情感の起伏も薄い。
突然過去の断片が甦る。それは残照。しばらく輝き、そしてしずかに消えていく。

前回までのあらすじ。
桂馬は幼時から少年期まで、母から女性に対する警戒心を植え付けられた。
母の意図がおぼろげに想像できるようになった頃、それは次第に桂馬のトラウマになって行った。
桂馬は偶然、桜子と知り合った。
桜子は世田谷にある女子大の学生だった。
その桜子に桂馬は卒論の手伝いを頼まれる。
桜子は派手やかの中に知性を感じさせる女性であった。
桂馬は警戒しつつも次第に桜子に惹かれていく。
桜子が卒論を提出してから、二人は担当の教授宅を湘南に訪ねた。
教授の奥さんが桜子と同郷の寒河江だったからだ。
江ノ島と富士山が美しい夕暮れの海岸を二人は歩いた。二人はごく自然に手をつなぎ、そして唇を重ねた。
 桂馬が桜子と知り合ったのは従兄弟の友達、久徳に連れられて新宿の“歌声喫茶”に
行った時だった。
桂馬は久徳が、桜子に関心がある事は桜子の言葉の端から感づいていた。
 冬休み、二人はそれぞれの郷里、桜子は寒河江に、桂馬は塩竃に帰った。
寒河江の桜子から塩竃の桂馬に手紙が届いた。「山寺」に行こうと誘いの手紙だった。
その後、冬休みが終わる頃になっても連絡はなかった。
桂馬は待った。あれこれ思い、杞憂と念じ待った。
桂馬は思い切って手紙を書いた。
 冬休みも終わり桂馬は大崎の下宿に帰った。桜子から手紙が届いていた。
二人は渋谷の喫茶店で会った。
桜子は躊躇もなく告白した。久徳が、桜子の心の中の隅々まで占めてしまったと。
二人の間に何が起こったのか、桂馬には推測する余裕もないほど混乱した。
桂馬は無言のまま桜子を目蒲線の改札まで見送った。
改札近く、突然大きな腕が伸び桜子の腕を摑んだ。久徳だった。
桂馬は茫然と立ちつくした。いつまでも。


桂馬は目黒駅の階段を俯いて、だらだらと下りた。頭の中のものは全て放出し尽され、何も残っていなかった。
開いた電車の扉の中に片足を載せた瞬間、胸の固まりが膨張した。
目を強く二、三度しばたいた。
桂馬はドアの横に立ち、外に視線を向けるともなく向けた。
窓の外の景色が線を引いて流れていく。桂馬は虚ろな視線を外に向けたまま立ち尽くした。
「新宿」のアナウンスに反対方向に乗ったのに気が付いた。

春の気配が感じられるようになって、桂馬の心の霧も徐々に晴れる気配を見せ始めていた。
その日は日曜だった。何故か朝早く目が覚めた。
桂馬は長塚節の「土」を読んでいた。
「土」は高校生の頃、学校の図書館で見つけた小説だった。
乱読だった桂馬は、この小説の貧しい農民の姿にすっかり引きつけられた。
故郷を出るとき無二の親友、民雄が餞別にと呉れたのだった。
「桂ちゃん電話よ。久徳さんから。急ぐんだって」階下から叔母の声が聞こえた。
太い綱が桂馬を強引に過去に引き戻し、胸の大波がうねった。
「すまないが、電車賃をもってきて呉れないか。今、彼女の所にいるんだ」
「エッ」桂馬はあとが続かなかった。
「財布、空っぽなんだ」
「彼女に借りればいいじゃないですか」精一杯の抵抗だった。
「バカ、女なんぞに銭なんか借りられるか」
「五百円玉一個と百円玉、二、三個しか持っていません」
「それで十分。きっと返すから心配するな。八時まで目蒲線の洗足駅に持ってきくれ」

