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10.23
Tue
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ダイモンジソウ(大文字草)ユキノシタ科 奥多摩産 
2018年10月2日 写す

“大”の字は威圧を感ずる言葉の接頭語並みに使われる。
ダイモンジソウの大は驕り高ぶったという意味ではない。
“大”の字形に咲くので大文字草。
己の器をより大きく見せようと躍起になる人間とは違う。
より美しく見せようなど驕り高ぶった雰囲気など微塵もない白く清楚な花。
今年は35度を越す酷暑が続いたせいか開花も遅れ花も小さい。
静まり返った奥山の水気の多い岩の上に咲く花、過酷な娑婆の陽気に
参ったのだろう。

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ルコウソウ(縷紅草)ヒルガオ科 杉並区産(原産、南アメリカ)
2018年9月11日 写す

荻窪に趣味で知り合った飲み友達がいた。
さほど飲む訳ではないが、あちこちの面白そうな飲み屋を探すのが楽しみだと
誘われた。記憶に焼き付いたのは下北沢と神楽坂。両方とも小ぎれいな小料理屋。
中年のおかみさんが出迎えてくれた。
下北沢の店は、客の目の前で大きな魚を料理して食べさせるコーナーがあった。
気に入って数回行った。
神楽坂は場所柄か、きれいな店で器もきれい、だが料理は口に合わなかったし
徳利は小さく酒の量もチョッピリで高かったので二度と行かなかった。
懐が不安になると件の友達のアパートで飲んだ。
怪し気な創作料理を作ったが、たまにはイケてる料理が作れて褒められた。
アパートは環八通りに近かった。環八の歩道にルコウソウが咲いていた。
外来種や園芸種には興味がないが真っ赤な小さな花形が目を引いた。
初めて見た気がしたし勿論名前も知らなかった。
種を頂いて猫の額に蒔いた。こいつがトンデモない奴で大事な花に絡みついて
往生した。きれいなものは兎角面倒を引き起こす。
友達は齢、30を一つ二つ越していた。
東関東大震災で母親の命令で勤めも辞め、すんなり故郷の広島に帰った。
齢30少々で母親の命に従うという並外れた資質の人がいるのだなと思い交々。
後で知ったが、原発事故報道が伝えた恐怖は東京の人達よりも関西の人達
の方が大きかったようだ。友の母を鬼にした。
やっかい者のルコウソウだが友の思い出があるので徹底駆除はやめ少し残している。

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トウガラシ(唐辛子)ナス科  種子島産
2018年9月6日 写す

種子島、屋久島は南西諸島の基点あたりの島。
南西諸島の人達は刺身をワサビではなく唐辛子で食べる。
トウガラシをコショウとよぶ。
トウガラシは一年草だが南西諸島では冬でも枯れない。多年草と云うより木。
種子島で種をもらい鉢植えで十年余りだが尚なお健在。
春には小さい可愛い白い花をこぼれる程に咲かせ、真っ赤な実をつける。
小粒だが猛烈に辛い。

南西諸島は九州南端から南へ点々と大小の島を連ね沖縄、台湾まで続く。
島の道とも云うそうだ。奈良以前の昔からの交易路だったという。
平清盛に反逆を企てた俊寛僧都が流された硫黄島もその一つ。
屋久島の近くの火山島で最近大爆発を起こし話題になった。
俊寛はこの島に豊富な火薬の原料、硫黄を採集して中国の貿易船に売ったという。
高貴な平安の都の僧都がボロをまとい火山に登る傷ましい姿が想われて哀れ。
俊寛僧都は建礼門院徳子の御産の赦免にも外れ硫黄島、即ち鬼界ケ島で
生涯を閉じた。能「俊寛」はこの俊寛の悲劇を作った名作。
共に流された藤原成経、平康頼は許され迎えの船に乗る。
見送る俊寛の姿を能独特の手法でみせる。
俊寛の哀れの描写はその実際を遥かに越す迫力。

種子島、西之表市の小さな旅館にと泊った。
隣の部屋で宴会が始まった。どんな人たちの集まりだろうと聞き耳を立てた。
長らしき人の挨拶が終わり十分も経たないうちに大賑わいとなった。
廊下でかなり酔ったメンバーの一人に会場に引きずり込まれた。
「種子島文学」と云う会の定例会だった。
鉄砲伝来にまつわる「若狭」と云う女性の説話を聞いた。
座は次第にシンミリ、中には涙を浮かべうつむく人もいた。
1543年、中国の難破船に同乗していたポルトガルの商人によって
種子島に初めて鉄砲が伝えられた。鉄砲にまつわる哀話だった。

若狭は刀鍛冶の娘だった。
若狭の父金兵衛は京都、本能寺付きの刀鍛冶であり一家は敬虔な日蓮宗の信者だった。
日蓮宗迫害の大事件が京都で起きた。金兵衛一家も京都を逃れ
本能寺で親交のあった種子島出身の僧を頼って来島した。

