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11.04
Sat
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八島ケ原湿原 2017年9月30日写す。以下同じ

八島ケ原湿原は美ヶ原やワラビ採りの帰り休憩がてらに寄る。
駐車場の奥を下ると小さな湿原があり八島ケ原湿原だとばかり思い込んでいた。
しばらく行かなかったので自信がなくカーナビに従った。
とんでもない所に連れていかれた。道は途中で車通行禁止。仕方なく歩いた。
途中で会ったハイカーに聞いたらここは八島ケ原の対岸だという。
いつもの駐車場が表口だった。湿原はいつも行く小さな湿原の反対側だった。
人の思い込みは怖い。無性に腹が立った。
眼下に広がる広大な湿原!立った腹は湿原の彼方へすっ飛んで行った!

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ハンゴンソウ(反魂草) キク科
散りかけの花だった。花弁がバラバラについているのが面白い。
背丈は大きく真っ黄色の花が湿原をバックに咲いている姿は存在感たっぷり。

反魂草とは、おどろおどろしく、曰くありげな名。
能「花筐」では、前漢の孝武帝が亡くなった寵妃の霊を反魂香を焚いて、
呼び寄せるという曲舞「李夫人の曲舞」を舞う。
「夜更け人静まり、風すさまじく、月明なるにそれかと思う面影の、あるか、
無きかに影ろえば、なほ弥増しの想いぐさ」
ゾクッと背筋に霊気も冷気も走る。
昔、日本にも反魂草を焚いて魂を呼び寄る呪術師がいたのだろうか。

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サラシナショウマ(晒菜升麻) キンポーゲ科
キツネの尻尾のような白い長い花穂が魅力。
長いものは30センチ位はあるかも知れない。
若芽を茹で水に晒して食べることで付いた名だという。
アクがきついのだろうか、それでも親しまれる山菜なのだろう。
更科升麻だとばかり思っていた。連想するから。
純白の長い花は寂しげ。姨捨山に咲く花に似つかわしいと思うから。
姨捨山は長野県の更科にありよく知られている。
姨捨の伝説は各地にあるらしい。
深沢七郎の「楢山節考」はベストセラーになった。映画化もされた。

更科山は平安の昔から聞こえた月の名勝でもあるという。
「わが心、慰めかねつ更科や、姨捨山に照る月を見て」を種に、
能「姨捨」を作った。「楢山節考」や映画の、捨てられた老女の死の残酷、
人の抑えられない情念を一切切り捨て、月の光に比えて清らかに昇華させた至高の名作。
残念ながら最奥の曲であること、高度なテーマであることで上演は限られている。

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オヤマボクチ(雄山火口)キク科

名前もヘンテコだが姿も変梃りん。思わず笑ってしまう。
きれいとは云い難いが愛嬌があり一度見たら忘れられない。
雄山は何処かの山の名だろうが問題は火口。いくら頭をひねっても分からない。
それもその筈、今の人には全く馴染みがない物だった。
火は人の生活に欠かせない。簡単に使えるが昔は大変だった。
火打ち石で火を起こした。火打石の頼りない火花で火が付く物、
これが火口(ほぐち)だそうだ。オヤマボクチの葉で作った。
蕎麦打ちのツナギにも使うそうだが火口から想を得たのだろうか、
人間は賢いナとつくづく思う。

昔は旅立ちや戦いに赴く時、火打ち石の火花で清め安全を祈った。切り火。
今は旅も飛行機や新幹線、戦いの武器も核兵器に象徴されるが如くだ。
切り火を信用する人はまずいない。切り火の祈りも消えた。
だが一つだけしぶとく残っている。
能「翁」に。幕切りの直前に幕の間から切り火を打ち舞台を清める。

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白式尉、翁の面

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黒式尉、三番叟の面

能「翁」は天下泰平、国土安穏、五穀豊穣、を祝福、祈念する能であって、
能にして能に非ずと云われ神聖な能と云われる。
立ち役以外は第一級の礼服、素袍(すほう)を着る物々しさだ。

三人連調の小鼓につれて翁は、
「とうとうたらりたらりら、たらりあがりららりどう」と謡う。
意味、出典は分からないという。呪文の類に聞こえ身が引き締まる。
「鶴と亀との齢にて」とつづけ長寿を祈願、祝福する。
控えていた千歳が立ち「鳴るは滝の水、日は照るとも」と謡い、
颯爽と「千歳之舞」を舞う。昔は農耕社会だった。雨露の恵みを祝福する。
千歳之舞の内に翁は面を着ける。翁の面には神が宿っている。
翁の身から神格が現われる。厳粛な翁の舞「神楽(かみがく)」を舞う。
舞終わり面を外し舞台正面に出、深々と辞儀、幕に入る。翁が帰りという。
通常の能はこれでおわる。だが「翁」は続きがある。飄逸味のある舞、三番叟だ。
直面で「揉之段」、黒式尉の面を着け「鈴之段」をにぎやかに舞う。
厳粛な空気を和らげ賑やかに豊かな祝言色が横溢、楽しませてくれる。

詳しい能「」の解説はこちら、「姨捨」はこちら

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