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03.03
Sat

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開花待ちの河津桜並木 2018年2月16日写す

伊豆の河津川沿いのカワズザクラをこの時期の見に行くのが
年中行事のようになった。
花のごく少ない極寒の中に爛漫と咲く。
ワンカップの酒を片手に花を見上げながらぶらりぶらりと歩く。
この世の極楽とはこの事かと思ったりして。
伊豆は暖かい土地、小春日似の天気ならば超極楽。
今年は残念ながら寒さのため二週間遅れで期待外れだった。
だがガッカリはしなかった。人生色々だからと。
「世に住めば憂き(浮き)節しげき川竹の」
能「藤戸」では我が子を殺された母親がこう嘆く。
これに比べれば爪の垢にも満たない。
ちょっと大げさ、的外れの云いようかもしれないが。

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去年、満開の河津桜 2017年2月16日河津川

去年、今年と七滝の入り口の民宿に泊まった。
夕食の豪華に驚いた。なんとキンメダイの船盛が現れた。
間に髪を入れず箸が飛びついた。
いきなりノックもなしにドアが開き襖が開いて宿の亭主が現れた。
「もう箸を付けたンですか?」
「ハイ、御馳走さまです。豪華!感激です!」
「実は隣のお客さんの特注だったンです」
「箸を付けたンだったら仕方ありません。サービスします」
悄然と出て行った亭主の姿が忘れられなかった。
今年も同じ民宿に泊まったのは亭主のカン違いを期待した訳ではないとは
思うが亭主の愛嬌が気に入ったのだ。
亭主はケロリと忘れていたようだったが、女将は憶えているような素振りだった。

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ポツリと開いた河津桜 2018年2月16日写す

河津川の河口近くは海に近く暖かいのか二分咲きの木が数本あった。
河津桜は見慣れたソメイヨシノより花が大きくピンクの色も濃く、
一そう華やかだ。満開の枝を在原業平に担がせたい。

能「小塩(おしお)」で老人姿の業平が桜の枝を担いで現れる。
造花だが本物の桜の枝、取り分け河津桜を担がせたい。
桜の枝を担ぎ花見に現れた老人の業平は爛漫の春に酔いしれ
二条の后との恋の思い出の歌を口ずさむ。
その姿に興味を持った花見の客が歌の謂れを問うと
老人は歌の謂れを語り自分が業平であることを匂わせ花見の酒に酔い
「よろぼいさぞらい」去って行く。
花見の客は所の人の話を聞き老人が業平の化身だと信じ再来を待つ。

花見車に乗って華やかに現れた業平は嘗て契った女達を偲び二条の后を
偲んで舞い「桜にむすべる夢か現か世人定めよ」と曙の花に消える。
物語性はさておき、爛漫と咲きほこる桜のなかで、夢か現かおぼろおぼろと
二条の后との恋を語る。

雲林院
能「雲林院」“忍び出るや如月の黄昏月もはや入りて”
二条の后との逃避行を見せる業平

業平を主人公に二条の后との恋を主題にした能がもう一つに「雲林院」がある。
題材も扮装も前、後場とも全く同じだが内容が全く違う。
「雲林院」の前シテは花守の老人。
伊勢物語の愛読者のワキが夢の告げに花盛りの雲林院を訪れる。
あまりの美しさに一枝手折る。
老人が現れて咎め、これを切っ掛けに桜を読んだ古歌を引き合いに問答を始める。
世阿弥の作品に相応しく能作法に則った確かな構成。
後場のクセでは二条の后との逃避行を濃密に描く。
「小塩」も「雲林院」も「序ノ舞」を舞うが両作品の内容から与える印象が変わる。
序ノ舞は優艶な女性の舞。業平は優艶な女性に準ずるということだろうか。

能「小塩(おしお)」の詳しい解説はこちら。「雲林院」はこちら

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