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11.17
Sat
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乙女高原から望む南アルプス連山 2018年10月19日写す。以下同じ

南アルプスは山梨県から静岡県まで連なる連山。南アルプスの最高峰、
富士山に次ぐ標高の北岳が見える絶景の場所だが雲に覆われ見えなかった。
ガッカリで枯れススキを掻き分け咲き残りの花を探した。

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リンドウ(竜胆)リンドウ科

♪白樺揺れる高原に、リンドウ咲いて恋を知る♪幼い頃、姉が唄っていた。
幼心に恋など解る訳ないのに未だに忘れないのは何だろう。
リンドウの花の色、形に秘密があるのかも知れない。

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マツムシソウ(松虫草) スイカズラ科

名の由来は難かしくて聞いてもピンと来ない。
松虫の音のように優雅で美しい花と思う事にしている。
かなりの群落があったようで枯れ残りが無惨だった。
ただ一もと、割と形の整った咲き残りが胸をギュツと。

千利休が朝顔の盛りに秀吉をお茶に招待した。秀吉は乱れ咲く
朝顔を楽しみに利休庵を訪ねたが利休は朝顔を全部摘み取り、
秀吉を茶室に招じ入れた。茶室に一輪だけ活けてあったと聞いたことがある。
やはり後世に名を残す人は違うナと。鈍感な身でも一輪の朝顔の美しさが浮かぶ。
咲き残りを見て利休になった気分だった。
実のところは無理にそう思った。

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アキノキリンソウ(秋の麒麟草)キク科

黄金色に豪華に咲く花なのに盛りが過ぎれば斯くの如し、哀れ。
人の一生もかくやとばかり。あまり思いたくないが。
麒麟は中国の想像上の動物。全身から五色の光を放つ霊獣。
麒麟草は間違いで黄輪草だという学者がいる。
だが学者でない者には麒麟草が断然いい、空想が膨らむから。
黄輪草では花の形を云うだけでつまらない。
学者は既成の説にイチャモンをつけたがるようだ。
諸説あるとよく聞くがイチャモンのせいだろう。

兄弟分に悪名高いアメリカ渡来の“セイタカアワダチソウ(背高泡立ち草)”がある。
隙あらばと土手や空き地を占領して我が物顔に蔓延る嫌われ者。
よくよく見ればきれいな花だが度を超すと嫌われる。
人間も同じだなとつくづく。

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野菊 キク科

野山に咲く色々な野生の菊を総称して野菊と云うそうだ。
色や姿形がそれぞれ少し違う。それぞれの名前を覚えるのは面倒。
全て“野菊”と呼ぶ事にしている。
人間だって顔形は違うが同じ人間。

菊ほど日本人に親しまれた花は少ない。
日本の国花でもある。酒を”菊の水”とも云う。
平家の武将、平盛久は処刑を免れ頼朝の祝いの杯を受け
「種は千代ぞと菊の水」と祝言の謡をうたい喜びの舞を舞った。

“死”に赴く人間の心境を綴った能「盛久」は舞の要素は少しだが
人の生死を考えさせられる名曲。

鎌倉に護送される盛久は輿を清水観音の方角に向けさせ手を合わせる。
盛久は日頃から観音を深く信仰していた。
観音様が極楽浄土に導くことを信じ手を合わせる静かな姿に、
死の恐怖が和らいでいく風情がただよう。
何ものも持たない無信心な己を思い合せ死の恐怖は如何ばかりかと戦慄が走る。

輿は京を離れ鎌倉に向かう。鎌倉には“死”が待っている。
輿は東海道の名所を通過する。地謡が名所の数々を謡う。
ただ名所の美景を謡うというだけではない。死を覚悟しこの世の名残に見て
気持ちの整理をしているであろう盛久の心中が謡われているようで感動の波がドット押し寄せる。

鎌倉に着いた盛久はこの世の名残にと観音経を読み、少しまどろむ内に夢を見る。
夢に白髪の老人が現れ「汝年月、多年の誠抽んでて発心人に越えたり。
 心安く思うべし我汝が命に代るべし」老人は清水観音だったのだろうか。

