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10.24
Thu

乙女高原は山梨県の奥秩父連山の麓にある高原。標高1700m。
山梨市が観光地の目玉にしようとしたのかトイレなど整備されているが
訪れる人は少なく静まり返っている。
東京から近く気軽に行けて静かなのが何より気に入っている。
四季折々に高原の花が咲き麓には三富温泉があり良質の温泉が湧く。
立ち寄り湯500円。

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カワラナデシコ(河原撫子) ナデシコ科

低地から亜高山まで咲く花。秋を代表する花の一つ。
茎は固く丈夫。遊山の土産には持って来いの花。
万葉の昔から親しまれた花らしい。
「秋さらば見つつ偲へと妹が植えし宿の石竹なでしこ咲きにけるかも」
大伴家持の歌だそうだ。秋が来て私が植えた撫子が咲いたら私を偲んでください
と云うのだから奥さんは何処かに行ってしまったのだろう。どこだろうか?
家持さん、奥さんの植えた撫子をジット見つめて、その目には涙。
何とも見るに忍びない家持さんの姿が目に浮かびます。
「憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も我を待つらむ」
山上憶良の歌だそうだが万葉人は愛妻家が多かったのだろうか。

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オミナエシ(女郎花)スイカズラ科

なんとも派手な花。昔から親しまれた花のだろう、秋の七草の一つ。
今の世でも秋の七草は?と聞かれると先ずオミナエシと答える人が多いと思う。
派手な花のオミナエシを“女郎花”と書いても不思議には思わない。
女郎は普通、遊女だろうが上臈、上流階級の女性のことででもあるという。
遊女と上臈は雲泥の差だが女郎花の意味はその人に任せるという事だろう。
京都、石清水八幡宮は女郎花の名所だという。
能「女郎花」の舞台でもある。
「艶めきたてる女郎花、うしろめたくや思うらん、女郎と書ける花の名に
 誰偕老を契りけん」と謡う。
女郎とか、上臈とか聞くと“脂粉の香り”を連想する。
古い和歌に女郎花の香りを愛でる歌もあるらしい。
現代人にはとびっきりの悪臭だが、所変われば品変わるならぬ
時が移れば品変わるだろうか。

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ソバナ(岨菜) キキョウ科

岨は峻嶮な山、絶壁などだと辞書にある。その岨に咲く花だとする。
少々大袈裟でちょっとした山深い処なら所嫌わず咲いている。
立ち姿に気品があり岨に咲く花に相応しいという意味だと理解している。
若芽だけでなくかなり成長してもアクもクセもなく美味しい。
ソバナの花を見つけて“アラ、可愛いわね何という花かしら”と騒いでる
ハイカーに「山仕事の杣人(そまびと)が家で待っている愛しいカアチャンに、
ほら、土産だよと手渡すので杣菜、が岨菜になったんだ」と怪しげな解説をする。

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ツルリンドウ(蔓竜胆)リンドウ科

リンドウとツルリンドウは花も葉も形はそっくり。
リンドウはよく知られた秋の花。上向きに誇らしげに咲く。
ツルリンドウは這いつくばって咲き、花もリンドウには遠く及ばない。
リンドウが咲いていた近くの草の藪に絡みついて咲いていた。
生きとし生けるものには美醜、色々あるのだ、卑下してはいけないよ、
浮世の習いだよと慰めてやった。
実は断然ツルリンドウの実がきれい。真っ赤な丸い実が可愛い。
リンドウの実は枯れた花びらに包まれ細いサヤの中に小さい粒粒。
きれいな花のなのに実が何とも情けない姿だ。

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タムラソウ(田村草) キク科

紅色が鮮やかできれい。恐ろしいトゲなどないからこれも山の土産にいい。
トゲのないアザミ。ほんとはアザミの仲間ではないらしいが。
別名、玉帚だそうだ。玉帚は高野箒や箒草で作った箒。
先細の竹箒と違い玉帚はふっくらで田村草の花にそっくり。
能「田村」で前シテの庭掃きの少年が玉帚を持って登場する。
これが名の由来らしい。名付け親はきっと能の愛好者だったのだろう。

少年は坂上田村麻呂の化身。田村麿麻呂は平安前期の人、征夷大将軍。
並外れた剛勇。怒れば猛禽もひれ伏し、笑えば幼子も慣れ親しんだという。
能「田村」は前場では幼子も慣れ親しむ田村麻呂を描き、後場では猛禽も
ひれ伏す田村麻呂を描く。

清水寺の地主権現の桜は昔から桜の名所として名高い。
春爛漫の清水寺を訪れた僧は玉帚で桜の下を掃き清める由ありげな少年に出会う。
童子の面に美しい縫い箔、色水衣の少年姿の田村麻呂が可愛い。
大人が演じ、それも野太い声で謡っても可愛いから不思議。能の演出の不思議な魅力。
自主権現の桜を賞で僧に清水寺創建の由来を語る。
少年ながら存在感ある姿から、えも云えぬ不思議な雰囲気が滲み出、説得力がある。
やがて音羽の山の上に月。「春宵一刻値千金、」と少年。「花に清香、月に陰」と
応じる僧の袖を取り桜の下に僧を誘う。
少年は桜を愛でる「クセ」を舞う。その優雅な舞は「げに千金にも替えじ」だ。

後場はガラリと変わる。
猛禽もひれ伏す坂上田村麻呂の登場。
鈴鹿山の鬼神を退治する剛勇田村麻呂を見せる。
明るくのびのびと情緒豊かな少年田村麻呂を前場で見せ
後場に勇壮、闊達な田村麻呂を見せる。暗い影など微塵もない能。

田村
月下の地主権現の桜の下で桜を賞で舞う少年、田村麻呂

能「田村」の詳しい解説はこちら
 「女郎花」はこちら 

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