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03.23
Sat

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多摩川 2019年3月9日写す。以下同じ

多摩川は秩父の山奥から東京湾まで流れ下る東京一の大河。玉川とも云うらしい。
玉のように美しい川と昔の人も云ったのだろう。
清流の魚、アユなどが住んでいる。猛魚ブラックバスや巨大な鯉、恋も釣れ。
堤防や広い河川敷も整備され野球、サッカー、遊歩道、サイクリングロードも
整備されていて男女老若の歓声の絶え間がない。
河口には羽田空港がある。

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クサフジ(草藤) マメ科 
クサフジは初夏に咲く花。我が目を疑った。是政橋の下に咲いていた。
日溜りの暖さに騙されて慌てて咲いたのだろうか。一週間程前の寒気は
どう過ごしたのだろうか。兎に角ビックリだった。
花のごく少ないこの時期の、しかも季節外れの花の鮮やかな紫青の色が
“この世の物ともおもわれず”

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カラシナ(芥子菜)アブラナ科
厚い葉っぱを幾重にも蕾を包み寒さを凌ぎ春の日差しを待っていた。
もうすぐ黄色い小さな花を山盛りに咲かせる。
アメリカから来た野菜だそうだ。アメリカでは野生らしいが日本では畑に
植えている。辛子の香りと風味が売り物の野菜。
土手や河原の芥子菜は畑から逃げ出したものらしい。
お浸しや浅漬けで食べた。畑のものより香りと風味があり旨かった。

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ノゲシ(野芥子)キク科

わずかなコンクリートの隙間に根を張り咲いていた。
目を見張る生命力。珍しい花ではないが思わずシャッターを押した。
あやかりたいものだと。
若葉はおいしいらしい。摘むと白いネバネバの液体が出る。
気持ち悪く食べる勇気が出ないので食べたことはない。

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イヌガラシ(犬芥子)アブラナ科

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ナズナ(薺)通称ぺんぺん草 アブラナ科

イヌガラシもナズナも道端にも生えていて踏ん付けられても平気で生きている。
どう見ても美味そうには見えないがナズナは春の七草。
イヌガラシとナズナはよく似ている。見分けがつかない。
実で簡単に見分けられる。イヌガラシの実は丸く細長い。
ナズナは三角、三味線のバチに似ているのでペンペン草だそうだ。
昭和の中頃までは三味線は最も親しまれた弦楽器だったが今は西洋の楽器の時代。
沖縄では今でも最も親しまれている楽器。ニシキヘビの皮を張っていて呼び名も
“三線(さんしん)”。

その昔の弦楽器は琵琶と琴。琵琶は男の楽器、琴は女性のものだったようだ。
琴の名手は高倉天皇が愛した人、小督。能にも作られた「小督」
その一節“峯の嵐か松風か、訊ぬる人の琴の音か”が黒田節でも唄われよく知られている。

高倉天皇妃は平清盛の娘、後の建礼門院徳子。清盛の迫害に身の危険を感じた小督は
嵯峨野の奥に忍んで暮らす。恋心をつのらせた天皇、源仲国に命じて嵯峨野の奥に
隠れ住むと噂される小督を探させる。帝に賜った名馬に鞭を上げ颯爽と嵯峨野へ
駆ける仲国。嵯峨野は今では観光スポット。身動きできない人混みだが当時は
都外れの超片田舎。探しあぐねた仲国。折しも十五夜、美しい琴の音が聞こえて来る
“峯の嵐か松風か”まぎれもない琴の名手小督の爪音だった。

仲国の喜びが美文で謡われ、颯爽と舞う仲国。「駒ノ段」といわれる。
高倉天皇は源平の戦いで三種の神器と共に檀浦の沖に沈んだ幼帝、安徳天皇の父。
色白の美男子でそのうえ頭がよかったが平清盛には頭があがらなかった。

琵琶の名手は平経正。十六才で須磨の浦の戦いで散った平敦盛の兄。
少年と青年の間の年齢だったようだ。能「経正」では少年の面「十六」又は
青年貴公子の面「中将」いずれでもよいとする。
経正は仁和寺御室の御所の仕えていた折、御所の宮に唐伝来の琵琶の名器「青山」
を賜ったほどの名手だった。