盛久は由比ガ浜の刑場に引き出され座に直り経巻を開き、刑の執行を待つ。
処刑人が太刀を振り上げる、経巻、光を発し処刑人の目を射、太刀を取り落とす。
太刀は段々に折れる。

即刻、顛末が頼朝に報告される。
盛久が刑執行の前夜見た夢と同じ夢を頼朝も見た。
盛久は許され、頼朝は酒宴を催す。
盛久は鎌倉までも聞こえた舞の名手だった。
頼朝の所望に盛久は舞を舞う。
「種は千代ぞと菊の水」と祝言の謡をうたい喜びの舞を舞う盛久の舞姿に
万感迫らない訳がない。

盛久
斬首を免れ喜びの舞を舞う盛久。
シテ 二十五世金剛流宗家 金剛巌

能「盛久」の詳しい解説はここちら



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11.11
Sun


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勝沼の町遠望
2018年10月18日写す。以下同じ

乙女高原は中央高速、勝沼から1時間程。
山の中腹の桃やブドウ畑の中の絶景を走る。
眼下に甲府盆地、遠くに南アルプスが浮かび上がり夢を誘う。
桃の花の時期はまさに桃源郷。

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カワラナデシコ(河原撫子)ナデシコ科

「閻王の口や牡丹を吐かんとす」与謝蕪村の句を咄嗟に思い出した。
どこで誰に教わったか思い出せないが何を表現しているのか、もう一つで
気になっていた。このナデシコのすさまじい形相に出会い自己流に納得した。
晩秋に近い乙女高原の秋の花は、咲き残りと言うより朽ち残りだった。
ナデシコは淡い紅色だがどうしたことか真っ赤だった。
朽ち行く命の無念を訴えているように見えた。

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ヤマハハコ(山母子) キク科

すでに実になっていた。もともと地味な花で、花だか実だか見分けがつかない。
だが風情がある花だと思う。大げさに云って庭に例えると枯山水。やはり大げさ。
芭蕉やその周辺の俳人が好きそうな花だがヤマハハコの句はあるのだろうか、
聞いたことはないが。

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リュウノウギク(竜脳菊)キク科

唯一、花盛りだった。
日当たりのよい山地に咲く花だという。
崖から茎を精一杯伸ばして、ぶら下がって咲いていた。
何とも云い得ない風情だった。
“崖の坊”生け花宗匠の力作と思わず叫んでしまった。

竜脳とは聞き慣れない言葉。南の国の木から抽出する香料だそうだ。
樟脳に似た香りだという。葉を揉むと微かに香る。
一頃は必需品だった竜脳や樟脳などの香料や防虫剤は縁遠いものになった。
化学合成の製品にとって代わられた。
化学合成品は色々問題も引き起こすようだが時代の趨勢では仕方がないのだろうか。

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ヤマラッキョウ(山辣韭) ネギ科

他の花と同じように朽ち残りの様相だった。
盛りの色は紅色がかったが紫色の花だが、紫がひときわ濃く臨終の色か、哀れを思わせた。
ヤマラッキョウは畑のラッキョウと花も形もよく似ている。
味もいいそうだが可哀そうで食べる勇気がでない。

紫は高貴な色。
日本人の永遠のヒーロー、源義経は八島の戦いに“紫裾濃の著背長”を着て戦った。
紫裾濃は上の方から下に、しだいに濃く紫色に染める技法、著背長は大将が着る鎧
だそうだ。

能「八島」は源義経の武勇を語る能。
前場で八島の浦を訪ねた僧の前に老人姿の義経の亡霊が現れ、
「面白や月海上に浮かんでは波濤夜火に似たり」
「一葉万里の船の道、ただ一帆の風に任す」と述懐する。
勇名を馳せた八島の合戦に思いを回し浦の景色をジッと眺め入る姿がグッと胸に迫る。
八島の能はこの場面だけいいといった友人がいた。
 
老人義経は僧に昔を回顧して
「大将軍の御装束には赤地の錦の直垂に、紫裾濃の御著背長鐙踏ん張り鞍笠に突っ立ち上がり、一院の御使、源氏の大将、検非違使五位の将源義経と名乗し御骨柄」と老いの身に渾身の力を込めて往年の雄姿を語り、息も吐かせず“錣引き”の勇壮を語る。