桂馬は、旗の台駅から洗足駅まで歩いた。早春の朝の冷気が異常に沁みた。
久徳が改札前のコンクリート階段下の端で待っているのが見えた。
桂馬はポケットに手を入れ小銭を探った。
顔を上げると女性ガ久徳に近づきマフラーの様な物を差し出した。
桜子だった。
寝起きのままの姿にコートを羽織り、髪は乱れていた。
穿いた突っかけが強烈に桂馬の目を射た。
咄嗟に幼い頃、祖母の家の前を、ちびた下駄を鳴らして銭湯に急ぐ、歓楽街の女性の姿が浮かんだ。
渋谷や湘南、上野の駅で会った桜子の面影は微塵もなかった。
桜子は桂馬に気が付くと深々と頭を下げ俯いたまま小走りに去っていった。
「オー有り難う。早朝からすまない」久徳の顔はこわばっていた。済まないという顔ではなかった。
桂馬は小銭を握った拳を久徳に突きだした。
拳は小刻みに震えた。
開いた掌から小銭が一個こぼれ落ちた。
“チャリン”五百円玉は澄んだ音を残して縦に転がり側溝の際で横倒しになった。
五百円玉の音は桂馬の耳にこびり付き何時までも鳴り続けた。
桂馬は小銭の音と共に奈落の底に落ちていった。

桂馬の身に降りかかったこの“事件”は一体“何”なのか、それはあまりにも深刻だった。女性を警戒し続けた桂馬には尚更だった。
「奈落から抜け出さなければ。気分転換しなければ」
「どこかに行こう」
桂馬は山手線を一回りした。行き先は思い付かなかった。
いつの間にか足は桜子との思い出の地に向かっていた。「やはりナ」桂馬は苦笑した。

桂馬は江ノ島の水族館にいた。
桜子に行こうと云いながら浜辺で時間を費やして行けなかった水族館だった。
小さな魚が右に左に急回転しながら自由闊達に泳いでいた。
「何も考える事、ないの?羨ましいナ」
「桜子が、私は一匹の動物のように、心が命ずるまま生きていく、と云ったけど、お前達は人間と違って、何をしても誰も喜ばないし、悲しまないよネ、いいネ」桂馬は小腰をかがめ水槽に鼻を近づけ呟いた。
桂馬の心はますます萎縮して晴れることはなかった。

「ただいま」桂馬は力なく玄関を開けた。
「お帰り」奥から大きな声がしてエプロン姿の叔母が急ぎ足で現れた。
右手に菜箸を握っていた。
「どうかしたの桂ちゃん。様子が変ね」
叔母もこのところの桂馬の変調に気が付いていたのだろう。
「それより、お母さんから電話があって、明日一番の電車で帰りなさいだって」
「え?」
「よしよし、叔母さんがお母さんに電話してあげる、おいで。お母さんから詳しく聞いて」
叔母は菜箸に気が付いたのか、桂馬を振り返りニヤリと笑い菜箸をテーブルに置き、エプロンで手を拭きながら電話に向かった。桂馬も後に続いた。
「フミちゃんが危篤なの、明日、一番の電車で帰って来て」母の声は沈んでいた。
桂馬は力なく二階の階段を登った。
「桂馬、相談があるんだ」従兄弟の左千夫が上から顔だけ覗かせて呼んだ。
「お袋に聞いたけど、明日塩竃に帰るんだって?」桂馬はフミ、危篤の衝撃に左千夫の前にへたり込んだ。左千夫の“相談”に思いを巡らす余裕はなかった。
「昨日、久徳と会って話を聞いたンだ。奴の彼女の事だよ。
お前も彼女、知ってるんだって?久徳が云ってたけど」
フミ危篤との二重衝撃に打ちのめされ、しばらく言葉が出なかった。
桂馬はうつむいたまま「まあ、少しは」とだけ答えた。
堅物の左千夫が何を話し出すのか予想する気力もなかった。
「二週間ほど前、二人で寝ているところを彼女の母親に踏み込まれたそうだ。
アパートの家主のおばさんが知らせたらしい。
そのまま有無もなく寒河江に連れて帰ったそうだ」左千夫の口調は淡々だった。
「そうですか」桂馬も淡々と答えた。
どんなに男女の事に無知でも、洗足の駅前で久徳にマフラーを渡していた桜子の姿を見たのだ。おおよその見当はつく。
その時桂馬は奈落に落ちたのだ、もう何物も受け入れる器が桂馬の中にはなかった。
「彼奴は俺と違って一途なんだよ。
前にも二、三回女のことで悶着があったが、今度は様子が違うんだ」
「どう違うンですか」
桂馬は実の兄のように思っている左千夫に反発を感じた。
「思い詰めているんだよ。あの意地っ張りの久徳が。この俺に相談に来るんだから」
左千夫は桂馬の反応を確かめるかのよう桂馬を見つめて、
「とにかく尋常ではないンだ。自殺でもしかねない様子なンだよ」
「そこでだ、お前に頼みがあるんだ。彼奴の彼女に会って来てくれないか」
「仙台から仙山線だと寒河江はそう遠くないと思う。
俺が頼まれたのだから俺が会って話を付けなきゃいけないンだけど。会社の仕事がどうにもならないンだ、頼む」
左千夫は大袈裟に手を合わせて頭を下げた。
桂馬は左千夫の頭を見下ろし、堅物の朴念仁に、女性問題の解決など出来る訳がない。会社の仕事は言い訳だ。
桂馬の心はおののき際限なく固まり続けた。
「はい、それでは何ンとかするように考えます」桂馬はこう返事するのが精一杯だった。
「いま僕は奈落の底にいるのだ、そして過去を清算すべく藻掻いているのだ。
桜子も同じように藻掻いているはずだ。
この上桜子に何を伝え、何を頼むのだ、会える訳がない!」桂馬は心の中でさけんだ。
「久徳の奴、どうなっているのかな、彼奴の心だか、頭だかの構造は。
俺には想像も出来ないよ。
たかが男と女のことに全身全霊を消費するのだから」
「全ての事に、均等にエネルギーを使え、と云ってやりたいよ」
桂馬は左千夫の言葉に、久徳に同情さえ覚えた。
「兄さんも彼女、いるでしょう。だったら久徳さんの気持ちも少しは解るでしょう」
桂馬の口をついてでた言葉が自分のものとは信じられなかった。
「融子のことか?」
「そうです。融子さんのこと、少しでも好きだったら、恋愛感情が分からない事はないでしょう」
「恋愛感情がないわけではない。だがそれが過激すぎると周囲に障る。
俺は融子を将来の伴侶だと思っている。
マ、賢いし、健康だし、器量も十人並み以上だし」左千夫はニヤリと笑い、
「いや、今のは冗談だ。すまない」左千夫は真顔になって
「オレは融子と結婚して子供を作って家を継ぐ。オレの子供もそうすることを願っている。それが人間本来の姿だと思う。
これはと思う女がいてもその女に不都合があったら他を探せばいい。
痴情沙汰なんて動物本能丸出しだよ。人間らしくない」
「しかしマア世の中にはよくある話だから仕方ないか」
桂馬は居たたまれなかった。