能「経正」は武将ではあっても優雅な貴公子、経正を描く。
仁和寺の宮の命で西海に散った経正の供養の管弦講が行われ、経正が愛玩した
「青山」が手向けられる。
琵琶の音に引かれておぼろおぼろと現れる気品ある若武者姿が絵のように美しい。
経正の霊は自らも手向けの琵琶を弾じ、舞い在りし日の夜遊を見せ舞い遊ぶ。
“第一第二の弦は索々として秋の風、松を拂って疎音落つ。第三第四の弦は
冷々として夜の鶴の子を思って籠の中に鳴く”
経正の琵琶の音は楽器の音色という域を超え遥か彼方の空想の世界に誘う。

経正

在りし日の夜遊を見せる経正の亡霊

能「経正」の詳しい解説はこちら

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03.16
Sat


花の春は間近い。ネズミの額にも気の早い奴がチラホラ芽を出し始めた。
今年もきれいに咲いてくれるだろうか期待と心配こもごもで待つ今日この頃。
野に咲く花は大抵庭に植えて毎年きれいに咲いてくれる。
中には人間嫌いな変わり者がいる。いい例がユリやカタクリ。
1, 2年は咲くが3年目頃には消えてしまう。
人間嫌いな野の花には気に入っている花が多いが植えないことにしている。

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ノイバラ(野薔薇)バラ科 多摩川産 2018年5月30日写す

純白の清楚な花。辺りに盛大に這い廻り縄張りを主張しているかのよう。
きれいな花に似合わない恐いトゲで人や動物を脅す。
多摩川の釣り人が忌み嫌う。釣り場に向かう彼らを牙ならぬトゲを剥いて脅すから。

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オカトラノオ(岡虎の尾)サクラソウ科2018年6月13日写す

田んぼや畑の周りに咲いている。珍しくもないが庭に植えてみると
意外にきれい。桜型の小さな白い花が可愛い。
花穂が長いからと云って“虎の尾”はひどい。可哀そう。
もう少し可愛い名を付けて欲しかったとつくづく思う。

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ソバナ(岨菜)キッキョウ科 山梨産 2018年6月26日写す

風鈴のような花が可愛い。美味しい山菜でもある。
岨人(山仕事の人)の野菜という意味だという。
葉がソバの葉に似ているから蕎麦菜の説もあるらしいが断然岨菜がいい。
木こりのオジサンが家で待つ愛妻にソバナを手土産に山をトコトコと下りる。
そんな情景も目に浮かぶ軟らかくやさしい色の若菜。
今の山仕事の人はヘルメットに皮手袋、安全靴、厚手の作業着、軽トラで山を下りる。
ソバナを摘む暇など無い。

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ユウスゲ(夕菅)ワスレグサ科 新潟産 2018年7月5日写す

蝶や蜂などの昆虫は花が大好き。ユウスゲも彼らを大歓迎の筈だが彼らが
ねぐらに帰る頃、咲き始める不思議な花。常識を超えたへそ曲がり。
宵闇になる頃、薄暗い中にボーット浮かび上がる。まるで暗闇の中の松明。
日蓮上人の説話を思い出させる。

日蓮聖人主従が甲斐の國を訪ねる。石和で日が暮れ辺りの人に宿を頼むが
この辺りは旅人に宿を貸すのを禁ずる掟だと断られる。
止む無く石和川の川畔のお堂に泊まる。
夜更け松明がボーット浮かび上がる。鮎の密猟に向かう爺さんの松明だった。

爺さんは鵜使いの幽霊だった。夜な夜な禁漁区に忍び込み捕らえられ
簀巻きにされ殺された。
死後も鵜使いの面白さが執心となり夜毎にこの石和川に現れる。
鵜使いは簀巻きにされて殺されたその凄惨な有様を聖人に語る。
その恐ろしい場面を老人は淡々と語る。
殺生を事とする己の定めと自覚するかのように。恐ろしさと哀れに身震いする。
聖人は鵜使いの様子を見せよという。
聖人の興味からではない。仏の戒める殺生を犯す己の罪の業を再現して見せ
罪障を懺悔するのだという。
逃げ惑う鮎を追い回す鵜、てきぱきと鵜を操り「罪も報いも後の世も忘れ
果てて面白や」と老人。「鵜ノ段」と称し曲中一番の見どころ。
鵜舟の篝火も消え松明も消え、あの世の暗闇にきえて行く老人の後ろ姿に哀れが滲む。

