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09.01
Sat
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八島湿原 2018年7月20日写す。以下同じ

八島湿原は長野県の真ん中あたり、車だったら諏訪湖から一時間程。
四季折々の花がきれいな湿原。
高原の湿原では規模が大きく苔の種類も多く珍しい生き物が住んでいるという。
国の天然記念物に指定されたとあった。
近年、観光客が急増したようだった。

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キリンソウ(黄輪草)ベンケイソウ科

新しい図鑑を見たらいぜんは麒麟草だったのに黄輪草になっていた。
黄色く輪になって咲くからだそうだ。学者にイチャモンは失礼だが
こじつけにきこえる。昔からの名、麒麟草が断然いい。
ことに八島ケ原の麒麟草は黄色が鮮やかで花の輪が大きく、
まさに空を翔る麒麟の風情を持っている。
麒麟は一日千里も走るという想像上の霊獣。
勿論見たことが無いのでキリンビールの絵で想像するしかない。(下手な冗談)
能「景清」で「麒麟も老いぬれば駑馬に似たるが如くなり」
と我が身の老衰を嘆く。

悪七兵衛景清は平家の敗残の将。日向の國に流され、老いさらばえた盲目の身を
あばら小屋に寄せ、人の情けに縋る身の上となっている。
しかしながら平家の勇将の気骨は消えない。
「松門、独り閉じて年月を送り、みずから清光を見ざれば、時の移るをも弁へず。
暗々たる庵室に徒に眠り衣、寒暖に与えざれば肌はぎょう骨と衰えたり」
呟くように今の身を吐露する。「松門の謡」と云われ昔から多くの人々の胸を打った。
能は舞を見せ謡を聞かせる芸能だと彼の世阿弥が書いているそうだ。
能、景清には舞らしきものはない。謡とわずかな所作で心を伝える。
例えば波の音を聞き昔を回顧する、おいさらばえていても平家の侍の気骨を
見せるなどなど。

鎌倉に預けていた一人娘が雨風、露霜を凌ぎ景清を訪ねる。
娘は音に聞こえた八島での景清の武勇を所望する。
影清は躊躇しながらも「錣引」を見せる。唯一の型どころ。
床几に掛り舞う。型は舞の域を超えて神髄のみを見せ、息詰まる迫力で迫る。
芸能は絶叫して歌い、縦横無尽に舞い踊れば人の心を打つだろう。

能「景清」の表現法はその対極にある。
遥か昔から伝わる表現法だ。松尾芭蕉が云う、“不易流行”というのだろうか。
超現代的な表現法にも見えてくる。

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シモツケソウ(下野草) バラ科

目を見張る美しさ。
団体がスマホで写していた。
顎が出る山登りにシモツケのようなきれいな花に出会うと元気がでる。
谷川岳の厳剛新道のシモツケソウが特にきれいで元気が出た思い出がある。
ガレ場にも咲いていたような記憶がする。
庭に植えられている京鹿の子と全く同じに見えるが違うらしい。

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シシウド(猪独活) セリ科

背丈を遥かに越す。とにかくでっかくて頼もしい。
茎が中空で、昔は山の水場にはシシウドで作った樋があった。
今はプラスチックのパイプだが。
花がセリやニンジンの花にそっくりなのはやはり同じ仲間のセリ科。
きれいな花とは云い難いが親しみを易い花。

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キオン(黄苑)キク科

上杉謙信の居城で知られている上越市の春日山城の城跡にも咲いていた。
知ったかぶりは大恥をかく。
同行に“反魂草”だよと教え反魂草の怪しげな“うんちく”を話した。
能「花筐」の話にも及んだ。花筐(はながたみ)は花篭。

花筐
「李夫人の曲舞」を舞う照日の前

“葉末に結ぶ白露の、手にもたまらで程もなく、ただ徒に消えぬれば”
反魂草で呼び寄せた李夫人の亡霊の影が、空しく消え失せる様を見せる

皇位継承前の継体天皇は男迹皇子といい越前国に住んでいた。
寵愛の照日の前が里帰りの間に、皇子に皇位継承の沙汰がくだり急遽都に上る。
照日の前は皇子が残した形見の花筐(花籠)を抱いて後を追う。
照日の前は継体天皇となった天皇の行幸の列に迷い込む。
官人に咎められ、花筐を打ち落とされる。天皇から賜った神聖な花筐。
照日の前が舞う強烈な抗議の舞が見どころ。“狂い”と呼ばれる。
続いて舞うクセが抜群に衝撃的。これ程の恋が世の中にあるだろうかと。
前漢の孝武帝の恋の物語を我が身になずらえて舞う。

寵姫、李夫人を亡くした孝武帝の嘆きは例えようもなく深かった。
「その面影を甘泉殿の壁に移し我も畫図に立ち添ひて明け暮れ
 嘆き給ひしに」
帝は亡くなった李夫人の魂を呼び寄せようと反魂草を焚く。
「九華帳の裏にして反魂香を焚き給う。夜更け人静まり風すさまじく
 月、明なるにそれかと思う面影の、あるか、なきかにかげろえば
 なほ弥増しの思いひ草」
静まり返った中にシテの姿がボーッとかすみ李夫人の亡霊の姿に変ずる。
“李夫人の曲舞”と云われた観阿弥作の“曲舞”をこの能に採り入れたという。

古い城跡見物に来た人達、能の話しに興味があるのか、
ハンゴンソウの謂れに興味があるのか、いつの間にか5,6人取り巻いた。
「皆さんも多少なりとも身に覚えがあるでしょう?だから面白いンですよ」
「フッフッフ、同感」と中年のご婦人。その中の一人のオジサン、笑いながら
“話しは面白かった。悪いけど一言、よく似てますが、この花は、
ハンゴンソウではなくキオンです”
得意顔の黄色いキオン顔が真っ赤になった。

能「花筐(はながたみ)」の詳しい解説はこちら
「景清(かげきよ)」はこちら

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