桂馬は一番の電車で仙台に向かった。仙台が、これほど遠く、電車がこれほど遅かったのかと桂馬は今までの帰省が嘘のように思われた。
フミは既に息を引き取り、自宅に帰っていた。
枕元に母と姉の曜子が並んでいた。
「桂馬、よく見ておきなさい。これが最後だから。お前をいちばん可愛がってくれたフミちゃんの顔を何時までも忘れないようにね」
母はフミの顔の白い覆いを取った。
桂馬はうつむき目を外した。今まで数回死んだ人の顔を見、恐怖をおぼえた記憶が脳裏を走った。
今のフミの顔を見るのが怖かった。
桂馬の脳裏に焼き付いた、何時も明るい、優しい顔が永遠に消え去るのではないかと怖かったからだった。
桂馬は操り人形のように座をたった。

桂馬は仙山線に乗っていた。
フミのそばに居るのが苦しく耐えられなかった。
寒河江の駅前交番で桜子の住所を確認したが足が向かなかった。
駅の待合室にひき返し腰を下ろし長塚節の「土」の文庫本を開いた。
活字は黒い固まりとなった。桂馬は諦め文庫本を膝に置いた。
待合の人達は静だった。
何を考えるともなく見るともなく、ただ座りつくした。
しだいに周りの光が薄れていった。
人影が現れた。
桜子だった。
薄色のワンピース、布地の靴、白いハンドバッグを両手で前に提げ、長い髪を後ろで無造作に束ねたいつもの桜子だった。
洗足駅で見た桜子の姿は微塵もなかった。
「桂馬さん、嫌いなコーヒー召し上がる?でもほんとはお好きなのよね」桜子は微笑んだ。知り合った頃、桜子にコーヒーに誘われ警戒心からコーヒーは嫌いだと断ったのだ。
「私ね、心の命ずるままに生き尽くしたの。もう私の中には何も残っていません」
桜子の姿に暗い影はまったくなかった。
「私は多分、母が見つけてきた山形の大学病院のお医者様とお見合いして結婚するのだと思います。私は母の命に従います。私はそれで十分です。“心が命ずるまま”と“母の命”とは正反対と思うかも知れません。でも時が経てば結果はまったくおなじだと思います」
「桂馬さんのこと一時忘れましたけど、これからは何時までも心の中で慈しみます」

