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01.06
Sat

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高萩海岸の絶壁

茨城県の北部、福島県境の高萩は南限のきれいな花が咲くと聞いていた。
所縁の墓参りのついでに寄った。
高萩はJR常磐線、特急電車は止まらない。
そのうえ地方のバスは、車社会になった所為か本数が少ないと聞くので車で行った。
この辺りの海岸は絶壁続きの様相だった。
釣人が下りるのだろうか、断崖の切れ目の土の急斜面の踏み跡をススキや灌木の枝に
つかまりながら恐る恐る下りた。
鵜飼が盛んだった頃、この辺の絶壁で鵜飼用の鵜を捕らえたと聞いた。
鵜は絶壁が好きなのだろう。見下ろすとゾッとする断崖絶壁に住んでいる。
「なにしろ鵜には羽根があるから絶壁も恐くない、むしろ絶景だよネ、
高所恐怖症気味には羨ましいナ」
など恐怖を紛らわすマジナイ文句に呟き下りた。
斜面はハマギクの群落、小休止して眺めながら下りた。
海岸は波打ち際まで岩畳だった。

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コハマギク(小浜菊)キク科
茨城県北部の海岸が南限の菊

崖伝いに小道があった。海を見下ろしながら歩く遊歩道だろう。
景色抜群だったので歩いてみた。見晴らし台のように小さな広場?
があった。数年前に亡くなった釣り好きの兄の愛唱の唱歌、
「海は広いナおおきいいナ、月が昇るし日が沈む♪」
を海に向かって歌った。誰もいなかったので遠慮なしに。
ヒョイと頭を回らしたら藪の中にピンク色が目に入った。
誰かが捨てた空き缶か、菓子の包み紙だろうと思ったが、
生まれつきの好奇心は衰えがなかった。藪を掻き分け近づいた。
コハマギクだった。断崖絶壁の縁に咲いていた。
腹這いに匍匐前進、海兵隊の上陸作戦よろしく、下を見ないように近づいたが
高所恐怖症気味の身は小刻みに震え、上手くシャッターが押せなかった。

コハマギクは白い花だと思っていた。ピンク色は変種かなと思って
調べたら紅紫色に変わるとあった。
初めてお目に掛かった。小ぶりの浜菊と思ってあまり気にしていなかったが、
花弁の幅が大きくふっくらとした姿は形容しがたい優しさだった。
意外なめぐり合わせに、ただただ感動、感動だった。
能にも感動的、運命的なめぐり合いを描いた作がある。
「半蔀」「夕顔」「玉葛」
いずれも源氏物語、悲劇の女性、夕顔をめぐる作品。

光源氏は乳母でもある家来、惟光の母を見舞いに行く。
隣家の板塀に見慣れない大きな白い花が咲いていた。
源氏は家人の惟光に花を摘んで来るよう命じる。
家の中から童女が現れ扇を差し出しこれに花を乗せて
差し上げて下さいという。
白い花はユウガオ(夕顔)の花だった。
ユウガオはカンピョウの花、花柄に小さな毛が密生して風情を削ぐからと。
扇面に一首の歌があった。源氏も返歌する。
花は夕顔の花、歌の主は夕顔だった。
これを機縁に源氏と夕顔は契りを結ぶ。
中秋の名月、源氏は夕顔を連れて「何某の院」に行く。
夕顔の侍女右近、惟光、随身二、三人だけの供だった。
何某の院は源融の「河原の院」、荒れ果てお化けが出るとの噂だった。
夕顔は何某の院で物の怪に襲われ落命する。

夕顔には幼い娘がいた。頭中将との間の子、玉葛だった。
頭中将の正妻の迫害を避け、ユウガオの家に隠れ住んでいた。
玉葛の乳母は失踪した夕顔を必死に探すが叶わず夫の任国、筑紫に下る。
玉鬘はこの地で美しく成長する。美貌の玉鬘に言い寄る者が多く中でも
肥後の権力者、太夫の監の求婚は恐ろしく拒めなかった。
乳母はこの地で亡じた夫の遺言に従い乳母、乳母の長男太郎は玉鬘を伴い
早船を仕立て、筑紫を脱出する。
難所、響の灘の恐怖は玉鬘の脳裏から離れることはなかった。
都に辿り着き、玉葛の行く末を祈願に初瀬寺に詣でる。
たまたま源氏に仕えていた夕顔の侍女、右近も玉鬘との再会祈願に
初瀬に詣でていた。
一行は計らずも邂逅する。玉葛の心の動揺は計り知れなかった。

玉葛は源氏の娘として源氏の邸宅「六条院」迎え入れられる。
玉葛の美貌に多くの貴公子が懸想した。源氏までも言い寄った。
親らしからぬ源氏の懸想に玉葛は苦悩する。

夕顔
「来ん世も深き契り絶えすな」追懐の舞を舞う夕顔の霊

「夕顔」では何某の院の恐怖を軸に夕顔の悲惨な宿命を描く。
世阿弥の自信作と云われる名作。
「半蔀」は源氏と夕顔の恋に焦点を絞り源氏物語、雨夜の品定めに云う
夕顔の性格、子供の様に純粋な夕顔を、愛おしく情緒深く描き、
「玉鬘」は四番目、狂女物として玉鬘を描く。
筑紫の脱出行、響の灘の恐怖、初瀬の邂逅、養父源氏の懸想などが混然と
なって狂乱する玉葛を描く。

能「半蔀」の詳しい解説はこちら、「夕顔」はこちら、「玉葛」はこちら

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