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09.08
Sat
八島湿原は標高1600m弱。亜高山の花は勿論、
低地にも咲く花も咲いていた。
清浄な空気に花の色も一段と鮮やかだった。

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ヤナギラン(柳蘭)アカバナ科
2018年7月20日写す。以下同じ

大きな花穂、濃いピンク、群生。
広がる八島湿原に向かって、真夏の高原を太陽と競って輝かすかのように咲いていた。
華やかこの上もない。
伐採地や地滑りの後にも何処から来るのか知らないが一番先に芽を出す。
逞しさに感服だが、里に持ち帰り植えても育たない。人間嫌いの花。

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チダケサシ(乳茸刺)ユキノシタ科

花もいいが名前が気に入っている。チダケサシの茎は細く硬く長い。
茎にキノコの乳茸を刺して持ち帰るのに、うってつけだから付いた名だと云う。
多分、学者が付けたのではなく里の人の言い習わしが実の名になったのだと思う。
山仕事の帰り、愛妻のお土産にチダケサシに突き通した乳茸をぶら下げて
帰るおじさん。ほのぼのと、絵になります。
低地にも咲く。町の中を流れる多摩川上水にも咲く。
白花もあるがピンクがきれい。

hanasyoubu.jpg

ノハナショウブ(野花菖蒲) アヤメ科

八島湿原の野花菖蒲は紫色が一段と濃かった。
形も昔の女性の島田髷に似ていて豪華だった。
ハナショウブは昔から日本人に愛された花。
美人の比較に「いずれアヤメかカキツバタ」の句があるほど。(アヤメはショウブの古名)
菖蒲といえば「♪柱の傷はおととしの五月五日の背比べ」
の唱歌を思い出す。
五月五日は男の子の端午の節句。軒に菖蒲を飾った。
菖蒲の葉が剣に似ていて“尚武”にあやかったものという。
三月三日は「♪明かりをつけましょぼんぼりに」の雛祭り、女の子の節句。
節句は昔から子供の健やかな成長を祝う大事な行事。
戦後、五月五日は子供の日の祝日に制定された。三月三日はただの日。
女の子が可哀そう。同情以上の思い。

五月五日に軒に挿す菖蒲と花菖蒲は全く違う植物だそうだ。
葉っぱは並べてみても見分けが付かない。
昔、父親が五月五日に軒に挿した菖蒲の葉は、貯水池の花菖蒲の葉だったと思う。

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キンバイソウ(金梅草) キンポウゲ科

混じりっ気のない真っ黄色な黄金色の花を豪華に咲かせる。
山地から亜高山に咲く花だという。
高山植物の代表格、シナノキンバイソウ(信濃金梅草)の姉妹。
一頃の山男は信濃金梅草を信濃金蠅草と呼んだ。金蠅は汚物に集る蠅。
背中が金色に輝き、信濃金梅草に似てきれいな昆虫だと彼らは見る。
金蠅だけではなく他にも彼らの捻った呼び名や、替え歌を作った。
♪槍の頂上でキジを撃てば小梨平に虹が立つ♪
(キジ撃ちは男のオシッコ。女性は花摘み)
山男は汚いなど一般常識に反発して得意顔だった。
高度経済成長に浮かれ気味の世にあって、きらびやかな生活を求める世相に
反発、物の本質を見失うまいとする彼らの意思表示だったのかもしれない。

金梅草と金の梅の名を貰ったのはこの花がよほどきれいだからだろう。
梅は桜とともに日本人に取って花の代表。
花といえば蝶。花と蝶は切っても切れない仲。
だが梅は極寒に咲く。蝶はまだまだ眠りから覚めない。
梅を知らない蝶に梅を見せたいと云う願望は、ロマンチストには
ごく自然な願望かもしれない。
能「胡蝶」はこの自然の願望から生まれた能と云えよう。

胡蝶の精は里女になって現れる。
僧に法華経の功徳によって梅に縁を結びたいという。
僧の故郷は吉野。吉野は桜の名所。満開の桜も連想されて舞台は華やか方向へ。
里女は中国の荘子が夢で胡蝶になった話や源氏物語の「胡蝶の巻」で
池辺の御遊で童に胡蝶の姿で舞を舞わせたことなどを語る。
この上なく華やかな胡蝶の姿を美しい詞章で歌い上げる。

僧の法華経の読経に美しい胡蝶が姿を現わす。
胡蝶の精は念願叶い、梅の花に戯れ存分に舞い遊ぶ。
蝶が羽根を広げ飛ぶ姿を模した優美な型などもあり、
憂世の憂き事を去り、清澄な童話風の世界に徹した曲。
小品だが好まれた曲のようで演出面にも多々話題があると聞く。
作者は道成寺、安宅、遊行柳、船弁慶、紅葉狩などの大作の作者、観世信光。
これらの作品の内容から、厳めしいオッカナイおじさんが連想される。
このオッカナイおじさんの心の中にも優しい子供心が住んでいたのだナ、
と思わずニヤリ。

小面
「胡蝶」使用面 小面(こおもて)
少女の相貌。小面の小は可愛い、優しく美しいという意だという

能「胡蝶(こちょう)」の詳しい解説はこちら


《能をみに行きませんか?》

東京金剛会例会 9月29日(土)午後一時半開演

『能』 芦刈(あしかり) 

『狂言』 空腕(そらうで) 

『能』 鉄輪(かなわ)

 
他、仕舞数番

能「芦刈」
夫婦愛の物語。
零落した夫は妻と別れ難波の浦で芦の花を売り細々と暮らす。
美しくもない芦の花を売るため、客の風流心を掻き立てようと舞う「笠ノ段」
夫を恋求める妻は難波の浦で夫に巡り合い互いの恋情を謡い交わす。まさに「歌垣」
古い時代の風習を見るようで感慨深く感動的。
夫婦は国家形成の最小単位。国土安穏の基礎とされてきた。

能「鉄輪」
夫婦愛の物語でも「芦刈」の対極にある物語。
 夫に裏切られた妻は貴船神社に丑の刻参りして恨みを晴らそうとする。
貴船神社は夫婦の間のモメ事を司る神でもあったのだろうか、藤原保昌に
振られたと勘違いした和泉式部もお参りしたという。
漆黒の暗闇の中、貴船に通う女、貴船の神のお告げを得て復讐を決意する女を
おどろおどろしく、身震いをも誘うほど恐ろしく描く。
鬼に変身した女は枕を並べる前夫と後妻を襲うが安倍晴明に祈り伏せられる。

昔の男は他人と情を通じた妻を当たり前のように切り殺した。
夫に裏切られた女は我慢に我慢を重ねた末、鬼となった。
陰陽師安倍晴明に祈り伏せられ断末魔の姿で幕に入る女の後ろ姿に云い知れぬ
虚無感がただよう。

鉄輪
“笞を振り上げ後妻の、髪を手にから巻いて、打つや、、、、、”

能「芦刈(あしかり」」の詳しい解説はこちら
「鉄輪(かなわ)」はこちら

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