バサ!
文庫本が床に落ちたのだ。
桂馬は顔を上げた。
桜子の姿はなかった。
桂馬は文庫本を緩慢に拾い上げた。
「桜子の今の想いに違いない。左千夫に、今の夢を伝えよう」
桂馬はホームに向かった。いつ来るとも知れない電車を待った。
幾筋も幾筋も涙が頬を伝った。桂馬は涙を拭かなかった。
桂馬はふたたびトラウマ、母の呪縛の中に帰っていった。

       つづく   「トラウマ」は終わり。次回は「出会い」


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09.19
Sat
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2015年8月30日栃木県塩原で写す

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能「鉄輪」 怨の鬼女となって夫とその女に迫る

草や低木にまつわり付き、まるでヤブガラシのように憎い奴だと思っていた。
憎さ募ってか、花は気にしていなかった。
この夏、那須の山道を通りかかったら、白くシーツを干したような、花らしきものが見えた。慌てふためいたのか、道の真ん中に車を止め、駆け寄って見たらボタンズルだった。
こんなに盛大に咲いたボタンズルは初めって見た。
憎い奴だと思っていたせいか、その清楚な美しさに感動倍増だった。
エミグサとも呼ぶという。笑草だろうか。悪者扱いにしたのが悔やまれる。

カザグルマやテッセンなどクレマチスの仲間で、葉の形がボタンの葉に似ているから付いた名だそうだ。ヤブガラシのように、町の中にはない。少し山めいた所。
少し人嫌いの花なのかも知れない。植物の中には、人間大好きと、人嫌いがあるのだ。
若芽をお茶にする地方もあるとか。
鹿児島ではネコナブリ。猫がじゃれつくというのだろうか。想像しただけでも可愛い場面が目に浮かぶ。鹿児島の人は優しいのだろうか。

蔓性の植物は草や木に纏わり付き、這い登ってお日様の恩恵にあずかるのだ。
あながち悪者とも云えまい。
よくよく考えるに、蔓性の植物を悪者扱いにするのは人間のエゴだ。悪者呼ばわりはあまりにも可哀想だ。
能でも執心の炎も燃やし、蔓のように相手に絡みつく男や女が登城する。
人間の本性、如何ともし難い苦しみや悲しみを描く秀作が多い。「定家」「綾鼓」「通小町」「葵の上」「鉄輪」等々。

能「鉄輪」は市井の女の凄まじい嫉妬を描いた作品。
高貴な女性、六条御息所の嫉妬を描いた「葵上」と引き合いにされる作品。
夫に捨てられた女が恨みを晴らそうと貴船神社に丑の時詣でをする。
信託が下った。鉄輪の足に火を灯し、頭に乗せ、顔に丹を塗り、赤い衣を着、怒る心を持ち、鬼の姿になれと。
女は信託を聞き、決然と立ち上がる。瞬間、女の髪は逆立ち、雨が降り稲妻が走り突風が吹く。その中を女は我が家に走りかえる。
笠を投げ捨てて立ち上がり走り去る、凄まじい女の形相が、嫉妬の恐ろしさを凝縮して見せる。
夫は、このところ夢見が悪いと安倍晴明に占ってもらう。
清明は男を見るなり、占わなくても男の顔に女の恨みの相が出ている、今夜あたり取り殺されるだろうと見立てる。
男は妻を捨て、別の女もとへ通っていたのだった。
夫は清明に転じ換えの祈祷を頼む。
清明は三重の高棚を設え、五色の弊を立て、男女二体の形代を置き、肝胆を砕き祈る。
清明の祈りに惹かれる如く、鬼となった女が男への恨みを吐きつつ現れる。
清明は必死に祈る。鬼女は裏切った夫への、それでもなお残る夫への思慕を嘆く。
女心の哀れが胸を衝く。
鬼女は清明の呪術に必死に抗し、夫と女の形代に迫るが、清明の駆使する式神達に追われ、時節を待って又来ると悲痛な声を残して消える。
安倍晴明は平安中期の人。陰陽道の祖。

