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07.22
Sat
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谷川連峰(一部)2017年6月24日写す以下同じ。

前日に一ノ倉沢の雪渓を歩き、雪渓の山側の壁をよじ登るなど、
花を探しまわり、限界近く疲れた。
宿は奥利根の湯の小屋温泉。
釣りの客が多い宿らしく風呂で中年の釣客に尺イワナを釣ったという、
自慢話を長々と聞かされた。
殺生は嫌いだ、まして遊びで!などと心の中で呟きながら目を剥き、
さも感心したように。我ながら嫌な性格だナと。
それでも夕食にイワナの塩焼きを楽しみにしていたが小さなマスの甘露煮だった。
宿賃から不平は云えないが。
酒を飲み残すなど有り得ないだが、いつの間にか布団に横たわり、
翌朝六時まで目が覚めなかった。



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厳剛新道登山口

谷川岳への最短コース。
沢伝いに鬱蒼と茂る低木の登山道を延々と辿りマチガ沢の雪渓を見下ろす、
“見晴台”で展望が開ける。
ここから岩場の登山道を登る、直登に近いルート。
昔この看板の辺りに、三軒程の宿があった。
清水峠を越え疲れ切り、青息吐息の越後の旅人が宿の灯を見て、
「あゝ!町の灯が見える」と叫んだ。
マチガ沢の名の由来だと情緒たっぷりに案内板に書いてあった。
しかも国の営林局の案内板。感じ入り幾度も首を上下に振った。



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オオバキスミレ(大葉黄スミレ) スミレ科

スミレは種類が多いが紫系か白。黄色いスミレもあったのだ。
平地では黄色いスミレなどお目にかかったことがない。
山に来たのだナと思わせる。



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ユキザサ(雪笹) ユリ科

雪のように白い花、笹そっくりの葉から付いた名だという。
古い思い出は装飾花付きで懐かしい。
山小屋でユキザサの若芽の天ぷらが出た。
友人は初めてだったようで名を聞いた。
小屋の兄ちゃん、ササと答えた。
翌日はテント泊りで例の友人が味噌汁を作った。
何やら細く固い物体が味噌汁の具だった。
「何これ?」「ササだよ、昨夜食べたろう、美味かっただろ?」
正体はほんもののササの先端だった。皆呆れて、口ぽかんだった。



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サンカヨウ(山荷葉) メギ科

大きな葉の真ん中に純白の小さな花が数個。
この世の花とも思えない。荷葉とは蓮の葉のことだという。
ぴったりの名。さすが学者。名付け親は敬虔な仏教徒だったのかも知れない。
実が美味しいらしい。きれいな実に違いない。食べるのに勇気がいるだろう。



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イワカガミ(岩鏡) イワカガミ科

花弁の先端が細く切れ込んで飾りの房のよう。山のおしゃれさん。
葉っぱがテカテカ光沢があり岩場も好きらしいので岩鏡。
マチガ沢の灌木の登山道を抜け「見晴台」と呼ばれる、雪渓を見降ろす所に辿り着いた。
イワカガミが咲いていた。恐る恐る小さな木につかまり腹ばいで撮った。
五枚目で角度を変えようと思わず手を放してしまった。
ズルズル、雪渓まで落ちてしまった。



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マチガ沢雪渓 

一の沢の雪渓とは大違い、急勾配の雪渓だった。
すり減った踵のウォーキングシューズでは雪渓を下るのは無理。
雪渓の山際を岩につかまり木の根につかまり草につかまり悪戦苦闘、
沢の分岐に出た。
分岐の沢は雪がなく岩と灌木つづきだった。命拾いとホッと。
オオカメノキやサンカヨウの群落が迎えてくれた。
右の壁を登れば厳剛新道に出る筈だ。そろそろ厳剛新道に戻ろうと思ったが、
かなりの勾配、迷っていたら人の気配、見回りの救助隊らしき人だった。
「このまま下ると三時間かかる、途中に滝もある、遭難する人はほとんど
沢を下るんですよ」
「この雪渓で滑落してあの岩に激突する人が多いんです。
結果は想像できるでしょう?」   
彼が指さす雪渓の真ん中に大きな岩が数個露出していた。
テレビなどで、沢を下るのは危険とは聞き知っていたがついつい。
彼の案内で苦労無しに厳剛新道に出ることが出来た。
ホッと一息、登山道を横切る小さな流れで水を飲み腰を下ろした。
流にサンカヨウやユキザサなどの花を一握りに、風知草で結わえた花束があった。
シラネアオイもあって一段と目立っていた。誰かが忘れたのだろう。
花束を胸に得意げに下山のつもりだったのだろう。
途中で見回りの人に注意されずに済んだのだ、忘れてよかった。

能「雲林院」では桜の枝を盗んだ人を「誰そよう花折るは,、、、、落花狼藉の人、
そこ退き候へ」咎める。盗んだ人「それ、花は乞うも盗むも情け在り」と応ずる。
今の世ではそうそう洒落は通用しない。ましてや国立公園なのだ。

うんりんいん
春雨の闇の中、雨と涙にそぼちつつ二条后との恋の逃避行を見せる業平。

能「雲林院」は在原業平の物語。典雅にして優艶な曲。
前シテは老人姿の業平。桜の枝を折った芦屋の公光を咎め、
花を盗むことの是非を、古歌を引いて問答する。
風雅な争いだ。風流問答といわれる。
業平の風流問答はやはり華麗な桜でなくてはならないのだろう。
老いた姿に優雅な業平像が鮮明に浮かび上がる。
現代人の多くは優雅、風雅は憧れだが縁遠い。
この能に浸って一時の風雅の世界に遊ぶ、また幸せならずやでは。

後場で業平がその優雅な姿を現す。
サシからクセでは二条后との恋の逃避行を見せ、
源氏物語の恋物語をも借用して濃密な名文に仕上げている。
業平は優艶な女性の舞「序ノ舞」を舞う。
業平の優雅は女性に準ずるということだろうか。

類曲に「小塩(おしお)」がある。
共に業平を描いたものだが「雲林院」は優雅な業平を
「小塩」は二条后を忘れ得ぬ業平を桜に託して描いた作品に思える。

能「雲林院」の詳しい解説はこちら
「小塩(おしお)」はこちら






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