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04.07
Sat

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景信山山頂 2018年3月23日 写す。以下同じ
前々日降った雪でぐちゃぐちゃ。登山者は数える程。

何やら曰くありげな山の名。戦国時代の武将の名から付いた名らしい。
JR高尾駅からバスで二十分程で終点小仏、二時間程で山頂、
足の運動には程よい。標高七百メール少々。
眼下に栄華の巷東京の街並み、右に首を回らせば富士山、更に回らせば
南アルプスも見える絶景の山頂。

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ヤブツバキ ツバキ科
庭に椿を植えていない家は少ない。見飽きた花だがこの山のヤブツバキは
真っ赤で色が濃かった。形をとどめ色も褪せない落花が哀れを感じさせた。
昔椿は武家屋敷には植えるのを忌み嫌ったと聞いた。
落花の様子が打ち落とされた首に似ているからだそうだ。
などと変なことを思い出し通り過ぎたが気になって引き返し撮った。
引き返したのは衝動的だった。なぜだか分からない。

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キブシ キブシ科
きれいな花とは云い難いが、アッ、春が来た!と嬉しくなる。
薄黄色の花は行儀よく互い違いに並んで咲き、まるで並びのよい歯のようだ。
昔、キブシの実をお歯黒にしたそうだ。
幼い頃、亡くなったお祖母ちゃんは明治生まれでお歯黒をしていた。
ニッと笑うと黒い歯が恐かった。
平安の昔は男もお歯黒をしていたそうだ。在原業平も光源氏も当然
お歯黒をしていただろう。
業平の顔だとする能面「中将」もお歯黒をしている。

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ナガバノスミレサイシン(長葉の菫細辛)スミレ科

珍しい花ではないが人里離れた山の日陰に多い。
花もきれいだが若芽や花は中々の珍味。
スミレは種類によっては人里や日当たりのいい土手にも咲く。
「春の野にスミレ摘みにと来し我ぞ、野をなつかしみ一夜寝にける」
万葉集の山部赤人の歌だそうだ。
万葉人は少女の様なロマンチストだったのだろうか。
昭和の童謡作詞家達も写真で見ると口髭を蓄えたオッカナイおじさん達だが
優しい童謡を作詞した。人は見かけではないということだろう。
だがやはり春の野でスミレを摘むのは女性が似合う。
能「求塚」では薄雪の残る早春の生田の野で女性三人が
「春の野にスミレ摘みにと」と謡いながら若菜をつむ。 
春を待ち侘びた女性たちの優しさと、薄雪の残る野の清冽な早春の空気が
胸いっぱいに沁みわたる。

能「求塚」は見る人を知らず知らずの内に明るい現実から暗い地獄の底に
次第しだいに引きずり込む不思議な能。

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「求塚いずくやらん、求め求め辿り行けば」
地獄の苦しみが一時解け、安らうべき求塚を探し求める
莵名日少女(うないおとめ)の亡霊

薄雪の残る寒々とした早春の生田の野で三人の女達が若菜を摘んでいる。
旅の僧が求塚の所在を聞く。女たちは若菜摘みの障りとなると取り合わない。
若菜を摘み終えて女二人は帰り一人の女が残る。
女は求塚を教えようという。謎めく女の姿から異様な気が滲み出る。
女は求塚の謂れを語る。塚は莵名日少女(うないおとめ)という女の墓だった。

少女に二人の男が懸想する。選びかねた少女は生田川に浮かぶオシドリを
射させ当たった方を選ぶという。二人の矢は同時にオシドリに当たった。
他人事のように語っていた女の語調が変わる。
押し殺すように「その時わらわ思うよう」
女は莵名日少女(うないおとめ)の亡霊だった。
観る人々は次第しだいに地獄の世界に引き入れられる。
つがいの絆の固いオシドリの片方を殺し、仲を裂いた身の罪を悔い
生田川に我が身を投げる。求塚は少女の墓だった。
二人の男も塚の前で差し違え後を追う。
これも我が身の科だと語り莵少女の霊は塚に消える。

後場は只々地獄の凄惨な世界に引きずり込む。
地獄の描写が物凄く、かつ恐ろしい。
莵名日少女の亡霊は僧に成仏を乞うこともなく只々地獄の苦しみを見せ
救いのないまま物語は終わる。

能「求塚」の詳しい解説はこちら






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