能「鉄輪」の詳しい解説はこちら




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09.12
Sat
炎暑の八月、“火炎燃え立つ”であろうと覚悟をきめ、沖縄に行った。
娘達夫婦とその子供達、総勢10人わいわいがやがやと。
火炎どころか東京より爽やかだった。
沖縄は南国、植生が東京辺りとはだいぶ違う。色々な野の花に出会うだろうとワクワクだった。去年、石垣島で珍しい花を色々見たからだ。
炎天下は花も敬遠するのか、咲いている所に行かなかったせいか、めぼしい野の花は見つからなかった。
木の花だけが、オラの夏だよとばかり火炎を上げていた。
人間様が植えた草や木の花は好みではないが、珍しい花、懐かしい花、沖縄らしい花々に会って感激だった。

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① 花ではないが、コンドミニアムのベランダから見る夕暮れのビーチ。どこかハワイに似ているような。

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② 名前知らず。
藪の中に咲いていた。樹高1メートル程。葉や木の姿が桐に似ていた。鮮やかなピンクが美しかった。

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③ 名前知らず。
東京の花屋に鉢植えで売っていたのを見たような気がする、見覚えのある花。花壇の縁にぐるりと植えてあり、大々の花盛りだった。花付きのいい木なのだろう。これもピンクがきれいだった。樹高50センチほど。

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④ 名前知らず。
ハイビスカスや芙蓉、木槿などアオイ科の仲間だと思う。ハイビスカスの種類かも知れない。艶やかな黄色、重なり合う花弁が妖しく美しかった。

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⑤ ハイビスカス アオイ科
ハイビスカスといえばハワイだが、日本では沖縄の花だ。
花はかじると、ほんのり甘く酸っぱい。沖縄では、花を絞ったジュースもある。ピンクがきれいで呑むのに戸惑う。
干してお茶にもする。

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⑥ シロノセンダングサ キク科
道端などあちこちでよく見かけるのはコシロノセンダングサというそうだ。
そっくりだが、これより花が数倍大きい。沖縄だけのものらしい。
両方とも黒く細長い実がズボンなどにくっつく厄介者。今回唯一の野性の草花。
沖縄本島の北はジャングル地帯、山原(やんばる)と呼ぶ。
山原でマンゴーなどの果樹園、養蜂をしている友達がいた。春はイジュと呼ぶ高木の花の蜜、イジュの花が終わると、このセンダングサの蜜を集めると云っていた。
この二つは香り味、共にとびきり上等だとも云っていた。その通りおいしかった。

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⑦ 火炎木 ?科
写真は花の付きが悪いが、那覇の街路樹は木全体が燃え立つ様だった。
残念ながら車を止められず、同乗者に遠慮して写せなかった。
インドだったと思うが、道の両側に延々と燃え立っていたのを思い出し懐かしかった。
バスでこの道を走った。まるでバスは怪獣となって火炎を吐いているようだった

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⑧ 頼朝の家来に蜘蛛の糸を投げかけ襲いかかる土蜘蛛

怪獣といえば能にも怪獣が登場する。
能はしずしずと舞う芸能だと皆思うらしい。
恋物語や母性愛など、人間味たっぷりの物語や、神様や鬼、怪獣も登場する幅広い芸能なのだ。敷居などちっとも高くない。
怪獣の能に「土蜘蛛」がある。
土蜘蛛の怪物が病床の源頼光を襲うという話。頼光は箱根、金時山の金太郎のご主人様。
火を吐く怪獣は映画やテレビで珍しくないが、元祖は能なのだ。

源頼光は明日をも知れぬ重病に苦しんでいる。
頼光の病床に、妖しげな僧が現れ、咎める頼光に、土蜘蛛の本性を表した僧は、蜘蛛の糸を投げかけ、絡め獲うとする。
すわやと頼光は、重代の太刀を抜き斬りつける。
怪物は蜘蛛の糸を投げつけなげつけ血を流しながら逃げて行く。
蜘蛛に血は無い、などと云ったらいけません。フィクションに理屈は無粋。
頼光の家来が血の跡を辿り退治に向かう。
洞窟に潜んでいた土蜘蛛の怪物は蜘蛛の糸を雨,霰の如く投げつけ、家来を縛り、火を火炎放射器の如く吹きつける。
頼光の家来は猛者中の猛者。蜘蛛の糸を切り払い、火炎をくぐり抜け、遂に土蜘蛛の怪物を退治し凱旋する。