後場はガラリと変わる。恐ろしい閻魔大王が現れて威勢を見せ、
殺生を業とする彼の鵜使いを地獄に送るべきだが、一僧一宿の功力により
極楽に送るという。
鵜使いは以前、聖人の弟子を我が家に泊めた事があった、その功力だった。
恐ろしい閻魔大王を見て信心深い昔の人は、施しに努めなくてはと我が身を
省みたのだろうか。
昔、施しは当然の施行だった。インドでは持てる者が持たざる者に施すのは
当たり前、日本では人に物を頂いたら三拝九拝するがインドで見た乞食は
当たり前の顔で受け取っていた。元来すべての物は神の物だからだろうか。

鵜飼
「驚く魚を追い回し」殺生の罪も死後落ちる地獄も忘れ果て鮎を追う鵜飼の老人

能「鵜飼」の詳しい解説はこちら

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03.09
Sat
我が家のネズミの額に咲く花 能「敦盛」

我が家の隣はブロック塀を隔ててラーメン屋。時折、ネズミやゴキブリを
追い出す燻蒸をする。彼らは我が家に緊急避難する。
憎き奴等だから我が家の庭をネズミの額と呼んでも彼らは怒らないだろう、
安心してネズミの額と呼ぶ事にしている。

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紅梅 バラ科 2019年3月2日写す

奥行き3メーターにも満たない庭のブロック塀際に鎮座ましましている。
可成りの古木。しだれ梅ではなさそうだがなぜか古い枝が枝垂れる。
これが又となく気に入っている。

隣の先代のおばさんは事ある毎に文句を言う人だった。
梅の枝が隣に少しでもはみ出すと文句をいった。その度に枝を切った。
紅梅は幹まで赤い。紅梅の血に見えて傷ましかった。
おばさんは新興宗教の信者だった。しばらく姿が見えないナと思っていたら
入院していた。向かいの人と見舞いに行った。
“私は意地悪で皆さんに文句ばかり云って来た”と涙ぐんだ。
退院後おばさんはキリスト教に改宗した。
優しいおばさんに変身したいからだと云っていた。
暫くしておばさんは突然、天に召された。
十字架の下、花に囲まれたおばさんのにこやかな写真の顔はおっかない
以前のおばさんの顔ではなかった。

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カラマツ(唐松、又は落葉松)マツ科 富士山産 2019年2月16日写す

林道修理中に掘り起こされた残土の中にあったものを工事中のお兄さんに貰った。芽生えたばかりだった。
緑の葉色がきれいで部屋の中で眺めていた。寒くなっても黄葉しなかった。
春になって若芽が出ないのではと外に出したら、やはり彼らも待って
いたようで急に黄葉した。やはり彼らは寒い国の出身者だった。

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フクジュソウ(福寿草)キンポウゲ科 山形県産 2019年3月1日写す

かなり古いいにしえ、山形出身の友人の父親に送ってもらった。
友人に無理を云って送ってもらったような記憶がある。
福寿草はかなり根を張る。木の根や石ころの山の土とともに
掘り起こしたのだろう無惨な姿だった。根づくか心配だったが
毎年凍てつく殺風景な庭の土の中から突然顔をだし喜ばせてくれる。
辞書に福寿は幸福で長寿である事とある。
福寿草は雪解けの早春に咲く逞しい花。
黄金色の存在感のある姿が福寿を招くと云うのだろうか。正月に飾る。
たくましい姿も初夏にはうらぶれ枯れてしまう。
何やら人生に似ている花だとさる人が云っていたのを思い出す。

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スイセン(水仙)ヒガンバナ科 千葉県産 2019年2月16日写す

中空の花茎はなよなよと弱い。少しの衝撃でも倒れ伏してしまう。
助け起こしても起き上がれないがご覧の通りグニャとしたままで微笑んでいる。
弱そうに見えて実は強いのかもしれない。人間もそうかもしれない。
戦後しばらくまで九州南部の人達は男尊女卑が横行していた。
例えば洗濯物は男物と女物は別々の物干し竿に干した。
だが他人のいない家の中ではカカア天下の家が多かった。
男は外では虚勢を張るのみだった。