平家の猛将、景清が源氏方、三保の谷の四朗の兜の錣を掴んで引いた。
景清が引く、三保の谷は逃れよう前に引く。首を保護する鉄か又は皮で作った錣が切れた。
景清は三保の谷の首の力を、三保の谷は景清の腕の力を褒め、互いに笑いながら別れた。
戦争には避けられない理由があるのは昔も今も変わらないだろうが、今の戦争の
ようにただ殺せばいいではなく、昔の戦には武勇を競い合うその中に美があった。

三光尉
三光尉(さんこうじょう)「八島」前シテの使用面。
素朴な老人の顔立ちの中に逞しさをも写していると云われる。

僧の夢の枕に、義経は昔のままの雄姿を現す。
「落花枝に帰らず、破鏡再び照らさず」とは云うが妄執に引かれ再び現れたと
“弓流し”の武勇を語る。

馬上に全軍を指揮する義経、誤って弓を取り落とす。折しもの引き潮に弓は敵船近く
まで流れて行く。義経は馬を泳がせ弓を追う。船の敵兵共は熊手を義経に掛ける。
義経は熊手を切り払い切り払い、弓を拾い上げ元の渚の雄姿に戻る。
ハラハラドキドキで見守っていた側近の兼房、涙を流して諫言する。
「たとい千金を延べたる御弓なりとも御命には代へ給うべきか」
義経「この弓を敵に取られ義経は小兵なりと言われんは無念の次第なるべし
   、、、(弓を)敵に渡さじとて波に引かるる弓取りの名は末代にあらずや、、、
   惜しむは名のため惜しまぬは一命なれば身を捨ててこそ後記に佳名をとどむべき」

平太
戦いに明け暮れ逞しく日焼けした関東武士の相貌。平太は鎌倉時代の武将の名

源平の時代だったら名将であろう今の傑物が“権力争い、お金儲け”に狂奔、
破鏡への道を走るのを見て、あの世の義経は苦笑しているかもしれない、
と現代の足軽(かく云うオレのこと)はヤッカム。

「八島」は盛り沢山の大作。作者は世阿弥だという。世阿弥作の能は「井筒」に
代表されるように、的を絞った分かりい名文の名作が多い。
盛沢山の「八島」や「山姥」は世阿弥の異色作のように思える。

能「八島」の詳しい解説はこちら

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11.03
Sat
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多摩川上水 2018年11月1日写す。

多摩川上水は江戸前期、江戸の人達の飲み水を運ぶために作られた川。
多摩川の上流、羽村村から江戸まで43キロ、高低差100メートル
程を流れ下る。ろくな測量器もない時代の工事技術に今の技術者
も驚くという。想像を絶する難工事だったという。
数十年前から役目を終え静かに流れている。
一時取水口を閉め空堀状態だったが川沿いの住民の熱い要望に再び流れが
蘇った。水量は少ないが大きな鯉が元気に泳ぎまわり大きな口をパクパク
餌をねだっている。

街の中を流れる河だが野生の草花が信じられないほど咲く。
両岸は遊歩道、季節には花を愛でながらのハイカーで賑う。
近年、雑木が急成長して川を覆っている。岸が崩れないだろうかとか
桜や野の花が危ないとか、いらぬ心配だろうか。
小金井市あたりの上水の土手は江戸時代からの桜の名所。
あちこちに案内の看板があるが桜は手入れもなく枯れそう。
桜の名所は“桜の名所”と云う所名に変わりそうだ。

平成22年から31年まで10年で整備工事を行うという計画の看板が
掲げてある。2,3年前200メールほど整備工事が始まったかに見えたが
中断したまま。残り1年でどうしてくれるのだろう。
生い茂る雑木の大木を見上げ花々の行く末を思い吐息。
豊洲市場、オリンピックに敏腕を振るう偉い方が都庁においでになるそうだ。
多摩川上水のために、大きな腕は畏れ多いのでせめて小指の先でもぴくりで
結構ですので動かして頂きたいものです。

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ツリガネニンジン(釣鐘人参)キキョウ科 2018年10月8日写す。以下同じ

