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04.06
Sat
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鞍馬寺の山門 2019年3月30日写す。以下同じ

二十数年ぶりに鞍馬を訪ねた。記憶にある鞍馬寺は山門まで幅の広い
なだらかな石段、両側に桜並木、山門をくぐると、きらびやかな本堂、
暫く歩いて奥の院だった。
思い出は百八十度ひっくり返った。思い出に合うものは全くなかった。
人の思い出ほどあてにならないものはないとつくづく、どこかで見た
景色とすり替わったのだろう。
山門から本堂、奥の院までかなりの距離だった。
土の参道、自然石の階段を青息吐息で登ったり下ったり。
山奥の名刹はこれでなくては!きれいに舗装された参道なんて味気ない、
などとブツブツ、六根清浄の代わりに?唱えながら。

光源氏が幼い紫の上にめぐり合った寺“なにがしの寺”は鞍馬寺だと書いてあった。
紫の上は光源氏が理想の女として育て上げた最愛の妻。
鞍馬寺が“なにがしの寺”かどうか信じていいのか分からないが、紫の上が育った
場所に相応しい静かな佇まいだった。

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僧正が谷 

鞍馬寺は能「鞍馬天狗」の舞台でもある。
僧正が谷に住む天狗が美貌の少年、牛若丸にほのかな恋心を抱き愛宕、高尾、比良
横川の桜の名所を案内して回る。
念友は当時の流行りだったという。
その揶揄でもあるというが、天狗と美少年の変わった取り合わせが面白く描かれる。

山伏姿だった天狗は後場で、威厳のある、おっかない天狗の正体を現し牛若に
平家打倒を勧め兵法の奥義を授ける。
天狗の豪快な舞が楽しく、凛々しい牛若の姿が美しい。

去年の台風でモミノ木の大木が倒れていた。
あちこちで杉やヒノキが無惨に倒れていてそのまま放置されていた。
杉やヒノキは貴重な国の宝の筈だ。変なところに使う国費の僅かな一部を
山に回して欲しいし、我々庶民には関係ない政争の変テコな国会論争は
いい加減にして、荒れ放題の山のことも論じ合って欲しいと思う。
日本の山は世界一美しい。
去年の台風は怒った天狗が天狗の団扇で一煽ぎしたのだと信じたいくらいだ。

くらまてんぐ
牛若に兵法の秘伝を伝授する大天狗

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ヤブツバキ(藪椿)ツバキ科

海岸近くに多い椿はとっくに盛りを過ぎているがここでは花盛りだった。
これほどの自生の椿は意外だった。
「山寺の石のきざはし下りくれば椿こぼれぬ右に左に」
子供の頃、兄に教わった。国語の教科書にあった句だそうだ。
当時は子供の気を引くゲーム機や漫画雑誌など無く読むものは教科書程度だった。
落ち椿がこの句の作者、落合直文の風雅な心境とは違う “何か”を子供心に連想
させたのだろう。落ち椿が何を連想させたのか兄に聞きたいが、その兄も直文と
同じ冥土の住人。

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ヤマルリソウ(山瑠璃草)ムラサキ科
花の少ない早春には有難い花。
派手な花ではないが小さな薄紫の花色が可愛く目を引く。
同種に歌などでもよく知られたヨーロッパ原産のワスレナグサ(勿忘草)がある。
住み心地がいいのだろう野生化している。
ドナウ川の岸辺に咲いていたワスレグサを恋人に摘んであげようと、足を取られ
急流に落ち波に呑まれる寸前、恋人に花を投げ“私を忘れないで”と叫んだ。
ワスレグサの名の謂れだそうだ。

外国の男性は女性の気を引くことが上手なようだが昔から日本人は下手だ。
見本のような話の能がある「芦刈」
落ちぶれた男は妻と別れ難波の浦の破れ小屋に住み、旅人に芦を売って暮らす。
売るほどきれいでもない芦の花は方便で芸を見せ、その投げ銭が目当て。
妻はさる大身の家の乳母に出世したが夫が忘れられず方々探し、難波の浦で再会。
男は妻の呼び掛けに我が身を恥じ破れ小屋に逃げ込む。
妻が小屋の外から呼び掛ける。小屋の内から妻を恋う情けない男の声。
まるで万葉人の相聞歌。
男が客寄せに舞う「笠ノ段」と呼ばれる舞が呼び物の曲。

能「鞍馬天狗」「芦刈」の詳しい解説はこちら

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