地中海沿岸の原産。シルクロードを遥々旅し今では全国に野生化している。
ギリシャ神話の中の美少年が水中で散った化身が水仙だそうだ。
日本の神話に美少年が登場するかどうかは知らないが、うつし世の人だった美少年なら
断然、平敦盛。源平の合戦で16歳の命を散らした。

敦盛は源氏方の猛将、熊谷次郎直実に須磨の浦の汀で首を掻き取られた。
熊谷が首を打とうと兜の錣を押し開けて見るとみずみずしい少年の首だった。
我が子を思い出し、哀れが募った熊谷は逃がそうしたが後ろに迫る味方の将の
圧力に詮方なく首を打った。能「敦盛」にはこの凄惨な場面はない。
笛の名手であった少年、敦盛を明るく描き続いて戦いの悲惨を描く。

熊谷直実は出家し蓮生と名乗り、手に懸けた敦盛の跡を弔うため須磨の浦を訪れる。
何処からともなく笛の音が聞こえ草刈り男が数人登場する。
男達は面を掛けない直面(しためん)、近親感が滲む。
男達は草刈りの辛さを「憂き身の業こそ物憂けれ」とは謡うが
若者の声は明るく若者同志の親しみに満ちている。
敦盛は宮廷人、無冠の太夫と呼ばれた。草刈り男との身分の隔たりが大きい。
都落ちして須磨の浦に籠った平家の人々の暮らしは「海人の苫屋に共寝して須磨人に
のみ磯馴松の、、、柴と言う物折しきて」だった。
敦盛もその状況下で須磨の村人達、下層の若者たちと馴れ親しんだのかも知れない。
序曲として意味深く潤いある前場となっている。そのうえ草刈り笛は敦盛の愛笛、
青葉の笛を思わせる。

蓮生の弔いに敦盛は戦いの姿で現われる。
軍装姿で舞うクセの都落ち、須磨の悲惨な生活が悲涙を誘うが少年の凛々しくも
美しい姿にも魅せられる。
終曲では直実に討たれる場面を見せ恨みを述べるが「同じ蓮の蓮生法師」と
直実を許す。16才の少年が仏の慈悲をたれる、当時の人達の驚くべき仏法へ
帰依を思わせる。

敦盛
悲惨な平家一族の末路に涙する敦盛

能「敦盛」の詳しい解説はこちら



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03.02
Sat

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多摩湖 2029年2月21日写す。以下同じ

多摩湖は昭和の初めに完成した都民の水瓶、村山貯水池とも云うらしい。
異国式の取水塔が珍しくて昭和初期へ夢を誘う。
湖岸のベンチに腰を下ろしボーット顔を上げると目は勝手に湖面を伝い
遥かに霞む奥多摩の彼方にまで。雑念はすっ飛んでしまう。

珍しい花は無理としても早咲きの野の花くらいは咲いているだろうと行ってみた。
期待は空しかった。此処はまだ厳冬、草も木もじっと寒さに耐え春を待っていた。

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菜の花 (アブラナ科)

多摩湖堤防の下は狭山公園、真冬とて訪れる人も疎ら、閑散としていた。
広い芝生の公園の隅に小さな菜の花の花壇があった。
菜の花は戸外の花が極端に少ない極寒に咲く。
軟らかく、みずみずしい花なのに凍てつく寒に負けずむしろ楽しんでいるように咲く花。
強い花なのに、ここの菜の花は委縮して咲いているようだった。
手入れ不足か、きれいだネと元気づける人がいないからだろうか。

菜の花は美味しい春の味覚。
菜の花はアブラナ科の花の総称だそうだ。
白菜、大根、カブ、キャベツ、小松菜、ブロッコリー、水菜の花なども“菜の花”
みんな食べられるが、一番おいしいのは白菜の花。二、が花を食べる通称“菜の花”
三、ブロッコリー、後は優劣なく美味しいとはいい難い。
花壇に植えられている“菜の花”はほとんど食用の菜の花。種から菜種油を取る
アブラナ(油菜)を食用に改良したものだそうだ。

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サイクリングロード
武蔵野市境にある境浄水場から多摩湖まで11Kのサイクリングロード。

昔は導水管を埋めた土手で近隣に住む人達の通路だった。
かなり前サイクリングロード、遊歩道に整備された。
桜や椿が植えられ四季折々楽しめ、サイクリング、ジョギング、散策の人達で賑わう。