若芽はよく知られた山菜、トトキ。
「山で美味いはオケラにトトキ。里でうまいはウリ、ナスビ、
嫁に喰わすも惜しゅうござる」よく知られたざれ歌。
釣鐘人参の人参は根が朝鮮人参に似ているから。
漢方薬の材料だが朝鮮人参には遠く及ばないらしい。
釣鐘は普通お寺の梵鐘を云う。釣鐘は大げさだが
ガラスの風鈴を思わせかわいい。
「風鈴の音にちりけり雲の峰」正岡子規の句だそうだ。
雲の峰は入道雲のことだそうだ。
「雲の峯、幾つ崩れて月の山」芭蕉の奥の細道の句。
月の山は出羽三山の一つ月山、2000メートル弱の急峻な山。
持病持ちの芭蕉が登った時の句だと云うからビックリ。

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ヤマハギ(山萩) マメ科

萩は万葉の昔から歌に詠まれたという。文人墨客に最も親しまれた花かも知れない。
「一つ家に遊女も寝たり萩と月」奥の細道の芭蕉の句だそうだ。
色々、想像を掻き立たせる句。能の表現形式に似ていると独り合点。
芭蕉は平安後期の歌人、西行の奥州行脚の跡を辿り旅したという。
西行の行脚の目的地、平泉までは行かず途中最上川を下り酒田を経て帰途についた。

西行はもと北面の武士、名は佐藤則清。22歳で出家、思い止めようと縋りつく
娘と妻を縁側から庭に蹴っ転ろがして寺へ向かったと聞いたことがある。
面白い話だが西行の伝説や歌風から思うと、西行の出家の意志の固さを語る
作り話ではないだろうか。

西行は高野山を拠点に仏道と和歌の道を求めて弘法大師ゆかりの地、四国や九州を
巡り歩いたという。漂白の詩人。
奥州には二回も旅した。二回目の旅は東大寺に頼まれて岩手の平泉に藤原氏を
訪ね金を貰う旅たったそうだ。当時平泉は金の産地だった。
金箔に覆われた中尊寺金堂が往時を偲ばせる。
当時はもちろん国道四号線や東北新幹線がある訳ではない。
トコトコ歩くか馬に乗るかの旅で多分、所によっては獣道のような道もあっただろう。
四年後に亡くなった。無理が祟ったのかも。は苦難の旅を思って。

能「西行桜」では晩年、西行は洛西に庵を結び隠棲したことになっている。
「西行桜」は閑寂の世界を描くをこととした能。

西行の庵の桜は見事で名所になっていた。洛中から花見が押し寄せる。
迷惑な西行「憂世を厭う山住なるを、貴賤群集の厭わしいき」
と云い歌を詠む。
「花見にと、群れつつ人の来るのみぞ、あたら桜の科にぞありける」
厳めしい姿の老人が現れ西行の歌を咎める。老人は桜の精だった。
「憂世と見るも山とみるも、唯その人の心にあり、非情無心の草木の
花に浮世の科あらじ」と文句を云う。流石の西行も降参の態。

桜の精の老人は洛中の名所の桜の魅力を、謡い舞って見せ、
閑雅に「序ノ舞」を舞い春の夜の曙に消える。

能「西行桜(さいぎょうざくら)」の詳しい解説はこちら

《能を見に行きませんか?》

平成30年11月17日(日) 於国立能楽堂

能 玉葛 (たまかづら) 詳しい解説ははこちら
源氏物語「玉葛の巻」から美女、玉葛の苦難が死後も
妄執となり苦しむ様を見せる。

能 船弁慶(ふなべんけい) 詳しい解説はこちら
  前場に義経の愛妾、静が義経との離別に美しく舞を舞う。
  後場で平家の猛将、平知盛の亡霊が現れ義経主従に襲いかかる活劇をみせる。

船弁慶 (2)


純星会(能を楽しむ趣味人の会)
《会員の皆さんによる 謡、仕舞、舞囃子の会があります。是非見に来てください。》
平成30年11月18日(日) 10:00~16:00くらいまで
於 新宿区矢来 矢来能楽堂(どなたでもご見学いただけます。入場無料)

なつ
舞囃子を楽しむ少年

京都で
会員の記念写真

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