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07.15
Sat
思い立って奥利根の湯の小屋温泉に行った。ここは尾瀬が近い。
数年前クマに遭遇、胆を潰したので尾瀬は十分と納得,
谷川岳の登山口まで行ってみることにした。
土合駅周辺は数十年前の記憶とは全く違っていた。
駅前広場の建物は潰れたまま蔓草に覆われていて、
魔の岩壁の遭難碑も草に覆われていた。
土合駅は無人駅で出入り自由、地下ホームの出口を見に行った。

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土合駅 2017年6月23日 以下同じ。

谷川岳連峰登山の起点だった。
数十年前は登山客で賑わったがその後激減、一日乗降客は十人に満たなかったとう。
最近ボチボチ登山客が増えて来たらしい。
近くに地下6階の駐車場があり、ほとんどはロープウェイの客が多い様だ。


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ホームから改札口への階段。

ホームは谷川岳の地下。改札まで650段余り。
ザックを背に腕を組み色々思い描きながら登った懐かしい思い出が蘇った。



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一ノ倉沢。魔の山の異名を奉られた由縁の岩壁がそそり立つ。

雪渓はなだらかそうだったので登ってみた。
後ろから来た中年の男女三人組は厳めしい重装備だった。
危ないよ!と一人。もう一人、こちらの足元をジロリ「ここは入山禁止だよ」
「入山禁止なのにあなた方はどうして登るの?」おもわず反論してしまった。
「アイゼン無しは禁止」。
思えばGパンに踵擦り切れウォーキングシューズ、Tシャツ。
思えばこちらが無謀、彼らの背中にぺこりと頭を下げた。
向こうの壁に微かに紫色が見えた。
彼等が遠ざかるのを待って期待半ばで行って見た。
人には見られたくない不格好な姿勢で壁をよじ登った。
シラネアオイだった。こんな処に咲いているなんて夢にも、しらね~アオイ。
これで満足、死んでもいい!とは思はなかったが。


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シラネアオイ(白根葵) キンポウゲ科

嘗ては一科、一属、一種、に分類されていたという。
つまり他に似た種類のものが全くない種だということらしい。
日本固有の花だという。
山草の店の目玉だが自然ものは中々お目にかかれない。
見たのは今回で二回目。
一回目は岩手と秋田の県境、八幡平の見返り峠だったと思う。
道路脇にオニギリにした雪に一本挿して置いてあった。
見当をつけて崖を降りてみたら大群落、息を呑んだ。
漢字で白根葵。日光白根山に因んだ名だというが白根山に多いかどうかは知らない。


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ヤグルマソウ(矢車草) ユキノシタ科

葉っぱの大きさに負けない大きな花。豪快で頼もしい。
この花を見ると、深い山に入ったナと思う。
薄暗い所で会うと山の仙人に出会ったような不思議な気分になる。
葉っぱが鯉のぼりの矢車に似ているから矢車草。
花屋に売っているものや花壇に植えてある紫色の矢車草は本当の名は、
ヤグルマギクだそうだ。植物の名前はややこしい。


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エンレイソウ(延齢草) ユリ目シュロソウ科

扇風機の羽根のような大きな三枚の葉の真ん中に、ちょこんと小さな花が一つ。
花の顔形はもう一つというところだが葉と花の構図が突飛で面白く魅力的。
漢字で延齢草。字の如く齢を延べる草の意だろうが延齢草は毒草らしい。
どうして齢を延べる草なのだろうか不思議。
もっとも薬と毒は同じもの。用量によって毒にも薬にもなる。
齢を延べる薬なら試してみようかナとチラッと思ったが
命は惜しいし決心がつかなかった。


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オオカメノキ(大亀ノ木) スイカズラ科

葉っぱがいい。形と葉脈の深い切れ込みは正しく亀の甲羅だが
模様が違うのが残念。
本当の名はムシカリ。虫も好きで葉っぱをかじるのでムシカリ。
オオカメノキは別名だそうだが矢張りカメがいい。
子供の頃、ノロマで親父に亀のあだ名をもらった。
気分が向いたときに甲羅から首を出し都合が悪ければ引っ込める。
自分だけの世界を作る。誰も文句を言わない。いいあだ名だと気に入っている。
友人にこの木の名を教わった。皇族の“おしるし”並みに、
忘れられない木になった。
山深い所にひっそりと咲くのもいい。

かなり古い話で記憶も曖昧だが紀州の道成寺に祈願に行った。
大阪の天王寺から電車に乗るという。
大阪は初めてだったので早めに駅に行ったが早すぎて時間を持て余した。
かねてから気になっていた駅からほど近い四天王寺に行った。
広い敷地にポツリポツリとお堂が建っていて参詣の人も疎らだったと思う。
昔は参詣人も多かったのだろう、能「弱法師(よろぼし)」では盲目の乞食、俊徳丸が
参詣の人の混雑のなかで
「盲目の悲しさは貴賤の人に行きあいの転び漂い難波江の」
と悲惨な姿をみせる。

能「弱法師」は四天王寺が舞台。
クセの上羽(あげは)に「萬代に澄める亀井の水までも」
とあるので亀のあだ名を持つなら「亀の井戸」も見たいと思ったし、
彼岸の中日に鳥居の真ん中に入日が落ちるという
“お寺の鳥居”西門の鳥居も見たかった。


よろぼし
能「弱法師(よろぼし)」 己の数奇な境涯を嘆く弱法師

俊徳丸は人の讒言で父に家を追われ、悲しみのあまり盲目となった優しい少年。
核家族の今の世では理解しがたいが骨肉相争う時代、能には類似の作品が多い。
俊徳丸は天王寺で物乞いをして命を繋いでいる。
盲目故によろよろ歩き、人々は弱法師とあだ名した。
天王寺に現れた俊徳の述懐が悲痛だ。
最愛の家族に別れ仏の慈悲に縋る境遇を訥々とのべる。
己の過ちに気づいた父は罪滅ぼしに天王寺で施行をする。
親子はここ天王寺で再会するが変わり果てた我が子に父は気付かない。
まして俊徳は盲目。
袖を広げ施行を受ける俊徳の袖に梅の花びらが落ちる。
「げにこの花を袖に袖に受くれば、花もさながら施行ぞとよ」
今は乞食だが嘗て裕福な家に育ち風流の心を持つ俊徳丸像が滲み出る。
クリ、サシ、クセで天王寺の来歴が語られる。
俊徳丸は寺のこの来歴を語って施しを受けたのだという。
俊徳丸の語りであることは省略されている。

終曲に近い「狂い」が圧巻だ。
杖を巧みに使い盲目の姿をあまさず描き出す。
嘗て見た難波の浦を、杖を胸に抱いて突き遠望する、観客の目にも浦の美景が広がる。
長柄の橋の欄干に杖を置き、なぞって歩む。嘗て渡った橋の景色が懐かしく蘇る。
雑踏に押し倒され落とした杖をさぐりながら探す。
能の型の限界を思わせる思い切った型に息を呑む。

俊徳丸の狂いは覚め、親子の簡単な名乗り合いで能は終わる。
それぞれの場面の推移の無駄を省きテンポの速い能。

※アゲハ(上羽) クセの中ほどでシテが謡う二句程の謡。
※施行 来世のため恵まれない人に施しをする。

能「弱法師」の詳しい解説は こちら
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