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ミツマタ(三叉)ジンチョウゲ科

遊歩道の端には近所の人達が植えたのだろう色々な花が植えられている。
散歩の人達の楽しみの一つ。右や左をキョロキョロ。
三叉が咲き始めていた。立ち止まり思わず頭が下がった。
意外だったこと、きれいだったこと、それに千円、五千円、一万円の
お札の原料の一つ、頭が下がらない訳がない(笑)

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郵便局

レトロな景観は多摩湖の取水塔の風情。たぶん意識して建てたのだろう。
戦前はこの辺りは畑だったそうだ。空襲を受けなかったのかもしれない。
ヒゲを生やした局長、矢絣に紫の袴、頭に蝶のリボンの女性局員が働いて
入るのではと覗いたことがあった。
普通のオジサン二人と若い女性二人が働いていた(笑)

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クロッカス

もうすぐ春だよ!と教える花だという。
これも近所の人が植えたものらしかった。
秋咲きのクロッカスにサフランがある。別にサフランと名付けたのには
歴史的に理由があるらしい。このきれいな花から貴重な香辛料を採る。
食べ物は命の源泉だが生命維持を超えた食べ物への執着、人間の不思議な性を思う。

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ヒガンザクラ?(彼岸桜)バラ科

満開だった。桜は皆が待ち焦がれる花だが、山桜やソメイヨシノなどの
普通の桜はまだまだ。早咲きの桜は珍しい。通りかかりの人達が、スマホや
カメラを向けていた。
桜通らしいオジサンが彼岸桜だと説明していた。
彼岸桜にしては咲く時期が少し早いのではとか、花の色が赤すぎるのではなど
思ったが、早いのは皆を喜ばせるため、赤いのは皆の熱い視線が
恥ずかしいのだろうと思い彼岸桜と信じることにした。

日本を代表する花は桜。桜にそっくりの花、桃の花。
並べてみても見分けがつかない程、親戚だから当然。
残念ながら桃は桜が終わってから咲く。
桜より大型で色も濃くきれいだが誰も騒がない。桜を見飽きた所為だろうか。

山梨の勝沼に桃の花見に呼ばれたことがあった。
あちらこちらの桃の木の下で盛大な宴が賑やかだった。
この辺では花見と云えば桃の花見だと聞かされた。
中国の神話に、三千年に一度花が咲き実がなるという桃の木の話がある。
崑崙山脈に住む女神、西王母の庭にある桃ノ木。

能「西王母」では西王母の庭の桃を平和の象徴とする。
三千年前の中国王朝、百官卿相が相集まり治まる御代を賛美し天下泰平を謳歌している。
万民の門辺には喜びの旗がはためく。
侍女を伴った美女が現れ王に桃の枝を献上し、この桃の花は三千年に一度花を咲かせ
実のなる西王母の園の桃であり、今この時に至って花が咲いたのは善政を敷くこの王の
威徳の現れだという。
桃の枝を持った西王母の仮の姿に、人々の希う泰平の世が目前に浮かび上がり、
ほのぼのと心は際限もなくおおらかになる。

花の実を持って再び現れるであろうと天に上がった西王母の化身は、宝剣を腰に
華麗な冠をかむり侍女に桃の実を持たせ美しい音楽が降り下る中、本体を現わす。
地謡がその様子を謡う「天仙理王の来臨なれば、数々の孔雀、鳳凰、迦陵頻伽
飛び廻り声ごえに」美しい音楽が響き渡り数々の極楽世界の鳥が飛び交うと謡う。
美しい情景の中で舞う西王母の祝福の舞が絵のように美しい。

今も変わらないとは思うが昔からの政治理念の第一は“民の幸せ”。
能「高砂」で「風も収まる時津風、枝を鳴らさぬ御代なれや」と謡う。
“風も収まる”は平和、“枝を鳴らさぬ”は民が不平を叫ばない、
つまり民は富み、天下太平、国土安穏ということだろうか。
江戸城の謡初めに将軍の前に平伏して謡ったという。
治まる世を祝福するという意味もあろうが将軍に善政を促す意も
あったのではないだろうか。
国民そっちのけで政争に明け暮れる今の御時世では西王母は現れないだろうナ
と思うがどうだろうか。

西王母
王の治世を寿ぐ西王母

能「西王母」の詳しい解説はこちら


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