卓抜した技術を持つ金兵衛に島主は鉄砲の複製を命ずる。
金兵衛は寸分違わぬ鉄砲を復元したが当時日本にはなかった技術で、銃身の底の
螺旋を用いた部分が作れなかった。鉄砲の玉は火薬の爆発で飛ぶ。
工夫を重ねた金兵衛だったが火薬の爆発に耐える銃底が作れなかった。
難破船に同乗していたポルトガルの商人は美貌の若狭との結婚を
島主に申し入れていた。
銃底の技術に行き詰まり苦悩する父金兵衛を見かねた若狭は
ポルトガル商人に嫁すことを決断する。
鉄砲を作る技術者を連れて再び島に帰ることが条件だった。
始めて見るポルトガル人の顔の形、衣服、言葉、その異形に恐れたことは
想像に難くない。
若狭は初めて見るポルトガル人が冥土の閻魔大王に見えたと述懐したという。

鉄砲伝来は日本の歴史を変えた。種子島の一女性、若狭が戦乱を終わらせ
日本に平和をもたらした。会長がこう結んだ。
皿の刺身を見つめながらうつむき聞いていた。
若狭の話が終わり、大きく吐息をつき刺身を頬張った。
途端、口の中で金兵衛の鉄砲の火薬が爆発した。トウガラシの火薬が。

家に帰り阿刀田公の「リスボアを見た女」を読んだ。
リスボアはリスボン、ポルトガルの首都だそうだ。
種子島文学の人達の若狭に寄せる想いがよみがえり読後感はトウガラシだった。
「あはれ此処、若狭の墓か白砂の、もろく崩るる浜辺の丘」
彼らに教えてもらった海音寺潮五郎の歌を思い出し読後感の唐辛子を和らげた。

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イワギボウシ(岩擬宝珠) ユリ科 奥秩父産
2018年8月7日 写す

外国人の憧れの花だそうだ。アメリカに愛好者の会があって日本の自生地を
見に来るツアーもあると聞いたことがある。
ギボウシは東北地方ではウルイ、主要な山菜。
天ぷらや茹でて和え物が美味い。

ギボウシは蕾が橋の欄干の飾り、擬宝珠に似ているからだそうだ。
最近はそこらの橋では見ないが、お寺や神社の池に架かる橋の欄干を
飾っているのを見る。
擬宝珠の宝珠は宝石。人間は昔から女も男も、指、手首、首、頭、胸、
果ては鼻、唇、恥ずかしい処まで飾る人がいると聞く。
宝石よりも、美味しいつまみと美味しい酒の方が余っ程いいナと述懐
したら友人曰くお前貧乏だからだ、ヤッカミだ。
動物は元々身を飾る習性があるンだ。
なるほど、神様も仏様も宝珠でご神体を飾っている。
竜宮の守護神、龍神様が宝珠を略奪した能がある「海女」

唐の皇帝から贈られた宝珠が讃州、志度の浦の沖で龍神に奪われる。
大宝律令の編纂者、藤原不比等は宝珠を取り返すべく志度の浦に下る。
不比等は処の海女乙女と契りを交わし一子をもうける。
後に内大臣となった藤原房前。房前の役は子方が勤める。
高貴な身分を表し卑賎な身分の母、海女との対比を見せ母性愛を際立たせる。
内大臣の位ののぼった房前は、母の身分を知らないまま追善供養を行うため
志度の浦を訪れる。
海藻を刈り取る鎌を手にした海女が現れる。
賤しい海女と貴公子、波乱のドラマの予感に期待が高まる。
海女は宝珠奪還の顛末を語る。

海女乙女は我が子房前を世継ぎの位に立てるという不比等との約束を取り付け
一命を賭して志度の浦の沖の竜宮に赴き、竜神が守る宝珠を奪い返す。
竜神に追われた海女は乳房をかき切りその中に宝珠を隠す。
引き上げられた海女は乳房の深傷と龍神の仕業で深手を負い瀕死の態だった。
“玉ノ段”と云い強烈な場面を生々しく再現して見せる。
宝珠奪還の子細を語った海女は、その海女乙女こそ自分であると名乗り波の底に
消える。

房前の母、海女は竜女となって供養する房前の前に現れ感謝の舞「早舞」を舞う。
早舞はノリのよい典雅な舞。
後場は経典の言葉で埋め尽くされる。理解は難しいが極楽の雰囲気が醸される。

海女
「乳の下をかき切り玉を押し籠め剣を捨ててぞ伏したりける」
竜宮の玉を盗み取り竜神の追われる凄惨な場面を見せる海女

能「海人(あま)」の詳しい解説はこちら
「俊寛(しゅんかん)」はこちら


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