蜘蛛の巣は和紙をつなぎ合わせて作る。長さ25メートルもある。
金剛流では蜘蛛の巣をふんだんに撒く。舞台いっぱい巣だらけとなる。客席にまで飛ぶ。
演者は巣を頭からかぶり足に引きずって奮闘する。
 
土蜘蛛は大和朝廷に反抗する人達だと云うが、気にせずこの大活劇を楽しみたい。楽しむために作られた能だと思うから。
今も葛城山の麓、一言主神社に土蜘蛛の巣穴がある。

能「土蜘蛛」の詳しい解説はこちら

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09.06
Sun
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2015年8月14日調布市都立野川公園で写す

一頃、この花に会っても早咲きのヒガンバナかな?と思っていた。ヒガンバナのように大群落ではなくポツリ、ポツリと咲いているし、一本の花茎に咲く花数も少ないから。
素人目には概ね似ているが、よくよく見ると大分ちがう。
まず黄赤色の艶やか色合いが絶品だ。行儀悪く反り返ったりなどしないのもいい。
名前の由来は葉がカミソリに似ているからという。どうしてキツネなのかは聞いたことがない。ヒガンバナの葉もそっくりで、カミソリバナとも呼ぶそうだ。

花期に入ってこの花がテレビなどで話題になる。それでは見に行こうと。
裏高尾だったらお目に掛かれるだろうと七月中旬行ってみたが咲いていなかった。
バラ線が張ってあり案内板にはキツネノカミソリ保護区と書いてあった。
絶滅したのか、花期には未だ早かったのか影も形も南無阿弥陀仏。残念無念!
ビールでも飲んで我が身を慰めようと、ハイカーの溜まり場、昼間もやってるJR高尾駅前の浅川食堂に行ったが休みだった。
腹の虫にゴネられた。
公園などの植栽には興味がない。植栽と自然のものとの違いは歴然だし、人の手になるものには顔が行かない。
記憶を頼りに探し廻ったが全くの見当違いで見つからなかった。
諦めかけていたが、思いも寄らない所で偶然出会った。所は調布市、都立野川公園。
それも国際キリスト教大学との境界の金網の向こう側。苦労して写した。

キツネノカミソリとヒガンバナは極近縁。根の球根もそっくり同じ。球根には毒がある。
昔、これらの球根を食べた。もちろん晒して毒を抜いて。
衣食が溢れかえる今の世では考え難い。
人間ほど恐ろしい動物はいない。毒まで食べるのだ。数々の悪行も働く。
お釈迦様やキリスト様などがおいでにならなかったら人類は滅んでいたかも知れないと、無信心ながらもそう思ったり。

植物の名に動物の名を冠することが多い。犬、馬、雀、等々。
たいてい悪いもの、役に立たないものの意味にする。
例えばイヌタデ(犬蓼)。ホンタデ(本蓼)に対する名。
ホンタデノのように辛くないので役に立たない雑草だというのだ。思えば人間、残酷だナと思ったりする。
能に登場する動物も悪者扱いだ。
その中で唯一、立派な動物が登場する。それも主人公で。能「小鍛冶」の狐だ。
狐と云っても稲荷大明神のご神体だが。

能「小鍛冶」は爽やかな能。日本の古代、日本武尊の東征の説話を再現、遥かな時空に誘いロマンをかきたてる。
後場では稲荷明神が狐のご神体となって現れ、きびきびと爽やかに舞う。

日本文学の最高峰という「源氏物語」が生まれた平安中期、霊夢を蒙った一条天皇は小鍛冶宗近に剣を打つべく勅命を下す。
宗近は自分と同等の腕の相槌なくては、と困惑する。
何所からともなく少年が現れ、草薙の剣の故事を語って宗近を励まし、剣を打つべく壇を設え待てと言い残し消える。(草薙ノ剣は三種の神器の一つ)
少年は宗近の氏神、稲荷の明神のご神体だった。
 宗近は鍛冶壇を設け、祭壇をしつらえ祝詞を奏して肝胆を尽くし祈る。
やがて稲荷明神が本体を現し、宗近に相槌し勅命の剣を打ち上げ勅使に授け、東山、稲荷の森へ帰って行く。
   能「小鍛冶」の詳しい解説は、小鍛冶をクリックして下さい。




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