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06.16
Sun
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三つ峠の最高ピーク開運山直下の岩壁。令和1年5月30日写す。以下同じ

岩登りの人が豆粒のように見えた。かなりの高度。
冬、この岩壁の下の方に巨大なツララが暖簾のようにぶら下がる。
娘が小学校1、2年生の頃だったと思う、山男の友人に無理に誘はれ
このツララを見に行った。
終電の富士急に乗り三つ峠駅から真夜中、懐中電灯頼りに登った。
途中道に迷いウロウロ。疲れ果てて休憩、娘は路肩に寝てしまった。
夜が白々明け初め娘が寝ていた後を見ると雪が固まって氷になり
その上に落ち葉が散り敷いた氷の寝床だった。ギョ!
巨大な暖簾のツララの前で皆、息を呑み棒立ちになり眠気も疲れも吹っ飛んだ。
娘も氷の寝床など忘れてしまって“すっご~い、きれ~い”とはしゃいだ。

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ヤマナシ(山梨)バラ科

山はあってもヤマナシ県、海なんぞ無くていいよと言わんばかりに咲いていた。
山梨県は南アルプス、鳳凰三山、甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳、県境の奥秩父連山と
美しい山に囲まれている。昔は甲斐の國。甲はものごとの一位、斐は綾があり
美しい意と辞書にある、げにもげにもと。

本名ズミ、ヤマナシの名には学者の間で色々あったらしく最近の図鑑に
ヤマナシの名がない。ヤマナシではなくなったらしい。
だが山好きの間では断然ヤマナシだ。山梨県に特に多いらしい。
小さいが八百屋の梨にそっくり。疲れ直しにたまにかじる。
猛烈に酸っぱい。だが山の珍味、疲れの喝入れ。

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クルマバツクバネソウ(車葉衝羽根草)ユリ目シュロソウ科

衝羽根草の名は花が羽根つきの羽根に似ているから付いた名。
昭和は遠くなりにけり。平成も去り年号も変わった。
昭和は言わずもがな、平成の前半頃までは正月、羽根つきに興ずる嬌声が珍しくなかった。
今の子供に聞いても多分、羽根つき?追羽根?それ何?
今はバトミントン。バトミントンの発祥の謂れは知らないが、
羽子板がラケットに、羽根が鳥の羽根からプラスチックに変わっただけ。
根本は同じ。まさしく羽根つき。
オリンピックの競技種目だと云うから世の中変わった。
衝羽根草の命名者も草葉の陰で目を剥いているかも知れない、多分。

奇妙な形の花、車葉衝羽根草はいたずら好きの神様が作ったのだと思う。
多分、羽根つき好きの女神さまの作品かも知れない。

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ルイヨウボタン(類葉牡丹)キンポウゲ目メギ科

ネズミの額にも植えてある。
どこの山だったか忘れたが下山の途中、大木の下で見つけた。
名のように牡丹やシャクヤクの葉にそっくり。
憧れの山シャクヤクだと飛び上がって喜んだ。疲れが一ぺんに吹っ飛んだ。
花が咲いて崖っかり。崖から落ちたように。
だが最近は山シャクヤクとは比べものにはならないが質素で味があると。

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フデリンドウ(筆竜胆)リンドウ科

平地では早春の花。うららの春に逆戻りしたかと嬉しかった。
リンドウは秋の花というのが通り相場。俳句では秋の季語だそうだ。
だがフデリンドウは春咲く。他にもハルリンドウ、コケリンドウなどがある。
リンドウは漢字で竜胆。字の如く龍の胆のように猛烈に苦く胃の薬。
竜の胆を試した人がいるかどうか知らないが。
春のリンドウは小さい。胃の薬にするには可哀そう。
可愛い花を咲かせるリンドウなのに、どんなに苦くても恐ろしい竜とは可哀そう。

ヨーロッパの竜、ドラゴンはワニに似ていて翼で飛び火を吐く怪獣。
日本の竜はドラゴンに似ているが角とヒゲを生やしていて翼はなく
身をくねらせて飛ぶ。交流が極少なかった西洋と東洋の人が似たような竜を
考えたことは不思議。人種は違っても同じ人間なのだナと。

竜は能にも登場する。「春日龍神」や「竹生島」「海人」など
人助けをする竜と人を襲う竜が登場する。
「春日龍神」は栂尾の明恵上人が仏跡を訪ねようと春日明神に
暇乞いの参詣をする。春日明神が鹿島(茨城県)から春日山(奈良県)
に移った時に随行した時風秀行が現れ春日山に仏跡を写し出して見せるから、
危険な渡天(釈迦の生地、インド行)は断念するよう勧め消えうせる。
やがて大地が震動、春日山は金色に輝き龍神が現れ、釈迦の誕生、説法の
の様子、沙羅双樹の下の入滅の様子を見せる。
途方もないスケールの能。

「竹生島」は竹生島詣での廷臣一行を釣り船に乗せ案内する老人と美女。
長閑な琵琶湖の景色を「緑樹影沈んで魚木に上がる気色あり。月海上に
浮かんでは兎も波を走るか」と謡う。木の影が水面に映り湖の魚が木に
登っているように見え、月が水に映り月のウサギが湖の波の上を走っているという。
琵琶湖の長閑な美景に酔いしれる廷臣になった気分でウットリ、眠気さえもようす。

老人は琵琶湖に住む龍神、美女は弁財天だった。
弁財天が美しい天女の舞を舞い、龍神は豪快な舞を見せる。
ご当地ソングという人もいるらしいが秀作過ぎてご当地ソングなどとはとてもとても。
能は人の中に潜む深刻な人の性を描きだすだけではなく人の心を和ませる、
今風にいう“癒す”能も少なくない。

名作「海人」の龍神は恐ろしい。「海人」は母性愛を描いた曲。
唐から贈られた明珠を志度浦(香川県)の沖で龍神に奪われる。
藤原淡海は名珠を取返そうと志度の浦を訪れ、浦の海女と契り男の子をもうける。
海女は我が子を淡海の世継ぎにするという約束を取付け、命を賭して龍神の居城
竜宮に赴き宝珠を奪い返す。龍神に襲われた海女は命を落とす。
これまでが前置き。曲中で語られる。

海女と淡海の子、房前は淡海の迹を継ぎ大臣となり母、海女の追善供養のため
志度の浦を訪れる。海女の霊は海女の姿で房前の前に現れる。
海女と大臣の身分の落差が描かれる。
「かかる貴人の卑しき海人の胎内に宿り給うも一世ならず」
親子は一世だが前世の因縁と思いたいという悲痛な母の心の叫びに聞こえる。
海女は恐ろしい龍や鰐鮫が玉を護る竜宮に潜入して銘珠を奪い返す
場面を再現して見せる。「玉ノ段」と呼ぶ壮絶この上もない舞。

房前の追善供養に龍女成仏した母の霊が現れ報恩の舞「早舞」を見せる。
ノリのいい舞に母の霊の喜びが溢れる。

海人
龍女となり往生した母が我が子、房前に有難い経巻を与える

能「海人」の詳しい解説はこちら
「春日龍神」はこちら「竹生島」はこちら

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